第111話 水回りの配管工事
新居の1階部分がほぼ完成したので、排水管を作りに現場にやってきた。ここから先の作業はバリムさんには口外しないでほしいものになる。
「では、作業をしますね。ここで見たものは口外禁止ということで……」
「おう、言われなくても誰にも言わないさ」
まず浴槽を置く部分を平らにするため、表面の土を5cmほど収納した。そしてそこに硬化した土を敷いていく。この時排水溝に水が集まるように傾斜をつけておいた。家の壁と地面の境界も土でしっかり固めておく。水回りなので漏水対策のコーティングも全体的にしっかりしておいた。
「これで、浴槽の排水ができるようになりました。次は処理施設までの配管ですね。図面によると地下室までの距離は80セリグあるので、配管を通す余裕は十分にあります。後は角度ですが1リグ進むごとに1セリグ下がるようにすれば良いから……」
図面を見ながら長さと勾配を計算していく。最後は直角に処理施設に入るようにすればいいだろう。深さも地面から30cm程度の場所で問題ない。イメージを固めていく。配管の直径は100mmにする。すべてのイメージができたので魔法を行使する。
排水溝の端に穴が開き、処理施設までの配管が通ったはずだ。
「ウィンドソナー」
魔法の風が排水管を通り、処理施設まで抜けたのが確認できた。配管の硬化までは行っているがコーティングがされていない。配管のコーティングを行う。そして最後に《ステイシス》を掛けておいた。これで詰まることもないだろう。風呂の排水もこの排水管につながるように穴を開ける。これは計算するまでもなく終わった。
「排水管の施工はこれで終了です。バリムさん水を流しても大丈夫ですか?処理施設の状況まではわからないので……」
「……」
「バリムさん?」
「あ、すまん。水を流してもいいぞ、もうスライムは放り込んである」
《ウォータ》で水を出して風呂場に水を流した。勾配も問題なくきちんと排水溝に向けて流れていき、排水管に水が吸い込まれていった。浴槽を設置する側にも同じように水を流すが、こちらも滞ることなく水が流れた。《ウォータドライ》を使い風呂場から水分を除去する。《ドライ》でも良かったのだが、タイルの目地内まで水分がなくなりそうだったので、表面の水分をとる《ウォータドライ》を使用した。
「問題ありませんね、バリムさんの施工も完璧です。タイルも落ち着いた色合いで綺麗ですし、私好みです」
「そ、そうか。ありがとう。それにしても嬢ちゃんはすごいな、いとも簡単にここまでの作業をしちまうなんて……嬢ちゃんが家を建てた方が早いんじゃないか?」
「そんなことありません。こういった風呂場のような一部の知識はあります。ですが、家全体の建築については、専門家には遥かに及びません。私がやれば早い作業もあるかもしれませんが、職人さん達には長年積み重ねてきた建築技術の裏打ちがあるのです。それを疎かにすればまともな家は建ちませんよ」
「ああ、ありがとよ。そこまで褒めてもらうと職人冥利に尽きるってもんだ。後は何か作業するのかい?」
「そうですね、水回りの確認をしておきましょう。ここ以外だとキッチンとトイレですかね?」
「そうだな、後は工房にも1つ水場ができる」
「確かに必要ですね。わかりました。工房の排水管はどうする予定でした?」
「距離がそこまでないから、こっちでやっちまう予定だったが、嬢ちゃんがやるか?」
「そうですね、ついでにやってしまいましょう。工房は最後で、まずキッチンからお願いします」
キッチンの水場になる予定の場所に案内してもらった。古い建物でも同じ場所に水場があったので排水管は既存のものを使う予定だ。石板を組み合わせて作ったシンクから、粘土を焼いて作った排水管が地面の排水口に伸びている。
「この洗い場の下の排水管は外せます?」
「簡単だぞ、ちょっと待ってくれ」
バリムさんに排水管を外してもらい、排水口の中を確認する。同じように粘土を焼いて作った排水管が続いているようだ。《ウィンドソナー》で中の様子を確認する。ほぼ直角に処理施設まで続いており、大きな損傷はないが、何カ所か小さく割れている場所があるようだ。
「少し修復しますね」
排水管の直径は150mm程度と大きいので、風呂場と同じ100mmに統一する。直径が100mmになるように土を盛っていき硬化していく。最後にコーティングをして《ステイシス》を掛けた。排水口付近は元の大きさの150mmにしておいた。
「これで問題ないと思います。排水管を戻してもらえますか?」
「わかった」
バリムさんに排水管を戻してもらって、洗い場に《ウォータ》で水を出す。排水管を通って処理施設に流れていったので問題ないだろう。キッチンは水場と竈を含めた部分が土間のようになっており、排水口に向け勾配がかかっている。これなら料理で床を汚してしまっても水洗いができるので楽だろう。次はトイレだが今はあまり弄るつもりはない。




