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90.光華と寂子

光華は影華に比べ、イカれ具合が局所的なので足元を掬われやすいです。

(禍津 光華視点)


あちこちで大きな戦闘音が鳴り響き、かと思えば静かになる。


そんな中で、私は戦う相手である寂子先輩の動きを隅々まで観察していました。


「ほな光華はん、【砂姫】の流砂に呑まれてさっさと退場しよし!」


ーザザザァァァァァ!


「【魔術百科(マジックブック)】、【ジェットウインド】!……生憎、私だって負けられないんですよ!」


ーバビュン!


案の定、寂子先輩は流砂で私を呑み込もうとして来たため、私は飛翔して宙へと逃げます。


しかし、それで逃げ切れる相手ではありません。


「まだまだや!」


ーザザザァァァァァ!


「くっ!」


私が飛翔する場所へ、寂子先輩によって作り出された砂嵐が襲いかかって来たんです。


……当然、私は更に寂子先輩から距離を離します。


ですが、これはあまり良い手ではありません。


「そうやって、また逃げるんか?……せやけど、ウチからしっぽ取れんのやったらこの種目は勝てへんで?」


「わ、分かっています!」


この種目で勝利する学年は、1年生かお兄様の居る2年生でなければなりません。


だというのに、私は……


「そこや!」


ーザザザァァァァァ!


「きゃっ!?……い、今のは危なかったです……」


「ふん……様子見かは知らんけど、ウチ相手に舐めプしとる余裕はない筈やで?」


……先程から繰り出される砂嵐。


いつまでも受け身なままでは、どんどん遠くへ追いやられるだけ……


やはり、後の事は考えずに本気で挑まなければ勝てないんでしょうか……


「ふぅ……【魔術百科(マジックブック)】、【愛の楽園(ラブ・パラダイス)】です♥️!」


ーポンポンポンッ!


私は愛しのお兄様そっくりの使い魔を召喚し、勝負の巻き返しを図りました。


しかし……


「ふん、初見やないしタネが分かれば怖ないわ!」


ーザザザァァァァァ!


「「「「「「「「ぷぎゃっ!?」」」」」」」」


「お兄様達!?」


せっかく召喚した使い魔達は、一瞬で流砂へ呑み込まれてしまいました。


……お兄様の形を象ろうと、所詮は使い魔。


やはりタネがバレてしまえば容易く捻り潰されてしまう程度の存在……


だと、思いましたか?


「これで光華はんの奥の手も封じたし、ウチの勝利は決まったも同然やな~♪」


ああ、そう思うのも無理はありません。


……これが奥の手なのは事実ですからね。


とはいえ……


「お兄様達、分かっているでしょうが最期まで本物(オリジナル)の名誉を汚す事は許しません……死をもって、その汚名をそそいでください!」


「へ?……光華はん?」


このお兄様達は、所詮使い魔であって本物(オリジナル)には遠く及ばない存在……


それがお兄様の名誉を汚すなんて事、絶対にあってはいけないんですよ!


「さあ、聞こえてますよね?」


「は、はい……光華様、バンザ~イ!」


ーキラッ……ドッカァァァァァァン!


「「「「「「バンザァァァァイ!」」」」」」


ードカドカドッカァァァァァァン!


「ふぁっ!?」


激しく吹き荒れる砂嵐の中で、次々と自爆していく使い魔のお兄様達。


……勿論、私は爆発で吹き飛ぶ砂嵐が届かない範囲まで避難済みです。


「さて、これでひとまず砂嵐は操作困難といったところでしょう……その証拠に、大量の砂が地面へ落ちてますよ?」


「い、言われんでも分かっとるよ……」


ーフッ……


「あ、消せるんですね……」


使い魔の自爆に巻き込まれた砂嵐の砂は地面に落ち、そのまま消滅していきました。


……もっとも、消えたそばから新しい砂が補充されるので近寄れないのは変わりませんが……


と、そんな事を考えていると。


「……ホンマ、光華はんも凄いわ」


「え?……えっと、いきなり何ですか?」


突然、寂子先輩が脈絡なく私を褒めて来たんです。


「いや、ただの時間稼ぎや。……それと、褒めたんは本心からの言葉やからな?」


「時間稼ぎって……こうも正直に言う辺り、まだ裏がありそうですね……」


「まあ、それはエエねん。……それより、ウチがこの話で1番注目しとるんは血統の重要性や」


「はい?……いったい何処から血統なんて話題が出て来るんですか……」


さて、そうこう話している内に砂嵐や流砂の隙を探さなければ……


何せ肝心の砂をどうにかしても、それを補う分がすぐに補充されるだけですからね。


……で、血統が何ですって?


「いやいや、強さにおいて血統は大事やで~?……そら例外的に強者が生まれる事はあるけど、大抵は強者の一族に強者は生まれるもんや」


「……五行院がそうと言いたいんですか?」


「いんや、禍津家も(・・・・)や♪」


「っ!……私達の家も、ですか……」


……私だって、薄々は察してました。


お母様が、明らかに一般人でない事ぐらいは。


……ですが、わざわざこう言う辺り、この認識すらまだ現実を見れていないのかもしれません。


なんて考えていたら……


「禍津家の当人等に自覚は無さそうやけど、あんた等の母親って相当凄いんやで?」


「へぇ……秀光先輩が居る金霊院家より、ですか?」


「当然や!……ってか、あの化猫と縁者になれるって点だけ考慮すれば、秀光はんより明はんの方がウチ等の婿候補になるっちゅうぐらいにはヤバい格を持っとる御方なんやからな!?」


……えぇ……


お母様、元華族だった一族の方がこうも評価するって本当に何者なんですか?


……って、少し待ってください。


今の言葉を分かりやすくすると、お兄様が秀光先輩より優先されるって事ではありませんか?


つまり、今までより妻候補を名乗り出る方々がわんさか現れ始めるって事ですか!?


「……お兄様が欲しいのであれば、私を倒してからにしてください!」


「ん?……あれ、さっきまでより殺気が……」


寂子先輩……


私、もう後先考えずにやりますね♥️?


「【魔術百科(マジックブック)】、【メテオ】!」


ーヒュンヒュンヒュン!


「は?……ちょ、ちょい待ち!」


ーザザザァァァァァ!……バシュバシュバシュ!


私が繰り出したのは、小型隕石を3つも降らせる魔法。


……結構魔力消費が激しい魔法なので使いたくなかったんですが、もう形振り構っていられません。


「いいえ、待ちません!」


ードンドンドォォォォォン!


「ひぶっ!?」


ードン!ドン!ザザザ……


ああ、砂による目眩ましのせいで直撃は免れましたか……


とはいえ、直撃せずとも衝撃波による大ダメージが確実なのでどっちでも良いですけど。


「さあ、まだやれるんですよね?……愛しのお兄様を下した秀光先輩が警戒する相手、この程度でくたばる筈がありません!」


「分かっとるやん!」


ーザザザァァァァァ!


「【魔術百科(マジックブック)】、【ハリケーン】!」


今だ止まない砂嵐の奥から聞こえた、寂子先輩の声。


その直後、またもや流砂と砂嵐が迫って来ました。


……寂攻先輩の攻撃自体は一芸特化の極みですが、それ故に当たればダメージは大きいでしょう。


なので、ここは回避に撤しつつ私も竜巻を発生させて様子を見る事にします


……とはいっても、先程の隕石によるダメージも相当な筈。


ここはもう少し猛攻を……


「ウチを舐めるんもエエ加減にせぇ!」


ーザザザァァァァァ!


「……舐めてなんかいません!」


「ふん、そんな戯言を信じるとでも?……それに光華はん、ウチにとやかく言うんは勝手やけど……例えばエレジーはんとか明はんの恋人に相応しいと思っとるんか?」


「っ!……な、何が言いたいんですか?」


……ほんと、私は駄目ですね。


こんな戯言、聞き逃せば良かったものを……


「ちょい前に真梨亜はんから聞いたんやけど、どうもエレジーはんは明はんを取引における交渉材料にしとるらしいで?……そんなんを婚約者の末席に置いといてエエん?」


「……そ、それは……」


「怒らへんの?」


「お兄様が平気そうにしてるんですから、私がとやかく言えません……」


多分、昼休みにお兄様が言っていた件でしょう。


……私だって思う事はありますが、私にとってお兄様が絶対である以上は何も……


「ほんなら、ウチの件も光華はんからとやかく言われる筋合いないで?」


「っ……そ、それは……」


……私が何か言う資格なんて、ない……


ええ、そうでしょうとも……


……それは、お兄様の行動を阻害するだけで……


と、思考のドツボに嵌まったのが駄目でした。


「隙ありや!」


ーザザザァァァァァ!


「っ!?」


私が呆然とした隙を突き、寂子先輩が砂嵐を繰り出して来ました。


そして、逃げ遅れた私は呑まれ……


「光華、しっかりしろ!」


ーダンッ!バサッ!ガシッ!


「ふぇっ!?」


……る事なく、誰かに腕を引っ張られていました。


いえ、誰かなんて確かめるまでもありませんでした。


「……ふ~ん、明はんか」


「ハァ……ハァ……ったく、見る限りギリギリセーフってところか?」


「お、お兄様……」


私を助けてくれたのは、何を隠そうお兄様。


どうして、ここに?


……そんな考えが私の思考の大半を占める中、このしっぽ取りは真の意味でラストスパートを迎え始めました……

ご読了ありがとうございます。


なお、明は数々の追手を何とか撒いて来ました。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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