66.光華の新境地
念のために言っておくと、3年生の強者3人の戦い方は場に留まるタイプなので競争とは相性が悪いです。
(禍津 光華視点)
何だかんだありつつ、そろそろ障害物競争も開始というタイミングになりました。
『んじゃ、最後に1つ……この障害物競争において異能使用は完全自由、直接的な妨害もアリだァ!』
『そういう訳じゃから、じゃんじゃん異能を使ってお互いを蹴落とし合うと良いのじゃ!』
最後の説明が入り、いよいよ私は障害物競争のスタートラインへと向かいます。
「あ、光華ちゃん!」
「アヤノ先輩、打ち合わせ通りに来てくれたんですね」
2年生の第1走者として隣に立ったのは、何を隠そうアヤノ先輩。
もっとも、これ自体は事前の打ち合わせで秘かに決めていた事だったとはいえ……彼が約束を守ってくれて私も嬉しいです。
さて、それはそうと3年生の第1走者は……
「へぇ~、先鋒はあんた等2人かいな」
っ!
まさか、貴女が来るとは……
「生徒会長……いえ、寂子先輩とお呼びした方がよろしいですか?」
この学校の生徒会長にして、3年生の中で要注意すべき3人の内の1人……土壺院 寂子先輩。
その容姿は黒髪ロングと糸目という、何処か胡散臭い感じが滲み出ている御方でした。
「……寂子先輩について、秀光から聞いたの覚えてるよね?」
「愛しのお兄様じゃないんですから、記憶力はバッチリですよ」
「……光華ちゃん、愛してるって割に明をボロクソ言うよね」
「お兄様なら、欠点すら魅力になりますから♥️」
まあ、お兄様の事は置いておいて。
秀光先輩の話が確かなら、寂子先輩の異能の名前は【砂姫】。
……文字通り、大量の砂を生成して操作する異能だったと秀光先輩から聞きました。
操作可能な砂は、生成した砂に限るとも……
「ふ~ん、2人は組んどるんやな?」
「ボクからはノーコメントで♪」
「私からも同意見です」
「さいか~」
あ、これ察されましたね。
……ならば、情け容赦は無用です。
「影華に言われて思いついた新魔法……ここで試してみるのもまた一興ですね♥️」
「え、何それボク知らないんだけど……」
「仲間同士で情報連携も出来とらんやん」
うぐっ!
ま、まあその辺りはご愛敬という事で!
と、そんなタイミングでした。
『よ~し、3人とも準備しろやァ!』
事前準備の催促が始まったんです。
「あ、ウチは始まってからで結構やで~!」
「ボクは前提からして、かな……」
「私も始まってからで大丈夫ですよ」
『そうかァ!』
結局、準備する程の事もなかった私達は何もせずに準備万端を宣言しました。
そして……
『それでは準備万端との事ですメェ~ので……位置について、よ~い……どんっ!』
ーパンッ!
教頭先生により、スタートの合図が鳴らされました。
「行くで、【砂」
「【魔術百科】、【愛の楽園】です♥️!」
ーポンポンポンッ!
「「ふぁっ!?」」
私は新魔法、【愛の楽園】を発動しました。
すると、私の周囲に無数の使い魔達が現れ始めたんです。
加えて、その使い魔というのは……
「「「「「「うお~!頑張るぞ~!」」」」」」
「うげっ……何この小さな子達、ボクの目がイカれたんじゃなきゃ明そっくりじゃん……」
……全員、お兄様そっくりの見た目をしていました。
とはいえ、その身長は掌サイズ。
四大妖精に悪魔に天使とデザインのレパートリーは豊富ですが、所詮1匹1匹は小さき者です。
……ただまあ、数は蟻の大群レベルで無数に居ますが。
「何やこれ、気持ち悪っ!」
「ボクも明は好きだけど、明そっくりの妖精か何かの大群は流石に許容範囲外だよ!?」
『こりゃ悪夢か何かかァ?』
『安心せい、現実じゃよ』
『それ、夢であって欲しかったやつですメェ~』
あちこちでブーイングが上がり始めました。
……皆さんは気持ち悪さが勝ちましたか。
私にとっては、これ程の天国はないというのに……
「まあ、それはそれとして……アヤノ先輩、早く行きますよ♥️!」
「う、うん!」
「ふぅ……【魔術百科】、【ジェットウインド】♥️!」
ーガシッ!バビュン!
「あ、ちょい待ちっ!」
私はアヤノ先輩ごと【ジェットウインド】で飛び立ち、寂子先輩と距離を離します。
……何より、飛んでるので足場タイプのアスレチックを全無視出来るのが大きいです。
「待てと言われて待つ馬鹿は居ませんよ!」
「そ~だそ~だ!」
ですが、そろそろでしょうか。
「【砂姫】、これで追い上げたるわ!」
寂子先輩が大量の砂を生成して、私達へ迫ります。
……どうやらあの砂、使用者を乗せられる様子。
いやいや、流砂状態の砂に乗るって正気ですか!?
「使い魔の皆さん、後は頼みました♥️!」
「任されたぞ~!」
「「「「「「「えいえいお~!」」」」」」」
ーヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!
「は?……そいつ等命令聞くんかへぶしっ!?」
寂子先輩の顔面に小さなお兄様がクリーンヒットしましたね。
……とはいっても、相手はこれで押し留められる相手でもありません。
「アヤノ先輩、今の内に進みますよ!」
「あ、うん!」
「うおぉぉぉぉぉ!待ちよしぃぃぃぃぃ!」
「ほら、もう追い上げて来ました……」
寂子先輩は大量の砂を纏った上で、流砂に乗ってこちらへと進んで来ていました。
いくら私とアヤノ先輩が飛翔移動していても、あれは厳しいです。
「光華ちゃん、どうするの!」
「こうします……水のお兄様!」
「「「「行くぞ、【ウォーターボール】!」」」」
ーバシャバシャバシャッ!
水色の小さなお兄様達が、水で出来た玉を寂子先輩へと撃ち出します。
ええ、やはり砂系異能持ちには水攻めですからね。
ほら、砂がどんどん固定化されてますよ?
「こんなんウチが対策しとらんとでも!?」
あ、寂子先輩が濡れた砂を消して新しい砂を出し始めました。
それでも、こちらは既に目的を達成していますが。
「いくら新しい砂を出そうと、そこまで濡れて出してを繰り返せばタイムロスは免れませんよ」
「くっ……せやけど!」
「いいえ、これが真正面からの勝負であればまだ結果は違ったでしょうが……どちらが優勢かと言われればこちらです♥️!」
「きぃ~っ!……待ちよしやぁぁぁぁぁ!」
私とアヤノは回転する突起付き棒を始めとした障害物を避けつつ、前へ前へと進みました。
その間、小さなお兄様による寂子先輩への妨害も続行中でした。
つまり、どうなるか?
「うわぁ……寂子先輩、どんどんボク達から離されちゃってるよ……あの人、結構強い筈なのに……」
「分かってます……あれだけ妨害してもまだ肉薄してる時点でそれは充分な程に察してますよ!」
「邪魔や邪魔や邪魔やぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
あ、また追い上げて来ましたよ、あの人……
「見た目に反してガッツがある人ですね……天使のお兄様、やっちゃってください♥️!」
「「「「食らえ、【ホーリービーム!】」」」」
ーバシュッ!
「食らうかいな!」
ーサッ!
寂子先輩は天使お兄様が放ったビームを難なく避けましたが、それによるタイムロスまでは避けられませんでした。
「……えっと、どっちもボクなんか比べ物にならないぐらい凄いや……」
「ええ、そして明らかに寂子先輩の方が凄いです」
「そうなの?」
「はい……今だって、向こうが初見だから通用しているに過ぎません!……それこそ寂子先輩が慣れてしまえば、待っているのは一方的な蹂躙です!」
私はアヤノ先輩と共に反り立つ壁を越えながらも、現状があまり良くない事に気付いていました。
とはいえ、残る障害物が最後のロープ登りだけ。
これなら何とかなりそうです。
「もうラストスパートやって!?」
「このまま逃げ切ります!」
「あちゃ~、これ絶対ボク達あの人に目をつけられちゃったよ……」
そんなのは知った事ではありません。
後方から迫る砂を小さなお兄様達が食い止めてくれている間に、私はアヤノ先輩を連れて上へと飛び上がりました。
そうして……
『ゴールですメェ~!……1位は1年生、2位は2年生ですメェ~!』
「待ちやぁぁぁぁぁ~!」
『あ、3年生も3位でゴールですメェ~』
……どうにか逃げ切った私達は、最善の結果を手に入れました。
「くっ……あんた等、この屈辱晴らしたるからな覚悟しときよし!」
不本意ながら寂子先輩から因縁をつけられるという代償を支払う形で……
ご読了ありがとうございます。
なお、初見技じゃなければ寂子が2人を蹴散らしていました。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




