68.狂信者と兵器馬鹿
なお、種目中に死んだ場合は無得点扱いです。
(金村 冥堂視点)
……は?
「ニャ……」
「う、嘘アルよな?」
「ベイビ~……」
障害物競走第2走が開始した直後、シスター嬢ちゃんが他2人を殴り倒した……
そんな光景を目にした俺っち達は、言葉を発する事も出来ずに困惑していた。
「いや、確かに復活可能でルール上も問題はニャいとはいえニャ……こればっかりは流石のミャ~もどうかと思うニャ……」
「卑怯アル!」
「待て待て、早まんなベイビ~!」
スタート直後に相手を殺す……
そりゃ最適解だが絵面を考えろよ絵面を!
「まあ、ミャ~もあの非情さというか非道さを買って勧誘しようとしてたんニャけど……やっぱトチ狂ってるから持て余しそうだニャ……」
「影華が負けた?……そ、そんなんとてもじゃないが信じられないアルよ!」
う~ん、俺っちにこの場をどうしろと?
特に胡蘭がヤバそうだぜ?
「……ただ、まだ終わりじゃニャさそうニャ」
「ん?……ああ、なるほどアル」
「へ?……そりゃどういう意味だ、ベイビ~?」
まだ終わってねぇだと?
……いったい、2人には何が見えてんだ?
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(金霊院 真梨亜視点)
「ふぅ……後は頑張ってゴールするだけですわね!」
明と影華を撲殺……いえ、まだ微かに息はありますね。
とにかく虫の息にした以上、後は私がゴールすれば終わりですわ!
……な~んて、油断するとでも?
「ちゃ~んと息の根、止めて差し上げますわ♪」
私が崇拝する至高の神、ラヴィ・リンスゥ様によって死んでも復活させて貰えるのですから、別に殺されたって良いですわよね?
ではまず、異能の暴走が危険そうな明から……
「グルァァァァァ!」
ーむくっ……ブンッ!
「おっと!?……まだ意識が……いえ、これは【顎】が明の体を操作してますわね?」
突然、地に伏せていた【禍神纏装】形態の明が起き上がり、腕を振るって来たんですの。
……しかし、どう見ても当人が動かしているとは到底思えない動き……十中八九、【顎】が彼の肉体を操作しているといったところですわね。
「グルァァァァァ!」
ーブンッ!バサッ!ブンッ!
「あらあら、動きが単調ですわよ?」
【顎】は腕、翼、尻尾と様々な部位で私を攻撃して来ましたが、良くも悪くも単調な動き。
とはいえ【顎】はもう少し賢い動きが出来た筈なので、明が大ダメージを負ったであろう事も響いているみたいですわね。
「グルァァァァァ!」
ーカキィィィィィン!
「ただまあ、いくら狙いが正確でも私には掠りもしないんですわよね~」
今のは良い線行ってましたが、そんな【顎】の攻撃も私に当たる寸前で金色の結界に阻まれましたわ。
「グルァァァァァ!?」
「ふふふ……この結界は【神の守護結界】といって、大抵の攻撃なら無力化させられる程の防御力を誇る結界なんですの♪」
『ここに来て守りも鉄壁とはのう……しかしワシの名前は使わんで欲しいのじゃ!』
『もう諦めろやァ』
あらあら、ラヴィ・リンスゥ様ったら……
嫌よ嫌よも好きの内、ですわよね?
分かってますわ!
「しかもこれ、オート発動型ですのよ♪」
「グルァァァァァ!?」
『もう駄目そうじゃのう……』
『ってか、初手皆殺しはアリなんかァ?』
おやおや、運営も生ぬるいですわ。
死ぬ気殺す気でやれとラヴィ・リンスゥ様が仰ったではありませんの!
「ともかく、早めにトドメを刺さなければ……」
「死ね、なのです!」
ーパンッ!カキィィィィィン!
「……早くトドメを刺させてくれなかったせいで、もう1人も目覚めてしまいましたわ」
【顎】と戦っていた私の背後で地に伏せていた筈の影華が、こうも早く目覚めるとは……
さては動いている最中に当てたせいで十字架が急所を外したといったところですわね?
「チッ、弾かれたのです!」
「……急所は外せても、頭部からの大量出血までは免れなかったみたいですわね」
「煩いのです!」
影華は顔面にベッタリと血が付く程には頭部からの出血が激しい模様……
あまり長くは保ちませんわね。
「では……2人がかりで私を倒してみなさいな!」
「そのつもりなのです!」
「グルァァァァァ!」
しかしまあ、無謀な賭けをするものですわね。
影華は虫の息、【顎】も宿主たる明の方が限界寸前……
本気で潰せば終わりですわ!
「決めますわね?……【聖女】、【神の鉄槌】ですわ!」
ードンガラガッシャァァァァァン!
「がはっ!」
「グルァッ!?」
ードサッ!ドサッ!
【神の鉄槌】による雷が落ち、影華と【顎】は再び地に伏せます。
「さて、それでは今度こそゆっくりゴールへ……」
「ゴフッ!……ま、待つのです……」
「あら、まだ生きてますのね?」
影華、もう楽になれば良いものを……
いい加減、こちらもトドメを刺しますわよ?
「ハァ……ハァ……どうせなら……道連れなのです……」
「はい?」
「【兵器……錬成】……【核……爆……だ」
「やらせませんわよ!?……【聖女】、【神の……」
影華がヤバめな兵器を出そうとしている事に気付き、私は急いで影華の息の根を止めようと近付きましたわ。
……ですが、その判断は間違いでしたの。
「なんちゃって、なのです♪」
ーニヤッ……ポイッ!ポイッ!
「え?」
ーピカッ!ドォォォォォン!
影華は近付いて来た私へ閃光弾と手榴弾を投げつけ、光と爆風で視力を、爆音で聴覚を、それぞれ塞いで来たんですわ。
やがて、視力が戻り土煙が晴れた頃……
「ハァ……ハァ……私の……勝ちなのです!」
「いきなり何を言って……おやまあ、これが狙いでしたのね?」
……ふと辺りを見渡せば、倒れているのは影華だけ。
肝心の【顎】……いえ、明の姿が見当たりませんでしたわ。
「先を……見ると……良いのです……」
「……ああ、やはりそうですわよね……」
影華に促されてコースの先を見てみれば、そこには【禍神纏装】形態で走る明の姿がありましたの。
……言わずもがな、ここから走って追いつけるかどうかという距離ですわ。
「……追わないの……ですか?」
「ええ……秀光の【聖騎士】とは違い、私の【聖女】に速度特化の技はありませんもの……きっと追いつけませんわ」
「そう……なのですか……」
至近距離かつ無防備で手榴弾の爆発を受けた影華の肉体は、既に限界を越えておりましたわ。
後で復活可能とはいえ、もうこの種目においては死を待つだけですわね。
「……【神の鉄槌】も遠距離の相手には当てられない近距離技ですし、彼の1位は決まりですわよ」
「諦める……のですか?」
「ふふふ、あの2人にああ言っておいてこれでは、私も合わせる顔がありませんわね……」
そう呟く間にも、明の肉体を操る【顎】はどんどんと先へ進んでおりましたわ。
水場を飛び越え、回転棒を突破し、反り立つ壁を跳躍して乗り越え、ロープをよじ登り……
……本当に、私の完敗ですわ。
「……先輩は……強かったのです」
「そう評価してくれるのは嬉しいですが、やはり不向きなレースはするものではありませんわね……正面対決ならこうは行かないのに……」
「……後の……しっぽ取りで……挽回すりゃ……良いのですよ……」
「それこそ、貴女方が最も対策を練っているであろう種目ですわよ?」
ハァ……
今年は私達3人、あまり良い姿を見せられそうにありませんわね。
と、その時でしたわ。
『ゴールですメェ~!……障害物競走第2走、1位は2年生ですメェ~!』
「おやおや……では、そろそろ私も行かせていただきますわね?」
「……………………………」
「っ……話は最後まで聞いて欲しかったですわね……」
そうして私は楽々と障害物を乗り越え、ゴールへと進みましたわ。
……悔しさを胸に秘めながら……
ご読了ありがとうございます。
一応、真梨亜の手札はまだありましたが、彼女なりにその場その場の最適解を選び続けていたつもりでした。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




