82.強者同士の塩試合
文才が欲しい。
(禍津 明視点)
昼休憩の終了が間近となった頃、俺が2年生の待機エリアへと戻ると……
「……ああ、明君か……」
「よぉ秀光、浮かねぇ顔してんな……」
……そこでは、秀光が浮かねぇ顔して悩んでいた。
「あ、明~♥️」
「アヤノ、秀光は戻って来てからこんな感じか?」
「あ~うん、そうだよ?……それも、今の明みたいに思い詰めた顔してたからね?」
「っ!……そうか、俺もこんな顔してんだな……」
アヤノへ秀光について聞いたら、俺も似た様な顔だって言われちまった。
……そうか、俺もか……
客観視すると嫌なもんだな。
「それより明、昼休憩終わってすぐの種目予定が変わったの知ってる?」
「え?……生憎、そりゃ初耳だ」
「いやね、何でも観客席に居た在野の強者2人がエキシビションマッチをしてくれるとか何とか……」
「は、はぁ……」
観客席に居た在野の強者2人だと?
学校関係者じゃなくてか?
……猛烈に嫌な予感がして来た。
と、その直後だった。
ーキ~ンコ~ンカ~ンコ~ン……
『さて、これより昼の部を始めますメェ~』
「お、始まったな」
昼の部開始を知らせるチャイムの音が鳴り響き、教頭先生もそれを宣言する。
更に教頭先生の言葉は続き……
『それと昼の部の予定を少し変更して、観客席に居た在野の強者2人によるエキシビションマッチを開催させていただきますメェ~』
……エキシビションマッチの開催もまた、正式に宣言されたのだった。
「あ、本当にやるんだな……」
「え、ボクの言葉を疑ってたの!?」
「いや、そうじゃねぇけど……」
「ま、ボクだって実のところ半信半疑だったから明がその反応でも気にしてないんだけどね?」
「……そ、そうだったのか……」
あ、危ない危ない……
今のやり取り、俺がアヤノを怒らせててもおかしくなかったな……
今後はもっと言動に注意しねぇと……
『では、スタジアム中央をご覧くださいメェ~』
ーパッ!パッ!パッ!
「ふ~ん、何々……って、おいおい……」
「あ~、確かに片方は在野の強者だけど……明、もう片方もそうなの?」
「俺は知らん!……にしても、まさかお袋と胡蘭さんがエキシビションマッチをするのか……」
照明で照らされたスタジアムの中央に立っていたのは、お袋と胡蘭さんだった。
もっとも、お袋は猫の半面、胡蘭さんは変面でよく見るタイプの派手な面を着けて顔を隠してたけどな。
『さあ、エキシビションマッチをしてくれるのはこのお二方ですメェ~!……一応紹介すると、猫の半面を着けている方が匿名M様、派手な面を着けている方が匿名F様ですメェ~♪』
「と、匿名MにFって、そのまんまだな……」
ってか、顔以外はそのまんまだから割かしバレバレだぞ?
それで良いのか、2人とも……
「え~、ご紹介に預かりました、匿名Mだニャ!」
「匿名Fアル!」
「それはそうとミャ~、今回のエキシビションマッチではさっき愛しの我が子と喧嘩して生じたモヤモヤを全力でぶつけたいと思ってるので覚悟して欲しいニャ!」
「八つ当たりアルな……ま、別に良いアルが……」
お袋……
俺が原因ではあるが、何とまあ情けねぇ……
……って、俺も人の事は言えねぇか。
『それでは両者準備……は万端そうなので、エキシビションマッチを開始しますメェ~!』
「異議ニャしニャ!」
「こっちもアル!」
『では、よ~い……どんっ!』
そうして、教頭先生によりエキシビションマッチの開始が宣言された。
直後……
ーダンッ!
……両者が、同時に前へと飛び出した。
「【猫騙し】ニャ!」
ーパンッ!
「その手は知ってるアル!」
両者が目と鼻の先まで接近したタイミングで、お袋は胡蘭さん相手に猫騙しをした。
……が、胡蘭さんはお袋の猫騙し戦法を知っていたらしく、さして怯みもしていなかった。
そして……
「これだから昔ニャ染みは……」
「煩いアル!……【発勁】でも食らえアル!」
ーシュッ!
「そんニャの食らわニャいニャ!」
ータンッ!スカッ……
「チッ!……本当にすばしっこいアルな!」
胡蘭さんが見た目に違わぬ中華拳法を振るう中、お袋は素早くも柔軟かつ軽快な動きで胡蘭さんの攻撃を避け続けていた。
「【肘打ち】!【面蹴り】!【震脚】!」
ーシュッ!シュッ!ドシィィィィィン!
「ニャッ!ニャッ!ニャニャニャッ♪」
「むぅ……本当に攻撃が当たらんアル!」
「ニャニャニャ♪……匿名Fの異能は僵尸の作成でしかニャい……つまり、物理攻撃さえ当たらニャければ問題はニャいんだニャ!」
おぉ……
お袋は胡蘭さんを見事なまでに手玉に取ってやがる。
本当に凄いとしか言い様がねぇ。
……のだが、攻撃を繰り返し続ける胡蘭さんも馬鹿じゃなかったらしく……
「すぅ……愛しの子供から不信感抱かれてるクセに偉そうに言うなアル!」
「ぐはニャっ!」
胡蘭さんはまさかの精神攻撃を展開し、お袋が俺とギスってる点を突いて来たのである。
当然、俺達を溺愛してやがるお袋は大きな精神的ダメージを受ける。
……で、胡蘭さんはこの隙を逃さなかった。
「隙ありアル!」
ーガシッ!
「ニャニャッ!?」
胡蘭さんはお袋の髪を掴み、その動きに制限をかけたのだ。
「胡……いや、匿名Fさんもやるな……」
「そういや、ボクの知識が間違ってなければ僵尸って馬鹿力らしいよ?」
「それは俺も知ってるが……それにしたってだ」
「ただまあ、精神攻撃ありきだけどね……あれ、もしかしてギスった子供って明だったりする?」
「……ああ」
そこを突かれると痛い。
お袋の劣勢は、俺のせいとしか言えねぇもんな。
ってか、お袋も僵尸である胡蘭さんの拘束を振り払う事は出来ねぇらしく未だにじたばたしてる。
……頼む、どうにか拘束から抜けてくれ!
じゃなきゃ俺が禍津家の戦犯になっちまうし、何よりお袋の負け姿とか見たくねぇ!
「すぅ~……今後とも、お前の末娘と仲良くさせて貰うアルよ……【発勁】!【発勁】!【発勁】!」
ーダンッ!ダンッ!ダンッ!
「ニャはっ!ニャはっ!ニャはっ!」
お袋に打ち込まれる、3発の拳……
しかし、お袋も負けてねぇ!
「ニャ……死体のお前には、あらゆる痛みが効かニャいも同然ニャ……」
「そうアルな……実際、さっきのじたばたで何回か引っ掻かれてるアルけど、痛くないアル」
「でも、筋肉を切られたら動かせニャい筈ニャ!」
ーブチッ!ブチブチブチッ!
「……………は?」
どうも、先程じたばたした際に胡蘭さんの腕の筋肉を傷付けていたらしく、そんな状態で拘束の続行や攻撃を繰り出したとなれば筋肉が切れるのも当然の結果だった。
「さてと……んじゃ、エキシビションマッチらしく派手にやり合うニャ!」
「ハァ……ハァ……お前なんて、足技だけで充分アル!」
ーダンッ!ダンダンダンダンダンダンダンッ!
そこからはもう、両者共に本気を出していた。
具体的に言うと、まるで某コマ型玩具同士の激突を見ているかの如く……
お袋の爪攻撃と、胡蘭さんの足技が何度も何度も激しく激突しては距離を離し、また激突するを繰り返していた。
そんで、その状況がしばらく続いた頃……
「ニャ……ニャ……次で決めるニャ!」
「ハァ……ハァ……こっちの台詞アル!」
……お互い余裕がなくなったらしく、次で決めると豪語したのだ。
「ニャニャ……【子子子子子子子子子子子子】ニャ!」
ーボォォォォォォォ!
お袋は難解な技名を告げると、青い炎で包まれた大猫へと変化した。
「すぅ……【貼山靠】アル!」
ーダンッ!
対する胡蘭さんも、中華拳法ではお馴染みの必殺技で対抗しようとする。
「ニャァァァァァァァァァァ!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉアル!」
ードォォォォォォォォォォォォォン!
青い炎の大猫と化したお袋と突進する胡蘭さんが激突し、爆煙が辺りを覆う。
そして、それが晴れた時……
「ニャ……ニャ……ま、参ったかニャ!」
「あはは……流石はかつて旗頭となった英雄達の副将を務めた化け猫、強いアルな~……」
……地に伏せていたのは、胡蘭さんの方だった。
『け、決着ですメェ~!』
「す、凄かったな……」
「……ただ何というか、ボクが思うに強者同士の戦い過ぎて塩試合だったかも……」
「それはまあ、そうだな……」
こうして、お袋の勝ちという形でエキシビションマッチは決着した。
……強者同士過ぎて塩試合だったのが惜しまれる結果ではあったがな……
ご読了ありがとうございます。
もっと上手く書きたかった。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




