第24話 毒薬・麻痺薬と解毒薬
特級品の軟膏を今の時点で作る気はない。軟膏のベースとなる油脂が動物性のものしか手に入らないからだ。製薬してみたがどうしてもあの獣臭さが気になってしまう。
合成の魔導具を使えばラードの代わりとなるワセリンの生成もできるが、そこまでして市場に流通させられない特級品を作る必要はないと思っている。
毒薬はいろいろな種類がある。これは原材料となる植物や鉱物によって種類が変わるからだ。あと、この世界では麻痺薬と呼ばれているが、これは神経毒の弱いものだと推測している。強めの筋弛緩剤だ。特に血清などの研究をするつもりもないので、毒薬の作成方法は聞いたが、作ることはしなかった。ここから出る前に少し作るつもりでいるが、最低限で問題ない。
問題は解毒薬だ。この解毒薬、毒消し草と呼ばれる薬草から製薬可能なのだが、効能の意味が分からない。毒に侵された状態でこれを飲むと、その毒が植物由来である限り、すべて解毒できるのだ。
「解毒薬の効能が壊れているわね……でも、これ動物性特化や鉱物性特化の解毒薬も存在するの?」
『研究はされていますが、今の時代には存在しません。魔法の《キュア》がどちらにも対応しているので、あまり研究も活発ではありません』
「この解毒薬ってあまり使われていないのでは?」
『そうでもありません。強力な動物性や鉱物性の毒でない限り、解毒が可能です。植物由来の解毒に特化しているものの、他の毒物が解毒できないわけではないのです』
「なるほど、即死してしまう毒は仕方がないとしても、毒の進行を緩和できるのであれば、その場での対応をするには便利な薬なのかも……」
解毒薬の作り方はポーションとほぼ同じだ。なので毒消し草から解毒薬を作ってみた。出来上がったのは、乳白色の液体だった。一口、試飲したがいつも通り苦い。えぐ味もある。薬品検査の魔導具で確認してみる。
【検査結果】
薬品名:解毒薬
効能:二級品
薬効抽出率:72%
範囲:植物(完)/ 動物(小)/ 鉱物(小)/ 菌類(中)
製薬者:ミオ カンザキ
検品:問題なし
二級品ができていた。結果に範囲という項目が追加されていた。だいたい意味は分かるが一応聞いてみる。
「この範囲ってなに?」
『範囲の項目は解毒の効果がある毒物の種類と、記号の部分で効果の高さを表しています。また、「完」なら完全解毒、「中」はほぼ解毒可能。「小」が緩和できる意味となり、今回表示はありませんが「無」であれば解毒不能になります』
魔法の要素があるのだろうけど、ここまで広範囲に解毒できるのはやはり不思議だ。1本は基本的な手順で製薬したが、ここからは製薬魔法を使用する。ポーションと同様、製薬魔法の手順は同じだ。特級品から三級品までを製薬した。一級品から三級品の範囲は同じだったが、特級品は、菌類が「完」、動物と鉱物が「中」の表示になっていた。
「この解毒薬も特級品は私が製薬したのが初めてなの?」
『はい、ここまでの効果がある解毒薬は、現代では存在を確認できておりません。過去に解毒薬ではありませんが、同様の効果がある魔導具が存在しました』
解毒薬の製薬はとりあえずこれでいいだろう。在庫はここを出る時までに増やしておけばいい。
最後に避妊薬の製薬をする。この薬も結構重要で、色街でも必要だが何らかの理由で子供を作りたくない夫婦などにも需要があるはずだ。
「この世界に避妊具なんて存在しないわよね?」
『おっしゃる通り、存在しません。妊娠の抑制は避妊薬によるものか、避妊魔法を使用することで実現されています』
予想通りではある。科学技術の発展が乏しいこの世界では、物理的に避妊をすることは難しいだろう。薬か魔法に頼るのは必然といえる。
「避妊薬や避妊魔法はどのような効果か教えてくれる?あと、どのくらいの価格なの?」
『承知しました。避妊薬と避妊魔法の効果はほぼ同じで、妊娠を抑制し、月経痛の緩和などの効果があります。また緊急避妊の効果も認められます。この2つの大きな違いは持続時間です。避妊薬であれば一か月間、避妊魔法であれば一年間の効果になっています。また、避妊魔法は効果中でも解除が可能ですが、避妊薬は解除することができません。この地域での標準価格は、避妊薬は3,000シル、避妊魔法は50,000シルとなっています』
なるほど、自分の状況によって使い分けられるのは便利だ。月経痛の緩和があるのは嬉しい、私自身も是非利用したい。
「わかったわ。避妊薬の材料とレシピを教えてくれる?」
『承知しました。避妊薬の材料は月光草と拒絶草になります。それぞれの乾燥した薬草を同量、水に入れます。軽く攪拌したものに魔力を注入すれば完成です。魔力ポーションと同じくポーション瓶に封入する際は、ろ過を行ってください』
手順通りに作成すると透き通ったピンク色の液体が完成した。薬品検査の魔導具で確認してみると二級品と表示されている。初回の製薬で安定して二級品が作れるのは、私もこの世界の製薬に慣れてきたからだろう。もちろん特級品も作った。




