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精霊の花嫁〜迷い込んだ精霊の国は、男女比100対1の逆ハーレム国でした〜  作者: 夜風ほたる


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第八話

評価、ブックマーク、感想、レビュー、リアクションをいただけると執筆の励みになります!

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 レシアーノは現在、膝の上で眠る王子様を見守りながら、物思いに耽っていた。

 この国から帰る方法を探さなければならないのに、今の状況では情報を集められる手段はない。

 帰る方法を探していることは、リブラミアに決してバレてはいけない。

 しかし、わたしがこの国で知り合った人物は、リブラミアを除き女王様とファーゼス様しかいない。

 どちらも彼の身近な存在だ。

 女王様に個人的な相談するのは流石に恐れ多い、かと言ってファーゼス様は何を考えているか読めない。

 レシアーノが相談を持ちかけた時、ファーゼスはリブラミアに隠し通してくれるかどうかは判断がつかなかった。

 どうしたものかと考え込んでいると、下から声がした。


「レシアーノ、どうしたの?そんなに難しい顔をして」


 いつの間にか起きていた彼に呼びかけられていた。

 慌ててリブラミアに視線を移して答える。


「リブラミア様、起きてらしたのですね」

「ああ、今起きたよ。ところで、何を考えていたの?」

「えっと…、いつもここの料理が美味しいので、何か秘訣はあるのかな…と」

「ふふっ……、難しい顔をしてたから何を考えていたのかと思えば、貴方は食べ物のことばかりだな」

「食事は大切ですよ?」

「まぁ、そうだな。特に人間は必要なんだろ?」

「はい!三食きっちり食べないと元気が出ません!」

「ははっ……そうか。それなら毎食しっかり食べてもらわないとだね」


 そう言いながら彼は体を起こした。

 ソファーに座るわたしの横に座り直すと、じぃーと瞳を見た。


「リブラミア様?……わたしの顔に何か?」

「……何でもないよ。貴方は美しいなって思っただけ」

「またそう言うことを…!」

「本心だと言っているだろう?」

「リブラミア様のほうが美しいと思いますけど…」

「それは褒めているの?」

「勿論です!羨ましいくらいです」

「美しい、か…。レシアーノは私の顔は好き?」

「はい!美しくて素敵だと思います」

「そうか!貴方に好んでもらえてるなら、この顔でよかったよ」


 心から嬉しそうにふわりと笑っていた。

 顔の周りにキラキラした花の幻影すら見えてしまうくらい、美しい笑顔だった。

 レシアーノは思わず息を呑み、言葉を失う。

 甘い空気が二人を包み込み、彼の顔が自然と近づいてきた。

 また口付けされるのかな?と真っ赤になっていると、部屋の扉からノックの音がした。

 その後に、扉の向こう側から男性の声がした。


「リブラミア王子殿下!いらっしゃいますか?緊急の招集がかかっております!」

「…………。レシアーノ、貴方はここで待っていて」


 良い雰囲気を邪魔されて不機嫌になりながらも、彼はソファーから立ち上がり部屋から出ていった。



***



 あの後、夜になってもリブラミアが部屋まで戻って来ることはなかった。

 一度だけ扉をノックする音がして、扉の外から警備員の声がしただけだった。

 『リブラミア王子殿下のご指示で人払いがされております。今から一時間以内に湯浴みは済ませて下さい』と伝言だけを告げて去っていった。


 手短に湯浴みを済ませ、部屋へ戻る通路を歩いていた。

 今日はネックレスも忘れていない。

 人にも出会っていない。

 前回のやらかしを反省しながら歩いていると、ふと曲がり角の向こうに人影が見えた。

 慌てて壁に寄り静かにしていると、こちらに気づく様子もなくその人は歩いていった。

 レシアーノは目を疑った。

 王宮に女王様以外の女性はいないはずなのに、一瞬見えた横顔は女性に見えた。

 緑髪の長髪で、背中がざっくりと開いた服を着ていた。


(あの方は…王宮の来客かな…?)


 来客であれば女性が王宮に居ても何らおかしくはない。

 深く考えずに部屋に戻ることにした。

 部屋に戻ると、睡魔に襲われてベッドへ横たわる。

 すぐに眠りについていた。



***



 昨日は早く眠れたからか、目覚めた時から体が軽かった。

 予め用意されていた数着の洋服から、緑色のレースのワンピースを選び着替えた。

 そろそろリブラミア様がやって来る時間だと、身だしなみを整えて待っていると、想像通りの声が扉の外から聞こえた。


「リブラミアだ。入ってもいいかい?」

「はい、大丈夫です」


 レシアーノの返事を待ってから、ゆっくりと扉が開かれた。

 彼はトコトコと歩きレシアーノの前で足を止める。

 ぎゅっと抱きしめられて顔が近づいてきた。


 ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、


 唇に触れるだけの軽い口付けが何回も贈られた。

 数分間それは続き、やがて名残惜しそうに唇が離れていった。

 恥ずかしさに顔を赤くしていると、満足そうな笑みが返ってきた。


「レシアーノ、おはよう。今日の服装も可愛いね」


「お、おはようございます…」

「ふふっ……赤らんだ顔も愛らしいね」

「揶揄わないでくださいっ!」

「本心だよ。そうだ、今日の朝食は食堂で食べないかい?」

「はい!勿論です!」

「そうか。それでは、早速行こうか。婚約者様お手をどうぞ」


 無駄のない仕草で手を引かれ、食堂までエスコートされた。



***



 食堂の大きなテーブルには、片側十席、両側合わせて二十席の椅子が並んでいる。

にも関わらず、片側の中央二席だけが不自然に真横に並んでいて、その席の前にだけ料理が盛り付けられている皿とグラスが置かれていた。



「リブラミア様、これは……」

「どうしたんだい?」

「席、近すぎませんか?」

「私は貴方を膝に乗せて、一つの席に一緒に座るでもいいんだけどね?」

「い、今のままで大丈夫です!」

「残念だ。それでは席に着いて、いただこうか」

「はい……」


 中央の席に座ると、真横にぴったり置かれた椅子にリブラミアも腰掛けた。

 それから当然のように横から抱きついてきた。


「あ、あの?毎回こうなるんですか!?」

「食事中は口付け出来ないし、膝に乗せるのも断られてしまうから、こうしてるんだよ?」

「触れないと言う選択肢は…」

「無いな」

「兄上……、食事の邪魔だろ」

「!………ファーゼス、お前なんでここに」

「仮婚約者と、食事をしにきた…」


 突然現れたファーゼスは、呆れた顔で兄を見ていた。

 サンドイッチが乗った皿をテーブルに置き、二人の向かい側の席に座った。

 それから二人の前の料理が盛り付けられた皿を見た。

 サラダ、スープ、パン、どれも一人分が置かれていた。

 ファーゼスは無表情で二人の前にサンドイッチが乗った皿を移動させた。


「追加を頼んでくる………。兄上も、少しは食べろ」

「私はレシアーノと二人で食事がしたい。お前は向こうで食べてきてくれ」


 兄を心配する弟と、弟に仮婚約者との食事を邪魔されて不機嫌になる兄。

 これでは、どちらが弟で兄なのか分からない。

 微笑ましい光景だった。


「ふふっ……、ファーゼス様、ありがとうございます」


 自然と溢れていた笑顔に、男二人は顔を真っ赤にして黙りこくってしまった。

 その後、先に動いたのはファーゼスで、席から立ち追加の料理を取りに行った。

 また二人きりに戻ってすぐ、今度は数人の大きな足音と大きな声が聞こえてきた。


 ドタドタドタドタ!!!


「お待ち下さい!!いま食堂に行かれては困ります!!」

「いいじゃないか、ボクは今すぐ食事がしたい」

「いけません!!!お部屋までお届けしますから!!」

「え〜、もう目の前まで来たんだから、ここで食べるよ」

「あ!!だからそちらは!!!」


(誰かがこちらに向かって来る!?)


 慌ててリブラミアを見ると、ファーゼスがいた時よりも不機嫌な顔をしていた。

 レシアーノを抱きしめていた手を解くと、椅子から立ち上がり、食堂の入り口を睨んだ。


「ロランドール、食事は部屋にしてくれ」

「あれ〜、兄さん!と、そちらのレディは?」


 不機嫌なリブラミアの態度を気にも留めず、男性がズカズカと歩いてきた。

 近づいてきた男性に視線を移すとーーーー


 衝撃で固まった。


 見間違えるはずがない。

 昨日見た女性だと思っていた人が立っていた。

 女性にしか見えない美しい顔立ち、緑髪の長髪、背中がざっくりと開いた服。

 デッサンで描きたいくらいに美しいっ!!!!


 それなのに、


 艶やかな男らしい声。

 ピッタリとした服の下にある胸板。

 ズボンはなぜかチャック?が全開で下着がチラりと見えていて、そこには確かに男性にしかない盛り上がりがあった。


………………この人は男だ!!


 格好がいやらし過ぎて歩くエ◯だ!!!


「レディ?そんな目でボクのここを見られたら、カラダが熱くなっちゃうよ…」


 は!!………いけない!!

 下半身にずっと視線を向けてしまっていたみたい。

 恥ずかしすぎる!!!!!!


「あっ……、えっと、その…」


 何を言えばいいの!?

 女性だと思ったなんて失礼だよね!?

 そもそも昨日、わたしが一方的に見かけただけで…


 恥ずかしさとパニックで言葉が見つからない。


「レディ?ボクは誰とも契約はしないから、キスはダメだけど……。カラダなら見せてもいいよ?ボクと部屋ですーーー」


 バンッ!!!!


 大きな音がした。


 そしてロランドールと呼ばれていた人が吹き飛ばされ、床に倒れた。


 既視感がある、これは…


「………失せろ。………お前がいると、健全さが消える」


 料理を取りに行っていたファーゼスが戻ってきた。


 ファーゼス様…!おっしゃる通りです!

 この方が立っているだけで健全ではない空気になるので助けて下さい!

 レシアーノは救済者が現れたと瞳を輝かせた。


「…っ…!い……ったあ!もう〜、ゼス兄ひどいなぁ。ボクの肌に傷がついたらどーするの!」 

「知らん…………、怪我したくないなら服で隠せ」


 ファーゼスが冷たい目で、ざっくりと開いた背中を見た。


「え〜、ボクのカラダは美しいから見せないと勿体無いじゃない?そういうゼス兄だって、胸元全開じゃん!」

「…………ボタンが……嫌いなだけだ…」


 助けられたと思ったら、男二人の口喧嘩が始まってしまった。

 『ゼス兄』と呼んでいるからこの人も王子様なのかな?

 それよりもファーゼス様が胸元開けてる理由が『ボタンが嫌い』って別の服を着たらいいのでは!?

 というか、さっきから食堂が暗くなった気がするのだけれど、照明が切れたのかな?


 レシアーノは暗くなった方向を見ると、そこには、殺気を放ち真っ暗な霧に覆われたリブラミアがいた。


 血の気がサーーーーーッと引いた。


 口喧嘩している二人はまだ気がついていない。

 真っ暗な霧が男二人の横に移動する。


 そして………


「さっさと出ていけ!!!!!」


 一番厄介な人物の怒りが爆発した。



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