第37話 地下野営シェルターの構築
地下野営シェルターの各パーツは設定できたが、いきなりパッケージングして実行するわけにはいかない。やはりパーツごとに試す必要があるだろう。
階段部分の天井を除去して外にでた。辺りはすっかり闇に染まっている。今日は月も出ていないので夜空を見上げると満天の星空だ。自分の《ライト》が少々邪魔ではあるが……
「いつ見ても綺麗ね……」
しばらく星空を満喫したあと、地下野営シェルターの構築作業に入る。まずは《地下野営シェルター入口》だ。最初に作ったシェルターから離れた場所に手をついて、キーワードを唱える。
「地下野営シェルター入口」
地面に60cm四方の穴が開いた。手もとで《ライト》を発動させ、穴の中を照らしてみた。設計通りにタラップが存在している。タラップに足をかけてゆっくり降りていく。もう少し入口を狭くしても降りられそうではあるが、窮屈になるだろう。
穴の底に到着した。かなり狭く感じる。タラップとは反対側に手をついて次のキーワード《地下野営シェルター居室》を唱える。入口と居室の床が平面になるように。
「地下野営シェルター居室」
目の前に空間が現れた。中に入って壁や床を確認してみる。きちんと硬化されており、軽くノックした感覚も金属に近いものだった。
「ここまでは問題ないわね、机を作ってプロフェッサーを連れてこよう……ちょっと照れるわね……」
初めてプロフェッサーの名前を口にした気がする。少し長い気もするので愛称を考えておくことにした。簡易テーブルを作って1つめのシェルターに戻った。
「入口と居室を作ったわ。トイレは明日の朝まで漏水テストをするから、このままにして移動しましょう」
『承知しました』
バックパックを背負い、プロフェッサーを手に取って移動した。入口を降りるときにバックパックが引っ掛かり降りることができなかった。
「ダガーとかの装備は引っ掛からなかったから、バックパックの存在を忘れていたわね……」
バックパックをポーチに収納してタラップを降りる。片手にプロフェッサーを持っているので少し怖い。居室に到着してプロフェッサーをテーブルに置いた。
「さて、続きの作業をするわ。都度確認するから何か問題があったら教えてね」
『承知しました』
入口とは反対側に化粧室を作る。こちらも居室の床と平面になるようにする。
「地下野営シェルター化粧室」
自分が設計した通りの空間が現れた。トイレは漏水テスト中なので後回しだ。ただ居心地を確認するために同じ形のものを作って座ってみた。
「うっ、丸見え……私しかいないのは理解しているけど、落ち着かないわね……街で扉の代わりになる布を買おう」
座り心地や、広さに全く問題なかったが、扉がないので居室から丸見えだ。実際使用しているところを想像すると、さすがに居心地より羞恥心の方が勝ってしまった。
残りは換気システムだ。ここでいくつかの疑問をプロフェッサーにぶつけてみた。推測通りであれば、魔法で構築できるかもしれない。
「ねぇ、魔導具と魔道具の差は、なに?」
『魔導具は原初魔法を物質に魔導回路として定着させたものです。魔道具はその魔導回路を物理的に掘り、魔導インクを定着させたものになります』
「なるほどね、私が作った認証用の道具は、魔道具になるのね……魔道具が魔導具の劣化コピーである理由が分かった。魔法発動部分などを理解せずに作るのだから……」
『おっしゃる通りです。古代文明のオリジナル魔法として登録されており、《エングレイブ・サーキット》になります』
複雑な魔導具を作ることは設計を含めて時間がないため無理だが、単純なものであれば私でも作れるかもしれない。
「さっき使った。ウィンドチューブ程度であれば私でも魔導具を作れる?」
『可能だと思われます。仕組みは単純で、魔石から魔力を吸い出し、一定方向に風を送る構造になっています。』
そうとわかれば実際に作ってみる。まず一辺30cmの土の塊を作り出す。そこにL字型で直径10cm程度のパイプを作った。後はこのパイプ内に一定方向の風を送る魔導回路を定着するだけだ。空気の流れは排気が一般的だろう、要は換気扇だ。そして騒音などを考えると、風速3m/s から 4m/s あれば十二分に換気できるはずだ。
「よし、風速3m/sにして一定方向に送り出す。一応浸水への対策として、パイプ内に水分が溜まると外部に排出するように細い管を伸ばして……あ、魔石をセットする場所も作らなきゃ……1日稼働させるために必要な魔石の大きさは?」
『小粒の物、直径1cm程度のもので大丈夫です。魔石を置く場所は念のため一般的なサイズの3cm程度にしておけば問題ないと思います』
今回は室内の空気を吸引する場所が上になっているが、実際は天井に設置するので下側になる。魔石を置く台の位置は後で調整が必要だ。
「よし、吸気部分の近くに魔石を置く台を作って、魔導回路を魔法発生部分につなぐようにして……エングレイブ・サーキット」
パイプの入り口部分が少し光り、そばに魔石を置く台が現れた。多分これで大丈夫だろう。後は実際に稼働させてみないとわからない。




