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【12万PV感謝】魔王、いいから力を寄越せ!~転生した俺が美人勇者と復讐聖女を救うまで~  作者: 裏の飯屋
第六章 魔女と公爵令嬢編 /断章 魔王の記憶編

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第224話 新たなる旅路


 間もなく夜明けという時間帯。

 俺は全身の火傷、裂傷などの痛みを感じながら馬車に揺られていた。

 乾いた血が身体に張り付き、皮膚が引っ張られるような感触だ。


 あれからレオナは結局目覚めていない。

 ツェリナの村をすぐに発ったが、結局村人たちがどうなったかは分からない。

 ただ昏睡状態の回復には個人差があるのか、チラホラと目が覚めている者も見受けられた


 ちょくちょく村に入って来た冒険者たちもいたので、通報は彼らが行ってくれるだろう。

 レオナは時間が経てば目覚めるのか、あるいはこのままなのか、せめて医者にでも診せられればいいのだが。


「フガク、寝てていいよ。二人しかいないし、しっかり休んでもらえた方が助かる」


 御者台に座るティアが言う。

 荷台にはレオナを寝かせ、俺はぼんやりと馬車の背後に伸びている街道を眺めていた。


「ちょっと無理かも。痛くて寝れそうにない」

「……ごめん」

「謝らないでよ。ティアが悪いわけじゃないんだから」


 『神罰の(プルガトリオ・)雷霆(ケラウノス)』を乱発した俺の身体のダメージは想像以上だった。

 フェルヴァルムに皮膚を何ヶ所も削がれ、『罪灼く焔(インフェルノ)』が焦がした火傷の状態も深刻だ。

 かろうじて痛みにのたうち回ることが無いのは、ひとえにティアのヒーリングのおかげだった。


「とりあえずリヒテンハルで医者に診せよ」

「ごめんね」

「何で謝るの。フガクが悪いわけじゃないんだから」


 と、ティアが皮肉交じりに俺が言ったことをそっくり返してくれた。

 この軽口が、今の俺には気も紛れて助かる。

 ガラガラと未明の街道に響く車輪の音が、やけに耳を突き刺してきた。


「もうすぐ着くから、頑張って」


 沈黙の間を埋めるようにか、あるいは眠れないと言った俺のためか、ティアは前を向いたままポツリと言った。


「うん、大丈夫」


 俺は応える。

 何日か前、フレジェトンタに向かうためにここを通ったときは、馬車内には姦しい声が響いていた。

 

 レオナがミユキをからかい、俺がなだめ、ティアが皮肉交じりに突っ込む。

 そんな見慣れた光景も、今はもう無い。

 何だかんだと楽しんでいたこの旅も、動けるのは俺とティアだけだ。

  

 レオナは倒れ、ミユキはいなくなった。

 その喪失を、今になってようやく噛み締める。


「ティア……」

「ん?」


 だが俺には、絶望に足を取られて倒れている暇などない。

 ミユキは俺に「助けて」と言った。

 フェルヴァルムは、「決着を着けよう」と言った。


 かつて魔王が死に、今も勇者が封印されている『シェオル』で。

 もし本当に、メルの言う"変えられない運命"なんてものがあるのなら、確かに魔王と勇者がシェオルに集うのは運命じみたものを感じる。


「……ミユキさん、大丈夫かな」


 自らを殺そうとしている相手と、封印されるための旅に赴く。

 それは一体どんな気持ちなのだろうか。

 俺には想像もつかないが、心配であることは間違いない。


「……大丈夫よ、きっと。約束したんでしょ」


 ティアは気休めは言わない。

 だからこそ、彼女の言葉に俺は少しだけ救われた。

 

「うん、きっと……」


 俺はティアがいてくれることに、心強さを感じていた。

 こんな時でも、俺に道を示してくれる。

 

「ねえフガク……」


 今度はティアが声をかけてくる。

 賑やかなレオナが眠っているから、俺達の会話にはポツポツと沈黙があった。

 だが決して嫌な沈黙ではない。

 ティアと二人でいることは、水鏡を覗き込むような静けさを感じられて心地よかった。


「何?」

「……フガクは、ミユキさんのどこが好きなの?」


 ティアは手綱を握り、前を向いたまま言う。

 彼女にしては珍しい話題だと思った。


「レオナみたいなこと言うね」

「なんとなく。一昨日レオナとミユキさんがそんな話ししてたから」


 そういえば、レオナが夜中ミユキと二人で恋バナに花を咲かせていたことを思い出す。


「んー……」


 本人と二人きりの時ならまだしも、これを真剣に答えるのはかなり恥ずかしいと思った。


「……可愛いところ……とか」


 ティアなら茶化したりはしないだろうと思って答えたが、言ってて顔が熱くなってくる。


「なんかフツーね」

「いいでしょ別に」


 実際可愛いんだから。

 高身長を気にしてるところも、自分の色気に無自覚なところも、意外と自分の意見ははっきり持ってるところも。


 性格は控えめなのに俺たちを守るために最前線で身体を張るところ、言い方が優しいところ、案外ノリが良くて何でも一緒に楽しんでくれるところ。


 ……出会った時から、全部が愛おしいと思えた。

 俺は鼻の奥が熱くなるのを感じて、ティアに気取られないよう明後日の方向を見上げる。


「……ちゃんと伝えないとね。ミユキさん、気にしてたみたいだから」


 「フガクくんは私のどこが好きなんでしょう」とレオナに漏らしていた。

 案外、伝わってないもんだなと思ったのだ。

 俺の心の中はこんなにも、彼女のことでいっぱいだと言うのに。


 だからこそ、今度は伝えに行こう。

 彼女を救いたいからじゃない、彼女とこれからの人生を、共に生きるために。


「うん、果たさなきゃならない約束も、いっぱいあるんだ」


 ゴルドールの帝都で夜景を見る。

 ウィルブロードでデートをする。

 彼女の育った修道院に行く。


 ……彼女を、幸せにする。


 ミユキを迎えに行くための、ここからが旅の始まりだ。


「さあ、ウィルブロードとの国境が見えてきたよ」


 ティアの言葉に、俺も御者台に身を乗り出してリヒテンハルの街を遠くに眺める。

 東の空から、白い朝焼けが草原と俺達を照らしていた。

 朝焼けの中、ティアの横顔を見る。

 その瞳の奥に、まだ終わらぬ戦いの光が宿っていた。



 俺たちの、最後の旅路が始まる。



―魔女と公爵令嬢編 了―


これにて第六章は終了となります。

第七章は明後日から開始します。

お読みいただき、ありがとうございました。


モチベーションにもつながりますので、もしよろしければぜひ評価や感想などいただけると幸いです。

評価は下の「★★★★★」から行えますので、よろしくお願いたします。


挿絵(By みてみん)

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