第22話 不味いポーション
魔力ポーションを試飲したがスポーツドリンクのような味だった。これでこの世界の三大ポーションが製薬出来るようになった。この3種類のポーションが冒険者の間では日常的に使われている。材料さえあれば製薬できるので、ポーションを売れば生活に困ることはないだろう。
「ところで、このポーションはどのくらいの金額で販売されているの?」
『多少の誤差はありますが、販売価格は次の通りです。治癒ポーションは5,000シル、体力ポーションと魔力ポーションは8,000シルになります。リデナスタにある冒険者ギルドで販売されている価格で、この地域ではこの価格が標準価格になっています』
「ポーションは基本的に不味いものとして認識されているのよね?私の製薬魔法で作ったポーションが市場に流れるとかなり目立つよね?」
『おっしゃる通りかと思います。少量であれば最初のうちは目立つことはないと思いますが、時間が経てば作成者も特定されるでしょう。市井に埋没して暮らしたいのであれば、味の悪いポーションを作る必要があります』
「そうよね、製薬魔法で不味いポーションを作ってみるか……わざわざ味を落とすことは腑に落ちないけど、トラブルを回避するためには仕方のないことね」
一番手間の掛からない方法を試してみる。製薬魔法を使用するときに苦味成分を混ぜることだ。製薬魔法を行使する際に、作成するポーションの成分のみを抽出するようにイメージしてきた。今度は、そこに苦味成分を追加してイメージする。これで抽出率が高く不味いポーションを製薬できるかもしれない。
この世界の魔法はかなりあいまいなイメージであってもある程度補完して実行してくれる。この法則を利用して苦味成分というあいまいなイメージを勝手に補完してくれることを狙ってみる。
「最初は三級品の治癒ポーションね……私の感覚ではかなり苦く、えぐ味がひどかった。えぐ味はいらない」
薬草と水を用意してビーカーに入れる。薬草は綺麗に洗ってあるが、ビーカーへの入れ方は適当だ。薬草の一部が対象の水に浸かってさえいれば、問題なく製薬できる。これも補完機能の一部だろう。
抽出率を69%に設定して、苦味成分を足すイメージをする。苦さの感覚は私の舌が感じたものなのでそれを信じるしかない。実際に流通させるポーションを作るときは、販売されているポーションを試飲して味の感覚を掴めばいい。製薬魔法を実行する。
「できたみたいね……少し濁りがあるかしら?でも問題はなさそう。爽やかなハーブの香りではなく、青臭い草の匂いがしているから……」
薬品検査の魔導具で結果を確認してみたが、三級品で抽出率は69%になっている。味の記憶があるので試飲することを少しためらってしまったが、覚悟を決めて一口、口に含んだ。
「……まっずい!でもえぐ味がない分、いくらかマシね……効果も問題ないから三級品はこれでいっか」
続いて二級品と一級品を作っていく。抽出率を上げて苦味成分を下げていくだけだ。両方とも私が想定していた味になったのでよしとする。特級品に苦味成分は混ぜない。今のまま美味しいポーションでいてもらう。
体力ポーションと魔力ポーションも同様の方法で不味くした。苦みの程度を知るために市販品に近いものを作って飲むのは、リスク管理のためとはいえ少々苦しかった。
魔力ポーションはどの等級も同じような苦味だった。だが、体力ポーションが強烈に苦かったのが印象的だった。あれは飲み物じゃない。
ここに来てから120日が経過した。不味いポーションを作った後は、体力ポーションと魔力ポーションをそれぞれ1,000本ずつ寄付するために製薬を行ったり、他にはあると便利な薬剤を化学合成で作ったりしていた。
抗生物質や鎮痛剤はすでに製薬していたが、総合感冒薬や胃腸薬、整腸剤などを追加で作成した。
「ねぇ、ポーションばかりに目が行っていたけど、他にどんな薬があるの?それと現地の薬師達はポーション以外に何を作っているの?」
『ポーション以外の薬は、一般に販売されている軟膏や二日酔いに効く薬、解毒薬などが代表的なものです。場合によっては毒薬や麻痺薬、呪薬を作ります。色街がある大きな街の薬師は、避妊薬や媚薬、精力剤なども作っています』
「その中で、この薬草園にあるものを使って作れる薬はどれがあるの?食料棚とか果樹園も含めていいわ」
『薬草園と食料棚にある材料を使用することで、軟膏、解毒薬、毒薬、麻痺薬、避妊薬が作成可能です。また種類が限定されますが、呪薬も作成可能です』
それなりの種類が作れそうだ。ポーションの製薬や化学物質の合成を通じて製薬に必要な基本的な情報は蓄積されたと思う。極端に魔法要素が強いものでない限り製薬することは可能だろう。レシピは本が教えてくれるので、作れるものは一度作っておきたい。それに製薬魔法での作り方も確立しておけば尚更よいだろう。ここまで準備できれば製薬に関しては、現地の情報収集後に微調整をすれば問題ない。




