91.しっぽ取りの決着
最後は早足になります。
(禍津 明視点)
ふぅ……
通りすがりに光華の窮地を見て、考え無しに突っ込んだは良いものの……こっからどうするべきだ?
否、今はまだハッタリをかましておこう。
「さて、寂子先輩だっけか?……俺の妹兼恋人にアレコレ言ってくれたみてぇじゃねぇか」
「うん、確かに言ったな~……でもウチ、別に嘘は殆んどついとらんで?」
「……そうなのか?」
うっすら、この2人の会話は聞こえていた。
……とはいっても、エレジーさん云々からだが。
「せやせや……ところで明はん、恋人のエレジーはんがホンマに自分を愛しとると思ってるん?」
「……何が言いてぇんだ?」
「いやな?……もし2人が愛し合ってラブラブなんやったら、どうして明はんが交渉材料なんかにされとるんやろな~と思ったんよ……それに明はん、自分の選択が光華はんを傷付けるって分からんかった訳やないやろうに、どうして……」
「……………だ、黙ってくれ……」
俺は、何も反論出来なかった。
エレジーさんの無茶振りに乗った末に、"獄落姉妹"と性的な関係を持ってしまった。
しかも、性的に襲われる形で……
……それを聞いた光華が、何を思ってどう行動するかも正確に予測出来ず……
「今日だけ見ても分かるで?……光華はんって、明はんが望む未来を妨害する真似はせんのやろ?」
「そ、それは……いえ、私だってお兄様の行動に異議がある時はしっかり言って……」
「せやけど、最後には折れてまうんちゃう?」
「うっ……そ、そうですね……」
そうだな。
……光華は俺に厳しい事もあるが、それでも最終的には折れてくれる。
まあ、殆んど俺に病的な愛を向けてばっ……
………………………ん?
そういえば最近、あんまり病的な愛の視線を感じねぇな?
こりゃ何か光華の中で思う事があったか?
……って、ちょっと待て。
「おいおい、俺から初歩的な質問良いか?」
「何や?」
「……どうして、俺達が寂子先輩からそんな事を言われなきゃならねぇんだ?……いや勿論、言ってる事はもっともなんだが……少なくとも今じゃねぇよな?」
「あ~、気付いてしもた?」
……チッ、最悪だ。
何が最悪って、言われてる事自体は正論?なせいで思考がドツボへ嵌まって行くからだ。
実際、光華もそれでしてやられたらしい。
……話題の原因は俺っぽいので後で謝らねぇとな。
「ほんと、嫌な手を使って来やがる……これを無視出来るのは影華ぐらいだろうな」
「……逆に影華はんには効かへんのやな……」
「そりゃそうだろ。……影華なら、こんな会話しながら銃の引き金を引いてるのが容易に想像可能だ」
「さいか~……」
まあ、だから何だ。
……お前の口車には、もう乗ってやらねぇよ!
「つうか、こうして時間稼ぎしてる辺りそっちも余裕ねぇんだろ?……じゃなきゃ、わざわざ時間稼ぎなんてセコい真似しねぇもんなぁ?」
「せ、せやよ……ウチの異能は強力な分、燃費が悪い上に射程距離も短いんよ……」
「なるほどな……それで、無駄話をして体力の回復を狙ったと……」
「……ウチとしては、時間稼ぎではあっても無駄話のつもりなんて一切なかったんやけどな?」
まあ、その辺りはどっちだって良い。
ただ1つ確実なのは、今がチャンスって事だけだ!
「光華、魔力とやらは回復したか!」
「ええ、お兄様♥️!……【魔術百科】、【愛の楽園】です♥️!」
ーポンポンポンッ!
「んなっ!?」
生憎、力の回復に撤してたのはそっちだけじゃねぇんだよ。
……なんて、どうせこれもお見通しなんだろ?
リアクションがオーバー過ぎる。
「光華、使い魔だが……寂子先輩の反応に惑わされず、俺の補助に回してくれ!」
「お兄様の仰せの通りに♥️!」
「「「「「「「うおぉぉぉぉぉ!」」」」」」」
そうして俺は、相も変わらず【禍神纏装】の状態で寂子先輩めがけて突進した。
……にしても、これが光華の使い魔か……
妖精に天使、悪魔みてぇな外見の小さな俺がわんさか居て気持ち悪いな……
けどまあ、せっかくなんで肉盾にさせて貰うぞ!
……悪く思うなよ?
「ふん、馬鹿の1つ覚えかいな!」
ーザザザァァァァァ!
寂子先輩が、流砂や砂嵐を繰り出す。
見た感じ、しっぽがこれ等の砂に触れたら持って行かれるのは確実だろう。
……だから、分かるよな?
「使い魔のお兄様達、本物のお兄様のために散りたくなければ知恵を振り絞ってください♥️!」
「う、【ウォーター】!」
「「「「「【ウォーター】!」」」」」
光華からの脅しを聞き、水の妖精らしき使い魔は流砂や砂嵐へ水をかけ始めた。
となれば……
「あ~もう、また出し直しかいな!」
ーボトッ!ボトボトッ!
当然ながら砂は固まり、やがて地に落ちて行く。
……そんで、この隙を逃す俺じゃねぇ!
「うおぉぉぉぉ!……寂子先輩、覚悟しやがれ!」
俺は濡れて落ちる砂の間を掻い潜り、寂子先輩の目と鼻の先まで迫る。
……が、相手も強者だ。
「ふん!」
ーブンッ!ファサッ!
「っ!」
寂子先輩は手を振り、直接俺へ砂をかけて来たのだ。
そして……
ーガシッ!
「よし、掴んだで!」
俺のしっぽを、寂子先輩の砂が掴む。
……どうやら、俺はここで終わりらしい。
「ああ、これじゃあ俺の負けは確実だな」
「……何や、やけに落ち着いとるな……」
まさか、ここまで上手く行くとは……
よほど寂子先輩は俺を特別視していたらしい。
が、そういう先入観は落とし穴だ。
「寂子先輩、1つだけアドバイスをくれてやる」
「……っ!……あかん、これそのものがわn」
「俺は、この策における本命じゃねぇよ」
ーガシッ!
「なっ!?」
そもそものミスは、俺に注意力を削ぎ過ぎた点だ。
……いくら強くとも、所詮は学生。
俺だってそうだが、甘さが残ってるもんだ。
「お、本物……後は任せろ!」
「ああ……」
「ま、待ちよ……」
寂子先輩のしっぽを、悪魔デザインの使い魔が掴んでいる。
……俺や他の使い魔を囮にし、どうにか目立たねぇ様に近づいた訳だ。
ぶっちゃけ俺も賭けのつもりだったが、砂を濡らして地に落としたお陰か感知されずに接近出来た様だ。
……んで、この時点で勝敗は決まっていた。
ーシュルルル!
「……同時に幕引き、か……」
「ふん、道連れや!」
結果、俺と寂子先輩のしっぽがほぼ同時に引かれ、道連れ宣言が最後に聞こえた。
そして……
ーシュン!
「……あ~あ、戻されちまったな……」
直後に俺は退場となり、2年生の待機エリアへと戻されていた。
……さ~て、こっからどうなるか……
ま、予想するまでもねぇか。
んで案の上と言うべきか、そこからの展開は想定以上に早かった。
『は~い3年生の皆~♥️、しっぽ頂戴♥️!』
『『『『『はぁぁぁぁぁ~い♥️!』』』』』
……アヤノによる洗脳と扇動で、残っていた数少ない3年生は呆気なく全滅。
その後に繰り広げられた2年生と1年生の対決はどうなったかと言うと……
『う、動けないのです……』
ーガシッ!シュルルル……
影華は地に伏せた状態から一切動けずにしっぽを取られて脱落し……
『このしっぽで、お兄様に勝利を』
ーガシッ!シュルルル……
光華は2年生の女子へ自らしっぽを捧げて脱落……
『秀光……容赦はしないザマスよ!』
『言われなくても分かってるさ!』
(数分後)
『……私からしっぽを奪い取るとか、秀光にしてはよくやったと思うザマスよ?』
『あはは……引き分けか~』
カミラエルは秀光と泥試合を始め、挙げ句の果てにお互い同時にしっぽを引き抜いて共倒れ……
『あ、これ駄目っすね……』
『は~い、しっぽを奪い取れ~♥️!』
『『『『『はぁぁぁぁぃ♥️!』』』』』
写美含む他の1年生も例によってアヤノの洗脳と扇動によってしっぽを取られ全滅。
結果、2年生が勝利をもぎ取る事となった……
……って、殆んどアヤノ頼りだったがこんなんで良いのか?
なんて複雑な気持ちを俺は抱きながらも、しっぽ取りは幕引きとなったのだった……
ご読了ありがとうございます。
アヤノ、描写は少ないですがしっぽ取りにおけるMVPです。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




