第20話 ポーションの味
体力ポーションの製薬は出来るようになった。まだ魔法製薬は試していないが、問題なくできるだろう。
魔法製薬の前に少し気になることが出てきてしまった。ポーションの味だ。治癒ポーションと体力ポーションを作ったが、検査の魔導具できちんと製薬出来ているのは確認が取れている。でも未だにポーションを飲んだことがない。必要がないというのが一番の要因だが、味を気にすることがなかった。
陽だまり茶を作ったことで久しぶりに水分を摂取する行為を思い出した。ここに来た当初に水は少し飲んだが、それ以降水分の摂取を行っていないし、食べ物も食べていない。
「飲むことも、食べることも忘れてたわね……ところで何も食べてない状態から急に食べても大丈夫なの?」
『問題ありません。状態がある特定の時間から維持されているので、この状況が解除されても、体は状態が維持された時間に戻るだけです。予測されているとは思いますが、この領域に居る限り不老です』
そうよね、すべての生理現象が止まっているのだから不老になっているのもおかしくない。だからこそこの領域に滞在できるのは1年と決められているのだろう。
薬品棚から治癒ポーションを取り出した。まずは三級品を飲んでみる。わずかに草の匂いがする治癒ポーションを口に含む。
「うげぇ、不味い!もう一杯!……は、いらないわ」
不味い、飲む前は少し草の匂いを感じた程度だったが、口に含んだ瞬間、苦みとえぐ味が爆発的に広がった。お決まりのセリフをはいてみたが、残った治癒ポーションですら飲む気になれない。
「ねぇ、この世界の人はこれを飲んでるの?」
『はい、確かに不味いようですが、怪我が治るのです。安くはない治癒ポーションを飲まない選択肢はありません』
もったいない気もするが、残ったポーションは排水口に捨て、《ウォータ》で出した水を使い口を濯いだ。
次は二級品だ。苦みやえぐ味が減っていればいいのだが……二級品の治癒ポーションを口に含んだ。
「うっ、不味いけど、さっきほどではないわね……」
三級品よりはかなりマシになった。不味いのには変わりないが、苦みはかなり減っているし、えぐ味はほとんどない。
「かなりマシになってる。三級品と二級品でこんなに違いがあるんだ……」
『先ほど飲まれた三級品は分離の魔導具を使用せずに製薬したものです。そして今飲まれた二級品は分離の魔導具を使用して製薬した物です。等級によっても差が出ますが、多くは魔導具の有無によるものかと思われます』
「そうなんだ……なら分離の魔導具で製薬した三級品はさっきの物より味はましなの?」
『三級品が入ったケースの前から3列目、左から4番目のポーションを飲んでみて下さい』
口を濯いでから、本に言われたポーションを取り出し蓋を開ける。覚悟を決めて口に含んでみた。
「……確かに二級品よりは苦いけど、えぐ味はほとんどないわね……魔導具でえぐ味の素になっている物質が除去されているのね……ねぇ、通常の方法で製薬したもの、魔導具を使って製薬したもの、魔法で製薬したもの、すべて把握してる?」
『はい、把握しております。倉庫に保管されている物で、等級とは関係なく259本が通常のものです。そして337本が魔導具を使用したもの、残りの404本が魔法で製薬したものです。等級ごとに選別しますか?』
「お願いするわ、あと、この薬品棚にあるサンプルも並べ替えてくれる?」
『承知しました』
薬品棚にある治癒ポーションの位置が変わった。保管庫とは別に、ここには各等級の治癒ポーションをサンプルとして50本ずつしまってあった。ポーション用の管理箱が1つで50本しまえるのもこの本数にした理由になっている。
まだ試していない一級品と特級品を手に取った。一級品は魔導具を使用したものだ。そして特級品は魔法製薬でのみ製薬できるものなので一種類しかない。
一級品の蓋を開け、口に含んでみる。苦みはほとんど感じない。後味でわずかにえぐ味を感じる程度だ。特級品に至っては苦みもえぐ味も全く感じない、代わりに爽やかなハーブの香りが鼻を抜けていった。
「は?これはさすがに違いすぎじゃね?」
『味や香りについて詳しくわかりませんが、純度が極めて高い最高級の治癒ポーションになるため、そのようなことになっていると推測されます』
最後に魔法製薬で製薬した三級品と二級品、一級品を試飲してみる。結果、等級に関係なくすべての治癒ポーションが同じ味だった。本の推測さえ間違っていた。製薬魔法で作ると美味しいポーションができるようだ。
「私が使う治癒ポーションはすべて魔法で製薬したものに入れ替えよう。保管庫は……まあそのままでいいわね、それにしてもこのポーションは冷やして飲んだら美味しそうね」
薬品棚の治癒ポーションをすべて魔法で製薬したものに入れ替えた。保管庫の治癒ポーションは選別だけにとどめ、特に入れ替えは行わなかった。数が多いので、面倒になったのは秘密だ。




