第53話 魔力視眼
朝から何も飲んでいなかったので喉が思った以上に渇いていた。たぶん緊張で忘れていたのもあったのだろう。ポーチからアプルを取り出して皮をむいて食べた。それもペロッと食べられたのでお腹もすいていたようだ。
「ごめんね、喉の渇きと空腹が自覚できてなかったみたい。続きをお願い」
『いえ、初めての領域外での活動です。緊張しない方がおかしいくらいです。魔力の繋がりのメリットとデメリットでしたね?
メリットは相互で魔力のやり取りができることです。これはどちらかが魔力枯渇を起こした場合などに使いますが、相手に魔力を分け与えることができます。それに魔力を貰うことも可能です。それから、大体ではありますが、相手の距離と方角が確認できます。
デメリットは相手の感情が伝わることですね、相手のことが全てわかっている私たちには関係がないのでデメリットにならないと言ったのです』
(また、そんな簡単にキザな言い回しを……慣れるしかないだろうけど、言われて悪い気はしないから……)
「なるほど、確かにメリットしかないわね、魔力の相互補完は使わなそうだけど、距離と方角がわかるのは便利だわ」
『ほぼ説明できたと思いますが、何か質問はありますか?』
「特にないわよ、いつも一緒にいられるのだし、何かあれば聞くわ。フェシーも何かあれば言ってね」
『承知しました。確認ですが、魔眼は試されましたか?私もミオさんにどのような魔眼が付与されたのかは、わかりません』
「まだしてないわ。そんな余裕もなかったし……どうやって確認するの?」
『確認の前に簡単に魔眼について説明します。
正式には魔力視眼で、一般的に魔眼と呼ばれているものとは違います。一般的な魔眼は、石化や麻痺、透視、破壊、洗脳など、どちらかというと攻撃や破壊を目的としたものです。
ですがミオさんに宿る魔力視眼は、物質の魔力を見たり、情報を読み取ることができます。どのような魔力視眼か分からないと言ったのは、種類として、魔力だけ見られるのか、情報も見られるのか、情報も植物は見られるけど人は見られないなど、多種多様の魔力視眼があります』
「なるほど、そうすると何か物質、たとえばこのマグカップを見て、どんな情報が見られるのか、何も見えないのかを検証すればいいのね?」
『その通りです。これまでの情報から推測するとミオさんは、ポーションなどの情報は確実に見えると思います。あとは、物質や植物も大丈夫かと……ですが、人や魔物は無理かもしれません。後で自分や私を見て確認してみてください』
私は左目に魔力を集中してマグカップを見てみる。キッチンから持ち出した陶器製のマグカップだ。
【マグカップ】
材質:陶器
成分:陶土、長石、珪石
配分:陶土49%・長石11%・珪石40%
内容量:300ml(空)
備考:日本製のマグカップをイルヴァーシルで複製したもの
半透明の板に材質や成分などが書かれている。かなり細かく見えていると言って問題ないだろう。
「マグカップを見たけど、材質、成分、配分、内容量と備考が見えたわ。このテキストは他人から見えないの?」
『なるほど、やはり物質はかなり細かく見えていますね、それと、結果はミオさんにしか見えません。次は治癒ポーションで試してください。ついでに身体強化を切って体の様子を確認してください。たぶん筋肉痛になっているので、確認後に飲めば筋肉痛は回復します』
ポーチから治癒ポーションを取り出し、先ほどと同じように見てみる。
【治癒ポーション】
品質:特級品
抽出率:100%
製薬者:ミオ カンザキ
状態:保存
備考:爽やかなハーブの香り
「薬品検査用の魔導具とほぼ同じだわ、検品の結果がないだけね」
『さすがですね、やはり薬品関連はかなり詳しく見られるようですね。薬草類もどのような薬に使用できるかまで見られると推測できます』
身体強化を切ってみる。急激に太ももとふくらはぎが痛くなった。完全に筋肉痛だ。これは歩くのも厳しいかもしれない。
「身体強化を切ったけど、ひどい筋肉痛ね……あと、肩や背中、腹筋も少し痛いわ」
『運動による筋肉痛と、緊張からきた軽い筋肉痛ですね、治癒ポーションを飲んで治してください。治癒ポーションはご存じの通り代謝の促進なので、筋肉の超回復も起こります。何回か繰り返して筋肉痛が起こらなくなってから身体強化の出力を上げてください。疲労も感じるようでしたら、体力ポーションも飲んでくださいね』
「わかった、肉体的疲労は特に問題ないわ」
治癒ポーションの蓋を開けて飲み干す。鼻から爽やかなハーブの香りが抜けていった。すぐに筋肉痛がなくなり体が楽になった。即効性があるのは嬉しい。
「これからどうするの?予定通りに進む?」
『そうですね、少なくともここから半日離れた場所までは進みましょう。なるべく大森林の近くを移動してください。採取や魔力視眼の確認もしていきましょう。大森林側から魔物の襲来があるかもしれませんが、実戦の訓練を兼ねます。私がいるので危険はありません』
「準備をするわ少し待ってて……」
私は外に出るための準備に取り掛かった。




