86.影華と本江
影華は割と万能です。
(禍津 影華視点)
ーギィィィィィン!
「チィッ!……さっさと離れるのです!」
「それは出来ない相談でござるな~!」
常に私の目と鼻の先という距離に密着し、正確に隙となり得る場所へ苦無を振るう本江先輩。
……これ、もしかしなくてもピンチなのです?
「くっ……この距離でパンジャン出したら巻き添え食らうのです!」
「そうでござろ?……否、パンジャンに限らず手榴弾すら命取りでござるよ!」
ーギィィィィィン!
「うぐぅ……」
そうなのです……
ここまで密着されたら、いくら私でも爆発するタイプの武器や兵器は共倒れを恐れて使えない……
かといって、自分を巻き込まずに済む拳銃も撃つ暇を与えて貰えないのが現状……
……素の身体能力でコレとか、寧ろ異能を使わない方が強いまであるのです。
「某が属する木葉院家は、五行院と呼ばれる旧華族の中で忍の様な役割を果たしていた一族……故に幼い頃より激しい特訓を経て、常人の範疇から逸脱した身体能力を得ているんでござる!」
ーギィィィィィン!
「それで、異能抜きでもこの強さなのですね?」
「そうでござる!……加えて某の異能は敵味方入り混じる乱戦向きであって、こうした一騎討ちでは異能を使わない素の身体能力のみの方が強いまであるでござる!」
ーギィィィィィン!……バキッ!
「あっ!」
さっきから苦無を受け止めるのに使っていた拳銃が壊れたのです!
……まあ、そもそも拳銃で刃物の類いを受けるって事自体、割と無理があったのですが……
とはいえ、考えてる暇もないのです!
「隙あ」
「【兵器錬成】、【自動式拳銃】2丁なのです!」
ーカチャッ!……ギィィィィィン!
本江先輩の攻撃より早く、拳銃を錬成して盾にする。
……ギリギリだったのですが、何とかなったのです!
「……いや、どうして某の動きについて来れるんでござるか!?」
ーシュッ!シュシュシュッ!
「そんなの知らな……っと、ここなのです!」
ーギィィィィィン!
「……そっちこそ、どんな環境で生活したら某の動きを目で追って対応出来るんでござるか……」
し、心外なのです……
私はこれでも一般人……かは母さんの件で怪しくなってはいるのですが、それでも育ちは一般人とそんなに変わらないのです!
「別に私は特別な育ち方はしてないのです!」
ーギンギンギンギンギンギンギンギン!
「いやいや、一般人は某の動きに慣れて対応するなんて無理でござるからな!?……というか、何気に拳銃を傷付けない様に受け流す方向へ守り方を変えてるでござるし!」
ーギンギンギンギンギンギンギンギン!
「音だけ聞くと安っぽいのですが、拳銃で苦無を受け流すとこんな音が鳴るのですね~♪」
ーギンギンギンギンギンギンギンギン!
「……そもそも、ずっと限界迎えてるのは拳銃の方って事自体がおかしいんでござる……普通、人間の方が限界を迎える筈でござろうに……」
ーギンギンギンギンギンギンギンギン!
「そんな事を言われても、出来るものは出来るとしか言い様がないのです!」
お互いに素早く苦無と拳銃をぶつけ合うも、いまいち決定打に欠ける戦い……
流石の本江先輩も、これでは駄目だと悟ったらしく……
「チッ!……ぷっ!」
ーヒュン!
「うぇっ!?」
ーカシュッ!
……本江先輩はいつから仕込んでたかも分からない仕込み針を口から発射し、その針は私の頬を掠めて痛みとなったのです。
「……外したでござる」
「ふん、今のは奥の手だったのですか?」
「まさか……まだまだあるでござるよ!」
ーシュッ!ダッ!
「お、手裏剣まで隠し持ってたのですか!」
そこからはもう、本江先輩が飛ばして来る忍具を避け続ける時間が続いたのです。
四方手裏剣、六方手裏剣、八方手裏剣、それから棒手裏剣なんてのもあったのですね……
けれど、その全てを私は避けて避けて避けまくったのです!
「ハァ……ハァ……どうして全部避けられるんでござるか!」
「そう言われても、本江先輩って視線と動きが結構バレバレなのですよ!」
「そ、そんな訳ないでござる!」
「いいや、そんな訳あるのです!……視線は一瞬だけ狙いの場所を向くし、投げる時は動きの周期も少し変わるのです!」
……うん、実のところ自分で言ってても訳が分からなくなってるのです。
でも、そうとしか言い様がないから困るのです!
と、ここで本江先輩は更なる手札を切って来て……
「ならばこれでござる!」
ーブンッ!パラパラパラ……
「……撒菱、とはまた面倒なのです……」
「踏んだら痛いでござるよ~……って、これもしかしなくても某の足にも刺さるでござるな?」
「……馬鹿なのですか?」
本江先輩の新たな手札とは、知ってる人は知ってる罠忍具こと撒菱……
ただ幸いな事に、撒いた本人も踏むのを恐れてさっきまでの距離感を維持出来なくなってるのです。
……つまり、仕掛けるならここなのです!
「ええい、摺り足なら踏まずに済むでござ……」
「チャンス到来、【エレクトリカルパンジャンカーニバル】なのです!」
ードドドドドドドドド!
「ふぁっ!?……こ、この距離はそっちも巻き込まれるでござるよ!?」
「元よりそのつもりなのです!……ってな訳で写美さん、後の事は頼んだのです!」
私が異能を捨てた本江先輩に勝つためには、これしかない……
そう判断した私は、大量の改造パンジャンをこの場に錬成して……
ードッカァァァァァァァァァァァァァァァン!
「ぐほっ!?」
「ぐふっ!」
ードンッ!ドンッ!ザザザ……
……結果、私と本江先輩は思いっきりパンジャン軍団の爆発に巻き込まれ、それぞれ別方向へと吹っ飛ばされたのでした。
「ううっ……ゲホッ!ゲホッ!……じ、事前説明通り、怪我は負わないみたいなのです……」
あ~、死ぬかと思ったのです……
まあ、実際体は動いてないのですが……
あ、念のため仕込みも忘れず……
「み、認めないでござる……こんな負け方……」
……ん?
ああ、本江先輩も地に伏せてるのです。
……こりゃ、完全に引き分けの空気なのですね。
「分かってた筈なのです……いくら接近戦へ持ち込もうと、私が自爆を決行したら終わりだって……」
「……障害物競走の時もそうだったでござるが、お前にプライドってもんはないんでござるか?」
「ないのです!……勝つためなら躊躇なく己すら犠牲にする、それが私のやり方なのです!」
ま、本音を言えばそもそも体育祭の勝敗とかどうでも良いのですけどね。
……それでも、やるからには手を抜くつもりなんて毛頭ないのが私なのですが。
「ははは、もう完敗でござるよ……とはいえ、思想については分かり合えないままでござるがな……」
「思想?……あれについては私にも譲れないものがあるのです!」
「……イケメンこそが至高でござるよ!」
「兵器と人間の融合が至高なのです!」
「「ぐぬぬぬぬぬ………」」
両者共に地に伏せた状態で、絶対に譲れない言い合いが始まる……
そんな空気感だったのですが……
……やれやれ、それで私を騙し通せるとでも?
「……で、いつになったらしっぽ回収役の子が来るんでござるか?」
「まだ来ないのです……それを言うなら本江先輩こそ、いつまで負けたフリしてるのですか?」
「あはは……それはそっちも同じでござるよね?」
「何の事やらなのです♪」
「「………………ハァ」」
……お互い、様子見は終わりなのです。
「よっこいせ……んじゃ、ラストスパートと洒落込むでござるよ!」
「望むところなのです!」
私と本江先輩はどうにか立ち上がり、それぞれの得物を手に相手を見つめる……
そうして、私と本江先輩の勝負は最終局面へと突入したのでした……
ご読了ありがとうございます。
これ、実のところ本江の動きを追える影華が凄いだけです。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




