81.母への追及
う~ん、迷走に迷走を重ねてる……
(禍津 明視点)
で、冥堂と話し終えた俺が3人の所へ戻ると……
「あ、お兄様もお戻りになられましたね♥️」
「兄さんがお手洗い行ってた間に、母さん戻って来たのですよ!」
「ニャニャニャ……家族との団欒で胃痛の種を忘れるとするニャ……」
「だ、大丈夫グルァ?」
……既に、お袋が戻って来ていた。
とはいえ、この状況自体は好都合だ。
「なぁ、お袋……話がある」
「ニャニャ?」
お袋を説得出来さえすれば、俺にとって強大な後ろ盾になってくれる事は確実だ。
……だからこそ、どうにか納得して貰わねぇとな。
「実は……」
そこから、俺は軽く事の経緯を話した。
"獄落姉妹"については勿論、性的に襲われた事や最終的な結論まで、全てを話した。
「……という訳なんだが、賛成してくれねぇか?」
「ほ、本気で言ってるニャ?」
「お兄様、それは流石に私でも受け入れかねます」
案の定、お袋と光華は不服そうな反応を見せる。
……しかし、ここまでは想定内だ。
お袋にとっては可愛い子供、光華にとっては何よりも優先すべき愛しの兄であり恋人なのだから、逆に賛成する方がおかしいというものだ。
……が、この時点で既に1人釣れた。
「……兄さん、本気なのですね?」
「ああ、本気だ」
「なら、私からは何も言わないのです。……それこそ、私に悪影響が及ばない限りは……」
「っ……勿論、悪影響は及ばない様にするつもりだ」
俺含めた他人に興味がねぇ影華だけは、この時点で納得してくれた。
もっとも、自身に悪影響を及ぼさないという条件付きではあったが。
「影華、どうして納得して……いえ、影華の性格を考えれば驚く程の事でもありませんか……」
「でもでも、ミャ~達は断固反対だニャ!」
「私もです、お兄様!」
「……エレジーさんは許可したのにか?」
「そ、それは……私だってお兄様の意思は尊重したいですが、今回ばかりは……うぅ……」
光華としては複雑らしい。
確かに、今回は相手が相手だ。
エレジーさんよりも話が通じねぇ相手って、ハッキリ分かるレベルで説明しちまったしな……
「……明、本気ニャんね?」
「そうだって言ってるだろ」
「……ミャ~は母親としてダメダメだから、明の考えに水を差す様ニャ事はしたくニャいニャ」
「だったら……」
ん?
お袋の方がワンチャンあるのか?
……にしても、ダメダメってのはまさか……
「それでも、ミャ~はこの件で首を縦に振る訳には行かニャいんだニャ!」
「……どうしても、か?」
「どうしてもだニャ!」
「そうか……ふん、これまで散々俺達をほったらかしてたクセに今更母親面かよ」
こうなりゃ作戦変更、精神攻撃だ。
というのも、お袋は仕事ばっかりで俺達を世話してくれたのも幼少期までだった。
少なくとも、俺が前世を思い出すまで引きこもる原因になった事件だって、お袋の立場なら警備を付けておくなり出来た筈だったろうに……
……現実は警備なんて居なくて、俺は難なく家を抜け出せちまった。
「ほ、ほったらかしてニャんか……」
「……なら、俺が襲われたあの事件は?……確かに俺が勝手に家を抜け出したのが襲われた原因ってのは百も承知だが……お袋の立場なら、どうにか出来たんじゃねぇか?」
「お母様、どういう事ですか?」
「意味が分からないのです……」
俺の言葉を聞き、光華と影華はただただ困惑するしかなかった。
……お袋の素性を知らなきゃ、俺の真意なんて意味不明だろうからな……
「ミャ……そもそも、ミャ~は一部の者以外に明達3人の事を明かしてニャかったニャ……だからあの日も、ミャ~は……」
「……いや、俺は別にあの事件を蒸し返してぇ訳じゃねぇんだよ」
「ニャニャ?……どういう事ニャ?」
「分からねぇか?……あの日は俺が勝手に抜け出しちまったから事件になったが、それを抜きにしてもお袋が自分の素性に相応しい警護を俺達に付けてなかったって事実は覆らねぇんだよ」
「ニャッ……」
あの事件は、俺の不用心さが招いた事だった。
……けれど、俺が抜け出して襲われても妹達以外が助けに入った痕跡はなかった筈だ。
要するに、お袋は俺達に警護を付けていなかったとしか思えねぇんだよ。
「どうせ、信頼する奴以外には教えたくなかったとかなんだろうが……自分は色々と危険な仕事をしておきながら、狙われる可能性の高ぇ俺達に警護を付けてなかったなんて母親失格だろ」
「そ、そうかもニャ……ただ、ミャ~は正体を隠してたからニャんとか凌げると……」
「お袋抜きにしても貴重な若い男だぞ?……もう少し警備体制を揃えとくのが普通だ。……何より、お袋の立場を考えればそうするのが……」
「ニャ……」
……お袋は最後にそう言うと、苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべて黙り込んでしまった。
「お兄様、何もそこまで言わなくても……」
「ん?……光華は何とも思わねぇのか?」
「いえ、確かに敬愛すべきお兄様を守る姿勢が全く見られなかったのは残念極まりなく軽蔑もすべき事実ですが、お母様にも何か事情が……」
「光華姉さん、さては兄さん以上に思うところありまくりなのですね?」
あの事件の原因は俺だが、お袋も母親として出来る事を全うしていたとは思えねぇ。
……だから、そこを突く。
「お袋、もし申し訳ねぇって思ってんなら俺の提案を呑んでくれねぇか?」
お袋の素性を考えたら、俺達を一般人として育てるのはリスクも大きかった筈だ。
それこそ、もしかしたら家のセキュリティは万全にしてたのかもしれねぇしな。
もっとも、そんな万全なセキュリティなんてついぞ見る事はなかったが。
「家のセキュリティは信頼出来る会社に任せてたとはいえ、確かにミャ~の立場を考えたら足りニャいと言われても仕方ニャいニャ……」
「……今はそれについて聞きてぇ訳じゃねぇ」
「ニャッ……ちょ、ちょっとだけ1人で考えさせて欲しいニャ!」
ータッタッタ!
「あっ……」
結局、お袋は逃げちまった。
……ったく、どうしたもんか……
「……ところでお兄様、先程の話から推察するにお母様の仕事を知っているんですか?」
「ま、話から察するにヤバめの仕事っぽいのです」
「そんなところだ……けどまあ、想定以上に責め過ぎちまったみてぇだがな」
あの事件で犯人の次に非があるのは、紛れもなく不用心に1人で外へ出た俺だ。
……俺もそれが分かっていたからこそ、お袋からの反論も予想してたんだが……
「お母様は、本気で私達を溺愛しています……きっと、お母様なりの考えがあったのでしょう」
「ただ逃げた辺り、母さん自身も過去の判断は後悔してそうなのです……」
「……かもな……」
俺達が知ってるお袋は一側面でしかねぇとはいえ、良くも悪くも享楽的な人って印象だ。
……あれがお袋の素だったとするのなら、あまり仕事関係を家庭周りに持ち込みたくなかったのかもしれねぇな。
「それはそうとお兄様、私は覚悟を決める事にします」
「……どういう方向にだ?」
「お兄様の願いを叶える方向です」
「………そうか、ありがとな」
何だかんだで光華も俺の意見を呑んでくれた。
ここからアヤノにはまた確認するとして、それ以外で残ってるはやっぱりお袋の説得だけか……
……あ、そろそろ昼休みも終わっちまうし、残りは体育祭が終わってから考えるか……
ご読了ありがとうございます。
明も例の事件の非があるのは自分だと分かっているので、母親から反論が来なかった事に驚いています。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




