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自分が描いたイラストの異世界に転移してしまった  作者: マホロ
第1章 隠遁(いんとん)

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第23話 医療と一般薬

 ポーション作りもひと段落したので、これからは一般薬の製薬に舵を切る。この領域にある材料を使えばそれなりの種類が製薬出来ることが確認できた。まずは消費量が多いとされる軟膏だ。


 軟膏の効果はポーションを傷口に掛けたときとほぼ同様である。違いがあるとすれば、当たり前だが飲むことはできない。ポーションに比べ回復する速度が遅いが、浅い傷であれば一晩もあれば、綺麗な肌に戻る。緊急時は一般の人でもポーションを使用するが、基本的には軟膏で済ませている。


 教会で治癒魔法の《ヒール》を使ってもらうという手もあるが、ポーションよりも高いので利用する人は少ない。ただ、夜中などにポーションがないなどで治療できないとき、教会に行けば治療してもらえるので一定の利用者は存在する。


「治療だけを見れば、教会は夜間救急病院ね……それにしてもこの世界には医療という概念がないのね」


 もちろん教会での魔法治療やポーションでの治療は医療と言えるかもしれない。だが、医師という専門性の高い職業がなく、外科手術などもない。ある意味、薬師がその役割をある程度担っているが、やはり製薬が専門なので医師ではない。本によれば内臓疾患などの病気は治癒ポーションでも完全に回復することは出来ない。例外的に秘薬というものも存在するが、流通しているものではない。魔法も万能ではなく、《キュア》や《ピュリフィケーション》を使用すれば治せる病気もあるが、すべてに対応できるわけではない。


「私が作った抗生物質やビタミン剤で治る病気もあるだろうけど、私しか作れない薬を流通に乗せることはできないわね……予防薬なんかを作ったとしても同じ理由で無理ね……このラボでしか作れない薬を外に持ち出すことはできないわ」


 このラボにある結合の魔導具を使わないと化学物質をつくることはできない。自分用の薬を作って持ち出すのが限界だ。すでに抗生物質やビタミン剤などはそれぞれ1万錠以上の在庫がある。すべて状態維持の容器に封入してある。どの程度持ち出せるかは荷物と相談になるが、数は限られてくるだろう。


 今は悩んでも仕方がないので、軟膏を作ることにした。


「軟膏のレシピを教えてくれる?」


『承知しました。軟膏の材料は治癒ポーションに使ったものと同じ薬草です。薬草をすり潰して油に混ぜます。湯煎した動物性油脂に薬草の入った油を加えて魔法を注入しながら練り上げれば完成します。薬草1株あたり動物性油脂は250g程度必要です』


「この世界で使われている入れ物はある?」


『備品棚にある小さな木製の壺が軟膏の入れ物です。』


 備品棚から小さな木製の壺を取り出した。片手に乗る大きさで容量は100ml程度だろうか、形は同じだが大きさにはブレがある。手作りであることがよくわかる。


「蓋も木製ね、持ち運びが不便そう……どうやって持ち運んでるの?」


『大量に持ち運ぶことはないので、蓋を押さえて運びます。大きさもバラバラなので専用のケースを作ることも難しいです』


(これに入れるのはなしね、備品棚にある地球の軟膏容器に入れよう……)


 持ち運びのことを考えると木製の壺に入れるのは現実的ではない。ここで作った軟膏は私しか使わないのでプラスチックの軟膏容器で問題ない。


 キッチンからオリーブオイルとラードを持ってくる。薬草園で採取してきた薬草を薬研やげんを使いすり潰していく。ペースト状にまですり潰した薬草にオリーブオイルを加えた。


(まずはここまでね、次にラードだけど……見た目とか匂いがラードっぽいからこれにしたけど、これって豚の脂なのかな?食料棚の入れ物には油脂としか書かれていなかった……)


 ビーカーにラードを入れてクリーム状になるまで《ウォーム》を使い、ゆっくり温度を上げていく。クリーム状になったラードを乳鉢に移して、そこにペースト状の薬草を入れる。軟膏板なんこうばんを使い魔力を注入しながら素早く練っていく。ペースト状の薬草とラードが完全に混ざったら完成だ。完成した軟膏を軟膏容器に移して冷ます。


「ふう、できた。ひたすら混ぜるから腕が痛くなるわね……これも薬品検査の魔導具で検査できるの?」


『可能です』


 冷えて固まった軟膏を薬品検査の魔導具にセットする。ボタンを押すと検査結果が表示された。




【検査結果】

 薬品名:治癒軟膏

 効能:二級品(8時間)

 製薬者:ミオ カンザキ

 検品:問題なし




「この効能の部分にでている『二級品(8時間)』てどういうこと?」


『この軟膏を塗布してから怪我が完治するまでのおおよその時間を表しています。三級品であれば16時間、二級品であれば8時間、一級品は4時間で治療が完了します』


「特級品は?」


『この世界で製薬された記録がありません。よって時間はわかりかねます』


「もしかしてポーションも特級品ってなかった?」


『ご指摘の通りです。貴女以外が製薬した記録は過去にさかのぼってもありません』


 衝撃の事実に私は力なくラボの椅子へと体を預けた。かなりヤバいものを作り出していたらしい。抗生物質も作っているので今更ではあるが……


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