第107話 魔導照明と魔力線
翌朝、職人街にある魔道具工房を訪れた。魔道具を使った照明や、魔力線について詳しく聞きたかったからだ。
「こんにちは」
「おう、この前の魔導具を買った嬢ちゃんか……なんか用か?」
「照明の魔道具ってあります?」
「あるよ、そこの棚の上に乗っているランプがそうだ」
言われた棚を見ると確かにランプが乗っている。見た目は普通のランプにしか見えなかった。
「これですか……動かしても大丈夫ですか?」
「魔石が入ってないから動かないぞ、裏に魔石を嵌める場所があるからそこに魔石を嵌めて動かせばいい。ほれ」
店主が魔石を投げてくれた。私はランプの裏にある蓋を開けて魔石を嵌めた。スイッチは無く、魔石を嵌めたらランプは光りだした。
「なるほど、こんな感じなんですね……他の種類はないのですか?」
「高くて売れないから作ってないな、それも試供品だ。どんな光なのか確認してもらうために置いてある」
なるほど、受注生産でないと元が取れないのだろう。それにこのランプも光は通常のオイルランプと変わらない光だ。もう少し明るくないとランプの代わりの照明としては力不足に感じる。
「ちなみに、このランプで値段はどの程度ですか?」
「大銀貨8枚だな」
(……割にあわない値段ね、それなら普通のランプを使うわ)
「わかりました。ではこんなのがあるのですが、解析してみませんか?」
昨日の夜に作った照明の魔導具だ。構造はそこまで難しくなく、魔石をセットすると細長い筒状の発光部が光る照明だ。長さは短く15cm程度で、LEDの直管蛍光灯と同じような感じになっている。ただ、素材は炭化ケイ素やガラスを使用しているので今の技術では再現できないだろう。ただ、解析が進めば何か新しい照明が発明されるかもしれない。
長さが15cm程度しかないのは、結合の魔導具の大きさが関係している。細長いものを作ろうとしても、トレーの大きさが最大15cm程度が限界だからだ。
(本当は、60cmの直管蛍光灯を作りたかったのだけどね……)
「なんじゃそれ?照明か?見せてくれんかの?」
「どうぞ、端に魔石を付けると光りますよ」
店主は魔石を取り出して端にあるくぼみにセットした。パッと昼白色の光が灯り辺りを照らした。通常は天井に取り付けるものなので眩しいくらいだが、そんなのはお構いなしに眺めている。
「嬢ちゃん、これをどこで?」
「まあちょっとした伝手ですね」
店主はヴェニカの顔を見てから、また私を見た。まあそういう考えに行きつくのは無理もないだろう。
「解析と言っておったが、いくらで譲ってくれる?」
「ああ、ただでいいですよ。どうせ私も貰ったものですから、解析が上手くいって魔道具として作れれば便利かな?と思ったくらいなので」
「だが、これは古代文明の遺物だろ?ただというわけにはいかん。完全に動作しているものでもあるので、金貨100枚はくだらんぞ」
(……10分程度で作ったものが金貨100枚はインフレが過ぎるわね……材料も岩と薪だし……)
「そこまで言うのであれば金貨5枚でどうですか?残りは魔力線の改良についての依頼料ということで……」
「どう考えても儂にしか得がないように聞こえるが……嬢ちゃんがそれでいいと言うのであればそうしよう。ドリュス・マテリア工房のガドルだ」
「ミオです。よろしくお願いします」
「それで、魔力線の改良についての相談ということだが、どう改良したいのだ?」
私は肩から下げた鞄から昨日買った魔力線を取り出した。ちなみにこの鞄は胴衣を買った店で新たに購入したものだ。ちらっと覗いたときに目について、50,000シルとそこまで高くなかったので購入した。
「これが現在汎用的に使用されている太さの魔力線ですよね?もっと薄くなりませんかね?」
「そうだな、それ以上薄くするとすぐに折れてしまうから、その形になっている。何百年も研究してきた答えだ」
「なるほど、魔力線に使われている金属は鉄ですか?」
「そうだな、産出量などを考えると、鉄が一番コストがかからないからな。魔力線は魔石に膨大なコストがかかる。素材部分はできるだけ安いものにしたい」
「そうですか、魔力線は溶けた鉄に魔石を混ぜて作っているのですか?」
「その方法もあるが、一部の工房しか鉄を溶かせるほどの炉を持っていない。なので鉄のインゴットを加熱し、そこに魔石の粉を挟み込んで馴染ませていく方法で作られるか、魔石の粉が混ざった魔鉄のインゴットを叩いて延ばす方法だな」
「魔力線については理解しました」
鉄の針金の簡単に曲げられる太さにするには1mm程度まで細くしないといけない、妥協しても1.5mmだろう。フェシーから聞いた伸線加工をするにはダイスと呼ばれる器具が必要だ。それに熱した細い鉄を通して引っ張ることで針金が作れるが、一定の力で引くことと、鉄が柔らかくなる温度を保たなければならないので、普通の工房では厳しいだろう。
今回は技術情報を出して技術革新を促す程度が限界かもしれない。




