第27話 空間拡張
本にサポートしてもらいながら、プラスチック容器に空間拡張魔法《ディメンションプラス》を使用した。わずかにプラスチック容器が光りラボに静寂が訪れた。
「成功したのかしら?」
『はい、魔法の行使は成功しています。ゆっくりと1リットルの水を入れてみて下さい。貴女であれば《ウォータ》を使用して正確に1リットルの水を出すことができます』
確かにこれまでポーションを作るときなども《ウォータ》を使い水を出していた。そのとき水の量はビーカーの目盛りを見ながら出していたが、少ないことも多いこともなかった。頭の中に自分が出したい量を自然とイメージしていたのだろう。
1リットルの水を少しずつ入れるようにイメージしながら《ウォータ》を使用する。
「ウォータ」
容器の上に水が現れ容器の中に落ちていく。すでに容器の容量を超える水が入っているがあふれる様子はない。そして最後の一滴が容器に落ちると、容器の縁ギリギリまで水が入っていた。
ビーカーを2つ用意して容器の中の水をゆっくりと移した。1つ目のビーカーに500mlの目盛りまで水を入れた。この容器は250mlなので、すでに容器の容量の2倍だ。そして2つ目のビーカーに水を移すときっちり500mlの目盛りまで水が入った。容器を逆さまにしたが、それ以上水が出てくることはなかった。
「きっちり1リットル入ってた……拡張は成功したとみていいよね?」
『問題ありません。その容器の内容量は1,000mlになっています』
容器を眺めながら大きく息を吐き、ラボの椅子に座った。これで拡張の鞄を作るめどが立った。他にもここにある鞄を参考にして、いろいろと機能を盛り込みたい。まだ出来ると確証があるわけではないが、所有者限定の機能がそれにあたる。
いくつか確認することがある。それらが実現できれば私専用の鞄を作ることができるだろう。
「ここにギルドカードのサンプルはある?」
『古代文明で使用していた個人カードであれば、魔道具庫に保管されています。現在使用されているカードより高性能ですが、基本的な作りに違いはありません』
作業台の上に鈍く光る金属のカードが現れた。見た目はキャッシュカードサイズの金属板だ。薄っすらと幾何学模様のようなものが浮いて見えるが、何も表示されていない。
『これはまだ登録がされていない個人カードになります。魔力を流しながら意識して触れると個人情報が読み取られカードに情報が登録されます。こちらで何度でも登録を解除することができるので、解除したい場合は、お申し付けください』
「何度でも検証できるのはありがたいわ。早速やってみるわね」
作業台の上に置いた個人カードに手を触れて、自分の所有権を意識しながら魔力を流す。表面の幾何学模様のようなものが光り、私の情報が書き込まれていった。
【名前】ミオ・カンザキ
【性別】女
【種族】人種
【年齢】18歳
【所属】なし
【称号】異世界人 / 薬師 / 科学者
【所持金額】なし
【身長】154cm
【体重】53.5kg
【サイズ】82cm / 61cm / 83cm
【健康状態】良好(維持)
【魔法】生活魔法、全属性魔法、原初魔法、空間魔法
【特殊】イルヴァーシル言語
【特記事項】なし
表面と裏面に分かれて記載されていた。内容はまたもツッコミどころ満載だ。しかも今度はすべて表示されている。サイズは必要なのだろうか?自分の体調管理には便利だけど、太ったり、ウエストが増えたりするとショックだ。デリカシーの欠片もない。
「ここに来る前は体重ももう少しあったし、ウエストも太かった。胸の大きさは多分変わらない、現状のところほぼ理想の体型ね。今はいいけどここから外に出たら気をつけなきゃ……ところで前もあったけど、なぜ身長や体重、サイズの表記があるの?」
『貴女もおっしゃっていた通り、第一には体調管理のためです。また、衣服や防具などを作る際にも簡単にわかるので重宝されていました。なお、すべての情報を他人が見られるわけではありません。特に裏面の情報は、本人が開示をしない限り閲覧はどのような手段を用いても不可能です』
「わかったわ。どのみち現代のカードにはここまでの情報は記載されないし、問題ないわね。ところでこのカードはもらえるの?」
『ここを出るときに持ち出してもらっても問題ありません。現代のカードと同様に本人が意思をもって触れない限り情報が表示されることはありません。
理解しているとは思いますが、現代では唯一の個人カードです。紛失しても問題は起こりませんが、注意していただけるとありがたいです。それと、そのカードは身分証として使える物ではありません。リデナスタで新たな身分証を発行してください』
この個人カードは自分専用の鞄を作るときにセキュリティの一環として利用できるかもしれない。他にも通常の鞄に見せる偽装や、触れたものを収納する機能なども盛り込んでいきたい。後は状態の維持ね、これは《ステイシス》を利用すれば問題ないだろう。なんとかここを出るまでに完成させたいものだ。




