65.お次は障害物競争
影華の異能は影華の頭脳あってのものとはいえ、普通にチート級です。
ならば、影華とは双子の光華の異能も……
(禍津 光華視点)
玉入れ終了後の小休憩時間……
「私はいったい……いつ、進むべき道を間違えたんでしょうか……」
……私はふと、そう呟いていました。
「ん?……光華姉さん、いきなり何を言ってるのです?」
「影華……いえ、私と影華の力量差を考えるとどうしても思う事があるんですよ……」
影華から心配……心配?されてしまいましたが、どうせ貴女にこの気持ちは分かりませんよ。
「ハァ……で、何を不貞腐れてるのです?」
「っ!……私と影華は双子だというのに、その力量差には雲泥の差がありますよね?」
「まあ、言われてみればそうかもしれないのですが……だから何なのです?」
「だから何、と来ましたか……言い訳がましく聞こえるでしょうが、こんな私だって影華みたいにチート級の規格外な力を得たいと常々思ってるんですよ……なのに当の私が【魔術百科】を全く使いこなせていないせいで、これまでたいした活躍も出来ずに居ます……」
思えば、影華は異能と趣向が偶然にも合致していたのが大きかったんでしょう。
だからこそ、異能の精度をあそこまで伸ばせた。
ですが対する私は魔術に然程興味がなく、お兄様へ執心してばかりで異能も基礎的な部分しか鍛えずに放置していました。
……その結果、まさかここまでの差が生まれるなんて思いもせずに。
けれど、影華からの返事は素っ気なく……
「ふ~ん、光華姉さんはそんな些細な事をそこまで深刻に悩んでたのですか?」
「なっ……些細な事ですって!?」
「そうなのです!……というか光華姉さんって、兄さんさえ絡まなければそれなりに生真面目な分、異能の使い方すら型に嵌めたがる悪癖があるのです!」
「型に嵌めたがる悪癖……ですか」
確かに、私は基本的に型に嵌まったタイプの魔術を行使していますが……
……それが、駄目だとでも言うつもりですか?
「察してると思うのですが、そんな魔法は光華姉さんにとっての正解じゃないのです!……寧ろ、光華姉さんは唯一の異常性である兄さんへの愛を魔術に昇華すべきだったのです!」
「っ!?」
お兄様への愛を、魔術へと昇華させる……
……そんな事が、本当に可能なんですか?
「あ、そんな芸当が本当に可能かどうかまでは私も責任持てないのです。……ただ、それを差し引いても試してみる価値はあると思うのですよ!」
「……影華……」
そう、ですね……
確かに影華の言う通り、お兄様への愛を魔術へ昇華出来るかどうか試してみる価値はあります……
……そもそも、このままだと私はお兄様や影華にどんどんと差を広げられてしまうだけですし。
「ま、前提として私からしたら兄さんの何がそこまで良いのかさっぱり理解不能なのですが……」
「えぇ、どうせ影華には分かりませんよ」
「……どういう意味なのです?」
「文字通りの意味でしかありませんが?」
影華にお兄様の魅力は分からないでしょう。
その辺りは個人の自由意思です。
『では……午前の部の最後を飾る次の種目、障害物競争に移りますメェ~』
「……光華姉さん、出るのですよね?」
「ええ、出ますね」
障害物競争……
文字通り、コース中の障害物を突破して順位を競う種目だった筈です。
『この種目の出走回数は3回、つまり各学年から3人選出しろやァ!』
『なお補足じゃが、点数は1位が20点、2位が10点、3位が5点となっておるのじゃ!』
……なるほど、点差を考えてもまだ油断は出来ませんね。
「出し惜しみせずに私、影華、カミラエルさんで行きましょう!」
「光華姉さん、本気なのですね?」
「ん~?……またザマスか」
「あ、何気にアタイは戦力外なんすね……」
写美さんには悪いですが、こればっかりはどうしようもありません。
……3年生を追い落とし、2年生と接戦する。
これを実現すべく、私は策を練り始めました……
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(直後、禍津 明視点)
「障害物競争ねぇ……で、どんな競技なんだ?」
俺の心は不安でいっぱいだった。
……徒競走はまだ理解可能な範囲だったし、玉入れも異能が使用可能って点以外は割とそのまんまだった。
だが、次の種目である障害物競争までもがそのまんまだとはどうしても思えなかった。
「どんな競技かだって?……僕から言えるのは、だいぶ厳しいアスレチックコースだね」
「でもでも、飛行能力なんかがあれば割かし楽勝な競技だとボクは思うけどな~♪」
アスレチックで、飛行能力があれば割かし楽勝……
……え、マジで言ってんのか?
「ほら、そうこう言ってる間にコースが形成され始めてるよ。……これは僕も少し工夫しないと勝てないかな~」
「うん、ただ事前の打ち合わせ通りボクが一番槍を務めるからそのつもりで!」
「……その打ち合わせ、俺は知らねぇんだが?」
ってか、今アヤノ何つった!?
いやまず、打ち合わせの事も気になるし……
情報がパンクしそうだぞ!
「まあ、明君は下手にアレコレ教えない方が結果を出してくれそうだしね?……それでも、策の浅い部分は教えた筈だよ?」
「その中にこれは入ってなかったが?」
「まあまあ、明は取り敢えず出来る限りの事を頑張ってくれたら良いからね♪……詳しい部分はボクや秀光に任せてくれれば……」
「そもそもアヤノの異能はこういうのに不向きだった筈だろ!?」
アヤノはこれ無理だろ。
いや恋人としては応援してぇ気持ちでいっぱいだが、現実的に考えたらどうしても……
「大丈夫大丈夫!……ボクと光華ちゃんの間で話はついてるから♪」
「……まあ、光華は変に嘘ついたりしねぇか……」
「じゃあ、僕が2番手で明君が3番手で頼むよ?」
「秀光まで有無を言わせねぇつもりか……って、他の女子共はそれで良いのか?」
秀光とアヤノが中心となり、話をトントン拍子で進めていく。
俺としては周りの2年生女子共を巻き込んで対抗しようとしたんだが……
「いや~、下手に私達がやるのに比べたら、ねぇ」
「その3人が安牌というか……」
「私達が走った徒競走の結果が軒並み散々だった以上、何も言えないでしょ……」
……当の女子連中は意気消沈していた。
まあ、たいした活躍も出来てねぇしな……
実際、俺も名前はそこそこ覚えてはいるが、どうにも印象に残らねぇ面々だ。
それこそ、物語ならモブってぐらいには……
なんて考えてたら。
「ふむ、コースが出来たらしいね」
「明もちゃんと見たら~?」
「へ?……って、これSAS○KEじゃねぇか!?」
あ~、うん。
勿論そのまんまじゃねぇぞ?
でも反り立つ壁とか、何かグルグル回ってる棒とか、ロープを使って上へ上がるエリアとか……
「明君、それって何かな?」
「ボクも知らないかな……」
「あ~、何でもねぇから気にすんな」
偶然か?
偶然だよな?
……偶然であってくれよ?
「……さて、それじゃあ僕達も準備しないとね」
「3年生からは誰が出て来るかな……ボクでも勝てると良いんだけど……」
「ほんと、アヤノは確実に辞めといた方が良い気もするんだがな……」
とまあ、何だかんだありつつも俺と秀光とアヤノは出走者の待機エリアへと向かった。
……それはそうと俺、何か絶対に忘れちゃ駄目な事を忘れちまってる気がするのは気のせいだろうか……
ご読了ありがとうございます。
なお、明が体育祭の空気に呑まれて忘却してるのは"獄落姉妹"に関するアレコレです。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




