デザイン
デザインするというと、何か美しい形を追い求めるものというような響きがありますが、それだけではないのです。使いやすさだったり親しみやすさだったりも含めて、何かの条件に合わせて何かを組み立てていくのデザインです。
もう小説を書き始めてから気が付けば数年が経過しましたが、物語を作るというのはデザインの一種かなと最近では思っています。大筋のテーマがあって、キャラを考えて設定を考えて物語の流れとプロットを考えて……建築設計というデザイン行為とそれはかなり似ています。
よく建築設計において、「デザイン優先で使いにくい」という批判を聞いたりします。それはちょっと違うかなと思っています。「見た目ばかり重視して使いにくい」なら分かります。「使いやすい」というのもデザインの一種ですが、「多少使いにくくても見た目を重視した方が、建て主や利用者には利益になる」というデザインもあると思います。
それはまた小説にも同じことが言えるのではないでしょうか? 「文章は美しいが分かりにくい」「分かりにくいけど深い」という風にデザインされた小説もあると思いますし、とにかく「分かりやすさ」に主眼を置いてデザインされた小説もあるでしょう。元は建築設計をしていて、あとから小説を書くようになった人を何人か知りましたが、多分同じデザインという行為なので、その人特有の癖のようなものは建築と同じく小説でも自然と出てくるんじゃないかと思います。
私は「分かりやすい」とか「読みやすい」になるべく拘っていきたいと思っています。より多くの人に伝えたいからです。そうして直接的な表現では無くて、ぱっと見の印象は薄くても後からじわじわ効いてくるような、そんな物語のデザインがしたいなと思っています。しかし公募などに出すような場合、最初に読者を惹きつけることができる、そんなフックが大切なんだろうなというのも理解できます。
それは建築でも一緒ですね。建築雑誌などを見れば分かる通り、ぱっと見のインパクトが無いとなかなか世間からは注目されません。但しディティールを積み重ねて積み重ねて、それで全体としては洗練されたものになって評価されるというスタイルの方も確かに存在します。ただ単純に使い勝手やメンテナンス性という点を比較すれば、マイナスな部分はやはり見受けられます。結局どうバランスをとるかなんでしょうね。それもまたデザインです。




