表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛請負人・鉄平 ―ギャルゲー主人公の友人として恋を請け負っていたら、女神様が筋肉(からだ)目当てで距離を詰めてくるんだが  作者: 強炭酸
Last Case 主人公 白狼&鉄平

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/41

Last Case そして本編へ②


挿絵(By みてみん)


【女神様視点】


悪鬼の一件をきっかけに、私と鉄平は――否応なく、この世界の裏側へ足を踏み入れてしまった。


白狼の紹介で案内されたのは、退魔師連合の訓練施設。

今後のために護身術を教えてくれるらしい。


鉄の扉をくぐった瞬間、空気が変わった。


コンクリートの匂い。

乾いた埃の味。

高すぎる天井が声を吸い込んで、やけに静かだ。


体育館より広く、

病院より落ち着かない。


人間の世界の施設なのに、

どこか戦場の匂いがする。


(私はなんとかなるけど……鉄平には必要かもね)


隣に立つ彼を横目で見る。

まだこの世界の危険を、完全には理解していない顔だ。


――守らなきゃ。


そんな感情が胸の奥で静かに芽生える。


そのとき。


「――はじめまして」


静かな声が空気を切った。


振り向くと、

ブレザーの上から白衣を羽織った少年が軽く会釈していた。


黒髪。整った顔立ち。

眼鏡越しの瞳は理知的で、声は柔らかい。


「僕はいさみ。退魔師連合・科学異能研究所で見習いをしてる。同じ高校だよ」


白狼の次ぐらいにはイケメン。


……ただし。


(筋肉がイマイチね。もっと鍛えなさい)


思わず心の中で辛口採点してしまう。


その瞬間。


背後から、空気を裂くような足音。


「おにい」


振り向く間もなく、赤髪の少女が白狼に詰め寄った。

サイドテールが揺れている。


翠鳥みどり


小柄な体。

身長差は三十センチ以上あるはずなのに、不思議と白狼が小さく見える。


「秒で正体バレてるじゃん。もう隠さなくてよくない?」


白狼は少し困ったように、こくりと頷いた。


挿絵(By みてみん)



「まったく、おにいは」


(……何この子、かわいい)


胸がきゅっとした。

小動物みたいだ。


私は昔から、こういう“かわいいもの”に弱い。


勇が、金属の棒を持ち上げる。


白灯の下で、冷たい光が反射した。


「これは特性スタンロッド。霊能者じゃなくても呪霊にダメージを与えられる。護身用だね」


差し出されたそれを手に取る。


ずしり、と重みが手に伝わった。


金属の冷たさ。

握ると、かすかな振動。


(……ゴツいわね)


私は無くても平気だけど。

でも皆の前では――


(これが私の主力武器ってことにしましょ)


勇の声が少し低くなる。


「ただし――」


静かな警告。


「明らかに強そうな妖怪は、即逃げて。リスク3以上は……命を落とす可能性がある」


「昨日の悪鬼は?」


鉄平が聞く。


勇は少し考えてから言った。


「……リスク2、かな」


(まあ、そんなものでしょうね)


ちなみに神である私は――

制限付きでも、この世界で言うならリスク5相当。


……とは言わないけれど。


「じゃ、訓練開始ね」


翠鳥が軽い調子で言った。


「私が陰陽術でリスク1の眷族を呼ぶから」


鉄平と私はスタンロッドを構える。


(あくまでも鉄平の訓練。私はサポート)


お手並み拝見、といきましょうか。


翠鳥が手を掲げる。


「出よ――水霊」


空気が揺れた。


湿った匂い。

水気を含んだ空気が肌に触れる。


クラゲのような半透明の存在が、ふわりと浮かび上がった。


「雑魚だけど、本物のクラゲみたいに刺してくるから油断しないでね」


(やだなぁそれ)


まあ、加護があるから刺されないし問題ないけど。


「……それっ!」


私は踏み込む。


床を蹴る感触。

腕を振る。


スタンロッドが水霊に叩き込まれた。


バチッ。


青白い火花。


だが――


背後。


「危ない!」


鉄平が割り込む。


(……良いフォロー)


合格。


私は鉄平に対しての判定、だいぶ甘いと思う。


……だって好きなんだから。


えこひいきしたくなるじゃない。


鉄平は水霊にスタンロッドを差し込んだ。


手応え。


反動。


水霊が弾けるように散った。


「……助かった。ありがと」


自然と、手が上がる。


パチン、とハイタッチ。


(これこれーーー!!)


これがやりたかったの!!


掌の温度。

乾いた音。


思わず顔が綻ぶ。


挿絵(By みてみん)


「ほらイチャつかない!まだいるよ!」


翠鳥の声で我に返る。


……おっと。


内心テンション上がりすぎていた。


「……これで終わり!」


スタンロッドを振るう。


水霊が霧のように消えた。


翠鳥が拍手する。


「合格。白狼おにいのこと、よろしくね」


白狼が少し照れたように鼻歌を奏でる。


「フフン♪ フッフッフーン♪」



聞き覚えのある旋律。


某ハンバーガーチェーンのCMのイントロ。


――なるほど。


鼻歌は言葉じゃないから、セーフね。


思わず笑ってしまう。


「ね? おしゃべりでしょ」


翠鳥が肩をすくめる。


「じゃ、ハンバーガー行こっか」


張り詰めていた訓練所の空気が、

ふっと緩んだ。


……悪くない。


人間の世界。

人間の空気。

人間の笑い声。


挿絵(By みてみん)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ