71.最悪な昼休み突入
はい、これで今日の更新は終わります。
(同時刻、???視点)
「総理、英国の大使から首脳会談の日時案が送られて来ました!」
「確認させて貰うゾ」
私は今日も今日とて激務の毎日。
だから、横に立つ秘書官からの報告も大人しく受けた。
……総理となる道を選んだ時からこうなるのは分かっていたとはいえ、今日ぐらいは休みたかった……
「……やはり、三毛猫さんが居ないのはそこまで気になりますか?」
「当然ゾ。……私にとって彼女は幼き頃から縁のある者、もとい初恋の女性だからな……」
「は、はぁ……」
私……水清院 流軟にとって、彼女は初恋の相手だった。
勿論、私も相手が国を裏から操って来た妖怪なのは理解していた……
しかし、そんなものがどうでも良くなる程に、私は彼女にゾッコンだったんだ。
「……出来る事なら、子種も私のものを使って貰いたかった程だゾ……」
「あ~、結局1回も使ってくれなかったんでしたっけ?」
「悔しいゾ……」
「まあまあ、そう気を落とさず……」
とはいえ、理屈は分かる。
そもそも、私の子種は色々と面倒なものだからな。
「さて、英国相手となると……男が良いか、女が良いか、それが問題だゾナ」
「そうですねぇ……どちらでも良いのでは?」
「では、女で」
ーぐにゃり
「ほんと、いつ見ても総理の肉体変化は慣れないものですね……」
そう。
これこそがその面倒という理由。
……私の異能、【粘液生命体】だゾ。
「老若男女ありとあらゆる姿へ変化可能な私の肉体は、水清院家の中でも異端そのもの……しかし、これはこれで役に立っているゾ」
「しかし、代償なのか子種もまたスライムという弊害が出ているのでしたっけ……」
「そうだゾナ。……故に、子孫は私の兄弟姉妹達に託すしかあるまい……」
「大変ですねぇ」
本当だゾ!
それに、最も嫌な問題もある。
「問題はそれだけにあらず。……三毛猫からは、この異能を私の先祖……の兄である水清院 是正が持っていれば良かったのにと八つ当たりをされる事もしばしばであるゾ」
「ああ、三毛猫さんが長い人生の中で唯一恋をした相手という……」
「確かにこの異能はほぼ不老不死も同然なものだが、私にそれを言われても困るのだゾ!」
結局、三毛猫は私を恋愛対象として見ない。
しかし、私もそれを是としている。
……私は、既に自分が彼女の隣に立つのを諦めてしまっている訳だ。
「……是正様はおろか、恐らく三毛猫さんの子供達より優先順位低そうですからね……」
「くぅ~、彼女がわざわざ体育祭を見に来るとか羨ましいゾナ!……私が子供の時は、彼女が私の体育祭へ応援に来た事なんて1度もなかったのに!」
「そりゃ~、あくまでも上司の子供程度の相手ってだけの間柄ですし……」
「あ~もう、この苛立ちは野党へぶつけてやるゾ!」
「辞めてくださいよ!?」
結局、私は苛立ちながらも仕事を続行した。
……どうせ、彼女が帰って来たら胃痛の種が増えると頭では理解しながら……
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(前話から10分後、木葉院 本江視点)
「で、何か言う事はありませんの?」
「せやせや!」
「た、大変申し訳なかったでござる……」
うぅ……
某が気合いを入れて臨んだ障害物競走の第3走。
そこで某は全員道連れを狙ってヤバめの本を選んで異能を使ったんでござるが……
「ハァ……あんなヤバめの存在を顕現させるとかどうなってますの?」
「原典のハスターに比べて大幅に劣化しとったからあの2人でどうにかなったけど、1歩間違えば学校丸ごと壊滅する大惨事になってもおかしくなかったんやで!?」
「し、信じられないでござるよ~!」
映像も見せられたでござるが、正直に言って某の異能ってそこまで万能じゃなかった筈でござるよな?
「多分ですが、異能の持ち主である貴女が発狂したのも原因に含まれているのでしょう……今後はこんな事にならないよう、お願いしますわね?」
「は、はいでござる……」
「ってか、道連れ狙っておいて自分だけ脱落したんも恥ずかしいと思いよし!……こんな事なら、まだ正々堂々戦って負けた方がマシやったわ!」
「返す言葉もないでござる……」
結局、秀光とカミラエルはゴールしちゃったらしいでござる。
確か、1位がカミラエルで2位が秀光だったとか。
……まさか、自分だけが発狂のまま脱落するとは。
「これで午前の部は終わりですわ。……しばらく休みなさいな」
「分かったでござる」
「ほんま、ウチ等あかんところばっかやったな」
「そうですわね……」
ああ、3年生の威厳が形無しでござる……
……絶対、最後のしっぽ取りでは絶対に挽回してやるでござるからな!
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(禍津 明視点)
「秀光、大丈夫か?」
「あはは、大丈夫さ……ラヴィ校長のお陰で怪我もリセットされたしね?」
「……そうか」
まさか、この世界にもクトゥルフ神話があったとはなぁ……
しかもハスターの劣化コピーが顕現しかけるとか。
「あ、秀光!……ボクからはまあ、徒競走に続いてカミラエルちゃんに1位を取られたのは残念だったね、としか言えないけど……」
「ああ、アヤノ君……けどまあ、不思議と悔しくはないんだよね」
「そうなの?」
「うん、何でだろうね?」
知らねぇよ。
なんて、言える訳もねぇか。
「案外、秀光が影華だけじゃなくてカミラエルも好きになったとかだったりしてな?」
「も~、明ったら……流石にそれはボクでも邪推が過ぎると思うかな~」
「はは、そりゃそうか」
俺の冗談を、アヤノが茶化す。
ただ、それだけの会話だった。
なのに、その後に続いた秀光の言葉で全てがひっくり返る事になる。
「………………………………そうだよ」
「「へ?」」
「そうだよ……って言ったんだ」
えっと……………は?
「え、マジで言ってるのか!?」
「明、その反応を見るにボクの耳がイカれたとかじゃないんだね?」
「ああ、はっきり言いやがったよ」
「そっか……ボクとしては自分の耳がイカれたんであって欲しかったかな……」
そうか、マジでか……
……俺だって"獄落姉妹"にレ……された件をどうするかで迷ってんのに、秀光がカミラエルを好きとか……
どう処理すりゃ良いんだよ!
「これ、秘密でお願いね?」
「ったく、しょうがねぇな……」
「ぼ、ボク達からは言わないから安心してね?」
「うん、ありがとう……」
よし、これで俺達はこの件にこれ以上足を踏み込まずに済む。
思わず、アヤノと顔を合わせてサムズアップし合おうとした程には面倒な問題だったからな。
……だからこそ、油断していた。
「……へぇ~、そうなのですか」
「わ、私が好き……ザマスか?」
「「「え?」」」
ふと背後を見れば、そこには何故か影華とカミラエルが立っていたのだ。
ちなみに影華はニヤついており、対するカミラエルは呆然としていた。
「あ~、昼休みへ入る前に午後の部の軽い打ち合わせをと思ってたのですが、タイミング最こ……いや、最悪だったみたいなのです」
「影華、お前面白がってるだろ」
「秀光、お前に影華以外の愛する者が出来たのは百歩譲って良いザマス!……でも、それが私ってのは……」
「あっ……いや違うんだ、聞いてくれないかい?」
あ、これ修羅場だ。
カミラエルからしたら、自分を恋の好敵手と思ってそうだった奴から好意を向けられてると知った訳で……
『んじゃ、障害物競走の後始末も終えたから、そろそろ昼休みに入るのじゃ!』
『最後に現在の点数だが、1年生が84点、2年生が68点、3年生が57点って感じだァ!』
『それでは、各々保護者の方との歓談を楽しんでくださいメェ~』
「は?……この最悪なタイミングでか!?」
「さあさあ面白くなって来たのです!」
「影華ちゃんはもっとボク達みたいに緊張感を持ってくれないかな!?」
「もう最悪な気分ザマス!」
「なっ……別に僕から告白した訳でもないのにその言い草はないんじゃないかい!?」
「あ~もう収拾がつかねぇよ!」
そうして、俺達は最悪なタイミングで昼休みへと突入した。
……自分の問題もあるのに、どうしてこんな目に……
ご読了ありがとうございます。
次回は警備側パートに移ります。
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