75.アイシャと輝く蛇
文が読みづらかったら申し訳ございません。
(アイシャ視点)
あれは、いつの頃でございましたか……
「アイシャ、お茶を淹れてくれ」
「ひっ!……しょ、承知したでございます……」
その日、私はお嬢様にお茶を淹れるよう頼まれていたのでございます……
「ハァ……アイシャは本当に卑屈で臆病だな」
「も、申し訳ないのでございます~!」
「謝るな……その性格、元から熱血なフレイヤと違い理由があるのだろう?」
「ひぃっ!……そ、そうでございます……」
私は、ただの孤児ではなかったのでございます。
そして、その過去の経験こそが私の卑屈で臆病な性格の原因となっていて……
「……少しずつ、慣れていけ」
「は、はい……」
私は、監獄の中で産み落とされた罪人の娘。
物心ついた時には既に監獄の中で、ボロボロの母親に暴力を振られていたのでございます……
それから、素質を見出だされて暗殺メイドとしてスカウトされたのでございますが……結果は散々でございました。
というのも、この卑屈で臆病な性格では暗殺メイドなんて務まらないという理由から、即座にお嬢様が幽閉されている塔へと左遷されてしまったのでございます。
……いやしかし、幼い頃より母親からの暴力と罵詈雑言に晒されて来た私が、何に対しても怯える様になってしまったのはごく当然の流れで……
いえ、この話は辞めましょう。
どうせあの時点で性格を矯正するなど、もはや不可能な事でございましたから。
まあ、それはそれとして。
「アイシャの素性を探るつもりもない……エレジーとは違い、左遷されたのは本当らしいしな」
「へ?……エレジーは違うのでございますか?」
「っ……今の言葉は忘れろ、良いな?」
「ひっ!?……しょ、承知したでございます!」
この時、お嬢様はエレジーが私共と違う理由で来ていると呟いておられました。
……そういえば、私はエレジーの本当の素性を未だに知らないままでございます……
でも私だっていつか、全ての事実をちゃんと知りたいと思っていて……
……なんて振り返りつつ、時は戻って現在。
「シュララララ~ン♪……素早く動く私を捕まえてみろシュラ~ン♪」
ーシュンシュンシュンシュンシュン!
「ひぃっ!……う、動きだけはその……一丁前でございますね……」
敵の……名前は確か、"裏勾陳"でございましたっけ?
金色の大蛇へと変貌したその者は目で追えない程の高速で動き回り、私の目を撹乱しに来たのでございます。
「ひぃ~っ……【氷脚】でございます!」
ーピキピキピキ……
私は脚部に氷の刃を形成し、冷静に敵の出方を見極める事にしたのでございます。
「シュララララ~ン♪」
ーダンッ!
「っ!……そこでございます!」
ーブンッ!ザシュッ!
「シュラっ!?」
私は襲いかかって来た"裏勾陳"の体を氷の刃で切り裂きましたが、どうにも致命傷にはならなかった様子でございますね……
「うぅ、惜しかったでございます……」
「お~お~……よくもまあ、今の攻撃を私へ当てられたシュラ~ンな♪」
「私は卑屈で臆病な弱虫でございますから、敵の動きを把握するための観察眼が発達してるんでございますよ……ただし、前回の侵入時は不殺縛りがあったせいで生徒相手に全力を出せず遅れをとりましたが……今回は好きにして良いとお墨付きを貰ってるので容赦せずに行けるでございます……」
「チッ……やりにくいシュラ~ン♪」
……さて、それはそうと私も聞きたいと思っていた事を聞くでございますか……
「そ、それよりも……あ、貴方は何がしたいんでございますか?」
「ん?……何が言いたいシュラ~ン♪」
おっと、上手く伝わってなさげでございます……
「ひっ……そ、その素早さがあるなら、私なんて無視して突破すれば良いだけの話でございますよね?」
「……ま、そうシュラ~ンな♪……けど、そうしたらそうしたで他のメイドから袋叩きなんシュラ~ンよね?」
「ひひっ……そ、それは知ってたんでございますね……」
そう。
仮に私が倒されても、後詰めのメイドは山程居るのでございます。
……ですが、それで諦めるタマでございますか?
「そもそも、私達は最初から捨て駒……ここの警備の固さを測るための物差しだシュラ~ン♪」
「捨て駒?……5人ともでございますか?」
「正確には4席だシュラ~ンが、その認識で合ってるシュラ~ン♪」
……分からないでございます。
恐らく、この者達の主は"異能の夜明け"の"No.7"。
しかし、彼は用意周到で無謀な賭けに出るタイプではなかった筈でございますが?
「あの者は、式神の事を良くも悪くも自身を守るための道具だと認識していた筈でございます。……なのに、わざわざ無駄に捨てる必要が何処に……」
気になった私は、相手への警戒MAXの状態で質問したのでございます。
すると……
「理由?……まず、私と"裏騰虵"は表面上こそ主へ忠誠を誓ってるけど、内心では結構な量の主への不信感を抱えているシュラ~ン♪」
「そ、そうなんでございますか!?」
「次に、"裏玄武"は内心も含めて忠誠心は相当なレベルで高いんだけど……その能力は"裏玄武"当人だけを守るもので使いどころに困る性能だシュラ~ン♪……最後の"裏太陰"なんて、便利っちゃ便利だけど色んな意味で危なっかしいし……主視点で在庫処理したくなる組み合わせなのは一目瞭然シュラ~ン♪」
ーダンッ!
「そ、そうなんでございますね……」
ーブンッ!ザシュッ!
"裏勾陳"は自分達が主から捨て駒にされる理由を述べ、話し終えると同時に襲いかかって来たのでございます。
もっとも、また同じ様に切り裂かせていただいたのでございますが……
「ゴフッ!……君、結構強いシュラ~ン?」
「ええ……滅茶苦茶怖いでございますが、かつて祖国の将軍と相討ちになった程度には戦えるのでございます……あ、相手を殺して良いならば、という条件付きでございますが……」
「なるほど……その代わり、殺さない程度の手加減は苦手シュラ~ンね?」
「せ、正解でございます……」
卑屈で臆病だからこそ得た強さ。
しかし不殺の手加減は出来ず、加えて何処に居てもオドオドしてしまう不審者仕草……
怪しさ満点過ぎて暗殺メイドになれなかったのも納得でございますよ。
「……ほんと、その割に良い主に恵まれてるシュラ~ンな!」
ーダンッ!シュンシュンシュンシュンシュン!
「そこでございます!」
ーブンッ!ザシュッ!
「うっ!……さてはもう、私の動き完璧に見切られちゃったシュラ~ンね?」
確かに素早くはありますが、何処か直線的。
素早さに特化し過ぎて急カーブなんかが出来なくなったのでございましょう……
とはいっても、だから相手が弱いという話にもなりません。
「ひっ!……滅相もないでございます……貴方がその気なら、私なんて無視されて突破されてただけの存在にございますから……」
この者は、その気になれば私を無視して前へ進めたのでございます。
いくら後詰めのメイドが居るとはいえ、彼女達では捕捉も困難を極めるのは確実。
……だというのに。
「そこで君を相手にすると考えた時点で、私の負けは決まってたんだシュラ~ン……いくら致命傷を避けても、傷が自動回復する訳じゃない……何なら、傷から相応のものは抜けていく……他の生物で例えるなら、失血死は免れないシュラ~ン♪」
「っ!……そうでございましたか」
ああ……この者は私と違い、自らの主を選べなかったばかりにこんな事になって……
……もしかすると、私を最期の相手に選んでくれたのかもしれないでございますね。
けれど、それで諦める私ではございません。
「さあ、最後まで殺り合うシュ……」
「ひっ!……さ、差し出がましいとは承知の上で私の提案を聞いて欲しいのでございます!」
「ん?……何だシュラ~ン♪」
「じ、実は……」
やはり、私は放ってはおけなかったのでございます。
……かつて、お嬢様が私を救ってくださった様に。
そう覚悟を決めた私は、"裏勾陳"へ使い魔契約の提案を投げかけるのでございました……
ご読了ありがとうございます。
"裏勾陳"も、まだ落ちません。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




