第114話 スライムの利用価値
新居の風呂場で浴槽を作る作業を開始した。リムストも60kg用意してもらったので足りないということはないだろう。検証時のトイレは総リムスト製にしたが、浴槽は芯材を使用することでリムストの消費を抑えるつもりだ。
「まずは、芯材になる土でおおまかな形を作るわね」
リムストの厚さを10mmとして土を硬化しながら浴槽を作っていく。浴槽の真下は排水が流れる空洞になるため、支えるための足を構築する。その上に浴槽を作った。コーティングはいらないので硬化だけしておく。そこに厚さ10mmでリムストを盛り付けて圧着する。土の芯材は硬化してあるものの表面は荒く仕上げてある。リムストがしっかり圧着するようにだ。《ウォータ》でリムストに水を混ぜながら圧着し、乾燥と硬化を同時に施していくと、真っ白な浴槽が完成した。
「最後にコーティングをすれば……これで完成ね」
浴槽の表面に触れてみるときちんとコーティングされており、つるつるになっている。浴槽の底にはわざと粗くしたすべり止めを全面に作ってある。そして、浴槽内に段差を設けて座れるようにした。これで半身浴もできるだろう。
「ほう、白いとまた違った感じに見えるのう。浴室が明るくなった」
「嬢ちゃんは、いったい何者だ?この浴槽といい、魔法の使い方といい……いや、すまん聞かなかったことにしてくれ」
「ふふ、バリムさんそれについては内緒です」
浴槽内に入り壁との接合点を確認していく。やはり少し隙間があるのでリムストで埋めていく。他にも外側の床との接合点を確認し、隙間を埋めた。
「バリムさん、水場のこういった隙間を埋める素材はありますか?」
「あるぞ、加工されたスライムの粘液と細かい砂を混ぜたものだな、スライムパテという。砂が細かければ細かいほど滑らかになり、隙間を埋めてしばらくすると固まる。水を通さないので、キッチンの水場で良く使われている」
「砂は何でもいいのですか?」
「ああ、砂でなくとも粉末ならなんでもいい。極端な話、ライ麦粉でも構わない。腐るがな」
私は鞄から粉末状になった砂を出した。これは砂岩から炭化ケイ素を作るためにケイ素だけを抜いた残りだ。ほとんどが長石で他にも少量の鉱物が含まれているが問題はないだろう。
「これは使えますか?」
「えらく細かいが、砂であれば問題ないぞ」
「では、この浴槽と壁や床との隙間にこれで作ったスライムパテを埋めてください。まだ完全には埋まっていないので仕上げをお願いします」
「わかった。やっておこう。目の細かい袋を持ってくるから少し待っててくれ」
バリムさんはそう言って、各種部材が保管してある庭に向かっていった。戻ってきたバリムさんから袋を受け取り、その袋が一杯になるまで詰め込んだ。
「余りは差し上げます。スライムパテとして活用してください」
「わかった。ありがたく受け取っておこう」
話を聞くと、このスライムパテは建築現場では欠かせない素材なのだそうだ。水場の目地埋めはもちろんのこと、壁や柱の隙間を埋めたり、スライム板ガラスを窓枠に固定するときなどにも使われる。他には、割れた石板の修理なんかもこのスライムパテが利用される。接着力はそこまで強くないが、充填剤としての利用は幅広いらしい。
(スライムの利用価値が高い……瓶だったり、窓だったり、充填剤にも使われているなんて……)
「もう少し、作業をしたいのですが、何か作業台のようなものはありますか?」
「庭に行けばあるぞ、見られたくない作業ならここに運んで使ってくれ。洗面所には入らないように言ってあるからな。俺はスライムパテで仕上げをしているから、何かあったら声をかけてくれ」
「わかりました。ご配慮ありがとうございます」
庭から作業台を運び込んだ。ついでに椅子も2脚もってくる。作業台の上に結合の魔導具を設置した。
「魔導具を作ってしまうのか?」
「ええ、ここなら建材もあるのでパネルも作れるから……ここで結合の魔導具を使って作ればサイズ調整も楽でしょ?」
「そうじゃな」
まずスイッチパネルの外装を作る。参考にしたのは、日本の住宅で使われているワイドスイッチと呼ばれるものだ。サイズなどはフェシーに調べてもらった。
結合の魔導具に砂岩と薪を入れてスイッチパネルのイメージを送る。上下に2つのスイッチで、幅70mm、高さ120mm、奥行き50mmの大きさになる。スイッチの大きさも参考にして、42mm×45mmとした。炭化ケイ素でできたスイッチパネルができた。作業場にあった茶色の砂を混ぜたリムストでコーティングを行うと、色の薄いベージュになった。スイッチ部分のコーティングは魔石の粉末も混ざっている。
スイッチの中心には穴が開いており、そこに魔石を接着する。これで、吸収と注入のどちらも対応するスイッチができた。魔導回路の定着は後にして、パネルを埋め込む穴と、浴槽近くに設置する予定の魔導具までの配管を作っていくことにした。




