73.フレイヤと炎の蛇
メイド達、ほぼ同じ口調だから書き分けが無理……
(フレイヤ視点)
あれは、いつの頃だったでございますかな!
「……フレイヤ、本気でやってこれか?」
「お嬢様!……他の面々ならともかく、馬鹿な私ではこれが限界でございますよ!」
まだ私が人間だった頃、お嬢様とチェスをして負けた時の記憶。
……他のメイド達はお嬢様に花を持たせるため、わざとお嬢様とのチェス勝負で負ける事も多かったらしいのでございますが……
そんな中で私だけは唯一、馬鹿故に素の実力で完敗していたのでございます!
「本当にフレイヤは……」
「勝手に失望しないで欲しいでございますな!」
「失望はしていない……していないが、私の相手を頼むのは今後控えよう」
「はっはっは!ありがたき幸せにございます!」
私は心底馬鹿だったでございます。
仕事をすれば空回り、他のメイドへ話をすればウザがられ、挙げ句の果てに国の情勢も理解せず……
今思えば、エレジーやアイシャはずっと何かを抱えていた様に感じるでございますな!
「……フレイヤはそのままで居てくれよな?」
「ん?……承知したでございます!」
結局、その時にお嬢様から言われたこの言葉の真意を私は未だに把握し切れぬままに!
それでも私は、命令通り変わらずここに立っているのでございました……
それから、時は戻って現在!
「はっはっは!燃えるでございますな~!」
「焼き殺してやるボォォォォォ!」
侵入者!
炎の大蛇!
後は分かるでございますな!
「【火炎操作】でございます!」
ーボォォォォォォ!
「ふん、そうは行かんボォォォォォ!」
ーぐぐぐっ……
「むっ!?」
て、敵の体を構成する炎を操作出来ない!?
どうなってるでございますか!?
「愚かだボォォォォォ!……私の肉体が、貴様程度の異能で操れると思ったかボォォォォォ?」
「なるほど、そうなんでございますな!」
「……いや私から言っておいて何だが、理由や理屈が気にならんのかボォォォォォ?」
「どうやっても操作不能な以上、理由だの理屈だの気にしたって仕方ないでございますからな!」
とはいえ、私の異能が無効化されてるってのとは違う気がするでございますな~!
……よし、物は試しでございます!
「う~む、調子狂うボォォォォォ……ん?」
ーカチッ!
「ほ~れ、この火を貴方の体へ混ぜたらどうなるでございますかな!」
操作不能なら、操作可能にするまででございます!
という訳で、私は懐からライターを取り出して着火したのでございます!
「ボォォォォォ!?」
「ライターの火に【火炎操作】!……そのまま敵の体へ入り込むのでございます!」
ーボォォォォォ!
これがエレジーなら、もっと楽な策を練ったのでございましょう!
これがアイシャなら、もっと慎重に動いたのでございましょう!
ですが、私は自分で言うのもアレな程には馬鹿な自覚があるのでございます!
……だから、がむしゃらにやるしかないのでございますよ!
「……で、気は晴れたかボォォォォォ?」
「くっ!……やはりライターの火程度を混ぜただけでは操作不能なままでございますか!」
「そういう事だボォォォォォ!……ふん!」
ーブンッ!ボォォォォォォォォォォォ!
「チッ!火事は起こさせないのでございます!」
えっと、こいつの名前は確か……
裏何とかって言ってた気がする様なしない様な……
え~い、全く思い出せないので適当に火蛇で良いでございますよな!
……とにかく火蛇は尾を一振りして火の粉を散らし、火事を起こそうとしたでございますが……
そうは問屋が何とやらでございます!
「何するつもりだボォォォォォ?」
「こうするんでございます!……【火炎操作】でございます!」
私は異能で火の粉を操作し、そのまま鎮火させたでございます!
……しかし、それは私にとって無視出来ない大きな隙にもなったのでございます!
「ふん、隙ありだボォォォォォ!」
ーダンッ!……バシュッ!
「ふぁっ!?」
気付けば私の上半身は火蛇に呑み込まれた挙げ句、下半身と泣き別れになっていたのでございます!
……って、あ~もう!
この口調での思考は疲れるでございますな!
「ふん、一生私の腹の中で再生と焼却を繰り返していろボォォォォォ!」
「生憎、それは出来ない相談でございますな!」
「なっ!?……下半身だけからでも全身を再生させられるのかボォォォォォ!?」
「はっはっは!当然でございますよ!」
しかし、この程度の再生能力はお嬢様に仕えるメイド全員が持っているというのに……
それでここまで驚くとは、そちらの方が驚き桃の木山椒の木でございますな!
……ああ、そういえばあのテロ組織に居た頃は滅多に死にませんでしたっけ!
だからでございますかね?
「ボォォォォォ……」
「さて、それはそうと私を呑んだ感想はどうでございますかな!」
「感想も何も、貴様は生きてるから無意味だったボォォォォォ……って、まさか!」
「そのまさかでございます!……ライターの火に加え、私の一部も呑み込んだ……これなら、操るのも造作なき事でございます!」
さてさてさて、ここから少しだけ物思いに耽るでございますよ!
私は、かつて国の暗部たる暗殺メイドとして育てられていた孤児でございました!
しかしながら、このクソ煩い上に大雑把な性格のせいで暗部勤めは無理と判断され、最終的にはお嬢様が幽閉されていた塔へ左遷されたのでございます!
はっはっは!
ほんと、勝手に育てられ勝手に失望されるとは……
なんて、そんな事はどうでも良くて!
……重要なのは、その時点の私は異能が他のメイドより少しだけ強かっただけで境遇的には他のメイドと大差なかったという点でございました。
私には皆目見当がつかずとも、何かを心の内に抱えていたのだけは確実なエレジー。
同じく詳細不明ながら、どうにも重い過去を持っていると誰かから又聞きで聞いた事のあるアイシャ。
同じ司令塔ポジションの彼女達と違い、私は物心ついた時から孤児で、特にこれといった大きな悩みも持たずに生きて来たのでございます。
塔への左遷に性格以外の理由はなかったし、他2人と違って上からの期待もございませんでした!
……逆に、エレジーとアイシャを取り巻く環境が異常だったと気付いたのは、それから随分後になっての事でございましたが。
そんな私だからこそ、やれる事もございます!
例えば……あまりに一直線な馬鹿だからか、思考処理速度がとんでもなく早い、とか!
(※なお、この間0.000000000001秒である)
「ふん、肉体を呑み込んだ程度で操れる訳ないボォォォォォ!……ってか、貴様なんてもう相手にしてられないボォォォォォ!」
おっと、私を避けて進むおつもりでございますか!
確かに他のメイドが後詰めに待機しているから問題ないとはいえ、露骨にスルーされると嫌なものでございます!
なので………決めてやりますかな!
「【火炎操作・遺灰円舞】でございます!」
ーくるくるくる
「っ!?……て、抵抗し切れんボォォォォォ!?」
自前の火に加えて私自身の肉体も混ぜたとなれば、操作可能になるのも道理!
先程から操作に抵抗していた様子ですが、もう終わりでございます!
「さあ、お覚悟はよろしいでございますか!」
「ぐ、ぐぬぬ……殺すなら殺せボォォォォォ!」
「殺す?……はっはっは!そんな勿体ない事はしないでございますよ!」
「ど、どういう事だボォォォォォ?」
はっはっは!
驚いてます驚いてます!
「使い魔契約、結ぶのはどうでございますか!」
「……頭、沸いてんのかボォォォォォ?」
もはや身動きもとれなくなった相手に対し、私は使い魔契約を提示したのでございます!
「貴方、本当は今の主人に仕えるのが嫌なタイプでございますよな?……明らかに手を抜いてるのが見え見えでございましたぞ!」
「……だから、私に主を鞍替えしろって言ってんのかボォォォォォ?」
「ええ!……で、どうするでございますか!」
「……ふん、面白そうだから考えるだけ考えてやっても良いボォォォォォ!」
おっと、思ってたより好反応!
やはり直感は間違っていなかったでございますな!
「では、血の交換を……血なんて通ってなさそうでございますし、もう炎で良いでございますよね!」
「そ、それで良いんかボォォォォォ?」
まあ、良いでございましょう!
そうして、私は使い魔契約を結ぼうとして……
ご読了ありがとうございます。
まだ続きます。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




