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【15万PV感謝】魔王、いいから力を寄越せ!~転生した俺が美人勇者と復讐聖女を救うまで~  作者: 裏の飯屋
第七章 ウィルブロードへの路編

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第247話 幕間 光龍祭にて


「それじゃかんぱーい」


 俺のやる気の無い掛け声と共に、俺たちは宿の一室でゼフィドと胡蝶蘭のささやかな歓迎会をやることになった。

 コツッという木のコップが軽くぶつかる音が室内に響く。


 まだ夕方とあって、窓の外からは祭囃子の音や人々のざわめきが遠く聞こえた。


「よろしく頼む」

「ありがとうございます。このような会……拙は初めてです」


 胡蝶蘭はコップに入った果実水を一口のみ、感激したように笑顔を浮かべていた。

 歓迎会と言っても、残念ながら酒は無い。

 さすがに刺客がいつ来るか分からない状態だし、俺の身体の傷にも障るからだ。


 丁度光龍祭もやっているので多くの出店がアウリフェリアの町に出ており、それらをいくつか買って宿の女子部屋でみんなで食べるだけだ。

 レオナをベッドに寝かせた横で、俺たちは串焼きや焼き菓子などを囲んでいた。


「そんなに喜んでもらえると僕らもやりがいあるな。蘭さんは冒険者じゃなかったんだよね?」

「はい、拙は武家の生まれで、剣の稽古が日常でした」


 いいとこの生まれのお嬢さんといったところか。


「どんな稽古をするんだ?」

「そうですね……色々ありますが、一番怖かったのは目隠しをして真剣で斬り合うことでしょうか。心眼を養うための稽古だったのですが……あれはもうやりたくないです」


 漫画みたいな修行だな。大変物騒な話だ。


「そうか……よく生きてたな」


 質問したゼフィドも眉をひそめてドン引きしている。

 お嬢様がそんな稽古するかと言いたいところではあるが、エリエゼルという強烈な例を最近見たところなので何も言えない。

 

「ですから、こうして皆さんの旅のお供ができるのが、拙はとても嬉しいのです……」


 俺が屋台で適当に見繕ってきた焼き菓子を、胡蝶蘭が上品な仕草で小さく口に運ぶ。

 こうして見ると絵になるし、見ているこっちも朗らかな気分になるようだ。


「命がけだっていうのに、肝が据わってるというか何というか……。ニライカナイはどんなところなの?」


 若干呆れたようにティアが言う。

 確かに俺もそれは気になるところだ隣の大陸のさらに南ということだから相当遠い。

 胡蝶蘭は着物姿だし名前も日本的なので、和風っぽいイメージは何となくあるのだが。


「海も野山も美しい国です。ただ氏族間の争いが絶えず、拙もそれに巻き込まれ……」


 胡蝶蘭の表情が一瞬曇った。

 彼女はこれでもかなりの手練れだから、その胡蝶蘭が追放されるとはどんな修羅の国なんだか。

 

「蘭さんの着物すごく綺麗だよね。この世界で初めて見たよ」

「何フガク、今度は蘭さんを口説いてるの?」

「今度はって何!? 違うよ、僕がいた国の和服……伝統的な服とよく似ているから」


 この西洋感バリバリの異世界で、まさか和服に刀を見かけるとは思わなかったのだ。

 まあ民族的な衣装を着た旅人や冒険者もいるから、日本風の人がいたっておかしくはないのだけど。

 

「ありがとうございます。これは拙が成人したときに祖母から譲り受けたもので……着の身着のまま国を出てしまいました」


 恥ずかしそうに胡蝶蘭は笑みを浮かべた。

 この人ほんと擦れてなくて終始可愛い人だなと思う。

 彼女を見ていると、雰囲気が似ているからかミユキに会いたくなってくる。

 

「そう言えば気になっていたのですが、ティアさんとフガクさんは恋人でいらっしゃるんですか?」

「「ブッッ!!」」


 丁度俺とティアがコップに口をつけたところで、二人して盛大に口からお茶を噴き出した。


「い、いや何言ってんの蘭さん」

「た、確かになんでそうなるのよ!?」


 俺とティアは一度顔を見合わせ、二人揃って胡蝶蘭に詰め寄る。


「違いましたか、申し訳ありません。お二人がとても仲睦まじく、顔を寄せ合って話されているのを見て拙はてっきり……先ほどルセリナさんにもフガクさんには恋人がいらっしゃると仰ってたので」


 顔寄せ合ってたかな?

 二人とも旅の話になると真剣だから気付いていないだけだろうけど。

 それにゼフィドには野営のときにミユキが恋人だと話したが、胡蝶蘭はそのとき馬車でティアと休んでいた。

 知らなくても無理はない。


「残念だけどハズレだよ。フガクはミユキさんと付き合っているから」


 うんうんと頷く俺に、胡蝶蘭は驚いた様子だった。


「そ、そうだったんですか。大変失礼を」

「いやいいんだけどね……」


 しかし周りから見ると俺とティアでもそう見えるのか。

 気を付けないと、あまり距離が近いとミユキに焼きもちを焼かれるかもしれない。


 ……と思ったが、ミユキもティアが好きなのでどっちに焼きもちを焼くかは微妙だなとも思った。

 むしろ俺が「私もティアちゃんに近づきたいです!」とか言われたら泣く。


「蘭さんは? 故郷とかに恋人とかはいないの?」

「い、いいえいえいえいえ! 拙にはそういった殿方はおらず……! 拙にはまだ早いです!」

 

 体の前で両手をふりふりしている。

 君28歳だよね?

 年齢を言及するのは失礼だから言わないが、早いってことは全然ないと思う。

 お国柄か、箱入り娘なのだろうか。


「ゼフィドさんは、許嫁の方がいらっしゃるんですよね?」

「ああ。ガキの頃に親が決めた相手だがな」

「どのような方なんですか?」


 俺も気になる。

 鉄面皮の堅物職人野郎のゼフィドだ。

 結婚してイチャイチャ新婚生活なんて欠片も想像できない。


「……どんな、か」


 ゼフィドが串焼きを持ったまま固まった。

 許嫁なのにスッと言えないのか。


「……鉄、鋼、いやアダマンタイトのような女か……いや、あるいはシーサーペント……?」

「人よね?」


 ティアが怪訝そうな顔をした。

 今のところ無機物や魔獣という情報しかない。


「子供の頃ってことは、幼馴染ってこと?」

「そうだな。リンドウは漁師の娘で、一つ年が上だ。俺より狩りが上手く、ガキの頃は槍の腕でも歯が立たなかった。

「人だよね?」


 リュシアンの隕石落下みたいな一撃を受けても耐え抜き、さらっと獲物を狩ってくるゼフィドが得意分野で勝てなかった相手って。

 俺は俄然リンドウという女性に興味が沸いてきた。


「まあさすがに今は俺の方が強いが」


 ちょっとドヤ顔で言っている。

 未だに判断基準が強い弱いってどんな許嫁なのだろう。


「でもどうして国を出たの? 結婚が嫌だから?」


 俺は気になって踏み込んだ質問をしてみる。

 会って2日かそこらの人にこんなこと聞いていいのか迷ったが、ゼフィドはあまりその辺気にしなさそうだからいいだろう。


「看護師になって多くの人を救うためと言っていた。国の中央で学校を出て、そのままウィルブロードに渡ったらしい」


 大人になって故郷を出るというのは別に変なことでもないが、許嫁を置いていったのか。

 しかも婚約解消などではなく、今も関係が続いているというのは珍しいパターンだ。


 ただ国を出た志は立派で、大人な女性といった感じだろうか。

 シーサーペントとか無機物のイメージと全く合致しないんですが。


「ではゼフィドさんは。その方を追いかけて国を出られたのですね……素敵なお話です」


 胡蝶蘭は胸に手を当ててうっとりしている。

 結構恋バナが好きなタイプなのかもしれない。


「ああ。あいつの父親に、全然連絡を寄越さないから様子を見て来いと言われてな。俺も戻るのが面倒になったのと、鍛冶師としておあつらえ向きのクエストが山ほどあったからそのままこっちの大陸で冒険者をやってる」


 こいつはこいつで自由だな。

 アルベルが、自作の武器を試したいからとか言ってたのも、あながち間違ってなかったのかもしれない。

 とはいえ、結果的にゼフィドとリンドウは3年かかって再会したと言っていた。

 3年間、まあ多分に寄り道はしたのだろうが、地道に旅をして会えたのなら喜びもひとしおだろう。


「じゃあ二人は結婚するの?」


 ティアも結構興味があるらしく、根掘り葉掘り聞いている。

 何だかんだ好きだね君も。


「……さあ、それはどうだろうな」


 そう言ってコップに口をつけるゼフィド。

 なんか渋くてかっこいい。

 3年間許嫁を追って旅を続けた男の横顔だ。


 俺なんか、ミユキに会えなくなって1週間くらいでもうめちゃくちゃ寂しいのに。

 

「では、ティアさんは?」

「へ?」


 そこで胡蝶蘭の矛先がティアに向いた。

 完全に油断していたティアは、串焼きを咥えながら変な声をあげる。


「ティアさんは意中の殿方などはいらっしゃらないんですか?」

「い、いや私はそういうのは特に……」


 ずずいと距離を詰められ、後ろに反るティア。

 一瞬助けを求めるようにチラリと俺に視線が飛んできた。


「僕も気になるかも」

「拙には分かります……ティアさんは今、熱い情熱を胸の内に秘めておられると」

「え……そう?」

「はい……そうですよねっ」

「い、いやー……それはどうかな……」


 胡蝶蘭のテンションが上がっている。

 彼女の過去はまだよく知らないが、こういう会が初めてとのことだし楽しんでくれているのだろう。


「シグフリード王子とかは? 幼馴染なんでしょ」


 俺が何気なく言うと、胡蝶蘭がハッとなって口に手を当て驚く素振りを見せる。


「ご迷惑でなければ……ぜひティアさんと王子殿下との物語を拙に……ぜひっ」


 外の世界が楽しくて仕方ないと言いたげな胡蝶蘭。

 ティアですらたじたじになっている

 俺も微笑ましくなってにっこり見守っていると、ティアから「余計なこと言うな」とギロリと睨まれた。

 理不尽だ。


 そんなわけで、俺達のささやかな歓迎会はその2時間ほど続く。

 若干俺にだけ機嫌を悪くしたティアが、俺のミユキに対するちょっと気持ち悪い言動を皆にチクったりしてくれた。


 何だかんだでティアも含めて皆のことを知れたのは良かったが、若干俺との間に壁が生まれた気がしないでもない。

 この日は特に刺客の襲撃も無く、俺は久々に楽しい気分で夜を明かすことができたのだった。


お読みいただき、ありがとうございます。

モチベーションにもつながりますので、もしよろしければぜひ評価や感想などいただけると幸いです。

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