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精霊の花嫁〜迷い込んだ精霊の国は、男女比100対1の逆ハーレム国でした〜  作者: 夜風ほたる


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25 透明な壁


ご覧いただきありがとうございます!

評価、ブックマーク、感想、レビュー、リアクションは執筆の励みになりますので、少しでも面白いと思っていただけましたら気軽に残してもらえたら嬉しいです!




「静かだな……」


 一人きりの部屋でじっと夜空を見上げ、ぽつりと呟く。

 その言葉に返事が返ってくるはずもなく、外から木々が揺れる音が小さく聞こえてくるだけだった。

 それが余計に虚しさを際立たせ、じわりと胸の奥に黒い影が広がっていく。


 星々の眩い光を透明な硝子越しから眺めていても、胸の内側まではその光は照らしてはくれない。

 それどころか、夜を迎える度にじわりと黒い影が心を蝕んでいく感覚に襲われていた。




 フィリモ国に来てから一カ月が過ぎ、王子達は変わらず毎日側に居てくれていた。

 だからこそ、日中の賑やかさに対する夜の静けさが不安を募らせてゆく。


 終わった初恋をいつまでも引き摺っているこんな自分を、あんなに素敵な三人の王子様が想いを寄せてくれている。

 それは信じ難いくらいに嬉しい出来事のはずなのに、心の中でずっと何かが引っ掛かっている。


 胸がチクチクと何針も刺されて痛みを訴えてくる。


 自惚れるんじゃないと。

 誰もお前だから好意を寄せたわけではないと。

 この国に迷い込んだ人が別の女性だったとしても、同じく想いを寄せられていたのだろうと。


 『わたしがこの国で貴重な女(・)性(・)だったからでしょ?』


 真っ黒い顔のわたしが呼びかける。


 異常なまでの愛情を注いでくれるリブラミア様、不器用な愛でそっと寄り添ってくれるファーゼス様、友愛のように明るく心を照らしてくれるロランドール様。


 その愛は『レシアーノ』に向けられたものでは無い。


 最初からそれが分かっていたから、どれだけ望まれようとも婚約者にはならないと決めていた。

 夜が来る度に胸に針を刺しにこなくたって、ちゃんと、ちゃんと分かっているのに。




 天を見上げてもう一度、眩い光を瞳に受け入れた。

 煌めく光のその先の、遠い、遠い、知らない世界を見る。


 フィリモ国に来て初めて魔物をこの目で見た。

 その時から静かに近づく終わりの足音に震えている。

 心が壊れそうになっている。

 一つの可能性にあの日からずっと怯え続けている。


 フィリモ国に潜む魔物がパルム国に侵攻したら…と。


 そうなれば、魔力もない人々は一瞬で息絶えパルム国は滅びるのだろうと。

 その悲劇から守る為に『わたし』が存在するのだから。

 母からは死ぬまで隠し通せと言われていても、わたし一人が助かり、他の人々が死ぬ未来なんて選べるはずは無い。


「覚悟、しないとね………」


 誰にも聞こえない、震えた声を眩い光へ向けて吐き出す。

 弱々しいその声は、透明な硝子に遮られてどこにも届かず静かに消えていった。

 星々の眩い光に包み込まれた、静かで、暗くて、黒い夜。


(覚悟するよ……。覚悟するから………)


 一つだけ願うことは許されるだろうか。

 この黒く滲み出した逃げ場のない世界に、立ち向かっていく怖さを消し去る為に。




「リブラミア様……」


「ファーゼス様……」


「ロランドール様……」


「……………………………………ロイ…」




(誰か一人だけでいい、一人だけでいいから……)














「最期(おわり)が来たら……、泣いてくれますか?」


『レシアーノ』を見てくれますか……?
















 素敵な王子様に囲まれる穏やかな日々に、ひっそりと、ゆっくりと、それでも着実に近づいて来る終わりの足音に、今日も一人震えている。

 静かで、暗くて、黒い夜は、まだ続いている。



***



 ふわりと体を包み込む心地良い温かさに、暗い世界からゆっくりと瞼を押し上げる。

 優しい自然の光が窓から差し込み部屋中を照らしていた。

 明るくなった視界が、暗い夜の終わりを告げていた。


 まだ覚め切らない意識の中で、ぼんやりと辺りを見回す。

 そこで一気に、意識が覚醒した。

 見慣れた天井をぼんやりと見た後に視線を下げると、知らない高級そうな家具が視界に入り、意識が呼び覚まされたのだった。


(わたしの部屋じゃない…!?………ここは?)


 体を包んでいた白い掛け布団をがばっと音を立てながら勢いよく上半身を起こすと、早急に意識を覚ました反動でくらっと視界が歪む。


「起きたか……。昨晩から何度も魘(うな)されておったぞ」


 低く威厳のある声が後ろから聞こえて頭が真っ白になる。

 振り返らずともその声だけで、只者ならぬ雰囲気が感じ取れた。


 振り返るのが怖い。

 人の声にそんなことを思ったのは初めてだ。


「どうした……?気分が優れぬのならもう暫く休むがいい。そなたは見かけぬ顔ゆえ、ここの客人か?」


 直ぐに反応しなかったことで具合が悪いと判断され、気遣う声が続いて聞こえてくる。

 恐怖心からギギギと音がしそうなくらいカクカクと首を動かし、声のする方を確かめる。


 そこには眉を顰(ひそ)めた男性が立っていた。

 真っ黒な長い髪、暗い紫の瞳、溢れ出る魔力。


(魔王!?……じゃなくて、第一王子様!?)



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