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精霊の花嫁〜迷い込んだ精霊の国は、男女比100対1の逆ハーレム国でした〜  作者: 夜風ほたる


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24 汚い感情


ご覧いただきありがとうございます!

評価、ブックマーク、感想、レビュー、リアクションは執筆の励みになりますので、少しでも面白いと思っていただけましたら気軽に残してもらえたら嬉しいです!




「ロランドール様、あれから一週間が経ちましたので、わたしの話は聞いて下さりますか?」


 レシアーノの宿泊部屋の夜間警備については、王子二人の仮婚約者ということもあり、部屋を王子達の隣の部屋に移してもらうことになった。

 基本的には変わらず騎士に警備を任せ、何かがあれば直ぐに王子達が駆けつけるという話で収束した。


 そして、ロランドールとも何だかんだ毎日顔を合わせる機会があり、あの約束から一週間が過ぎていた。


「あ〜、もうそんなに経ったんだね!」


 リブラミアとファーゼスが呼び出しをくらい、部屋で二人きりとなったタイミングであの日の約束を確認をする。

 すると、いつもの調子で返事が返ってきた。


「ちゃんと覚えていますか?」

「ええ〜、なんだっけー?」

「ロランドール様!忘れるなんて酷いじゃないですか!」

「あ〜、ごめんねっ!そんなに怒らないで、ちゃんと覚えてるよ」


 とぼけるロランドールに怒ると、ニコニコと笑いながら揶揄われる。

 そこもまたいつもの展開なのに………、なぜだろう?

 ロランドールの目が、いつもより嬉しそうに見える。


「覚えているのなら、わたしが何をロランドール様にお願いしたか答えてください!」


 本心が見えない態度に本当に覚えているのかと、確認をするために問い質す。

 またニコニコ笑い出すのだろうと予想していると、寂しそうに眉毛を下げたロランドールが答えた。


「ボクがどうしたら笑えるようになるのかって、寂しくなくなるのかって、言ってたよね?」

「は、はい……。そうです」


 寂しそうな表情にも戸惑い、正確な回答をされたことにも戸惑い、強気だった言葉に勢いが無くなる。

 目の前のロランドールからも普段のゆるっとした雰囲気は消え、湿った空気を纏っていた。


 慣れないその姿に、何を言えばいいのかも分からなくなって、ただ名前を呼んでいた。


「ロランドール様…?」

「レシィちゃん、今からくだらない話をしてもいい?」

「?………はい。聞かせてください」


 くだらない話をするような表情ではないロランドールに疑問を抱きつつ、ソファーに腰掛けていた体を正して聞く体勢をとる。


「ボクね、父さんによく思われてないんだ」

「それはどうしてですか……?」

「小さい頃からずっと、ずっとね、父さんはボクには最低限しか会いに来てくれないんだ。会おうと思えば毎日会えるボクより、二週間に一度しか会えない母さんのところに熱心に通ってさ……。そんな事が何年も続いて、ボクは汚い感情を抱いてしまったんだ」

「汚い…、感情……?それは……」


 ロランドールは小さく息を吐いてから、真っ直ぐな視線をレシアーノに向けた。


「ボクだって愛されたいと思ってしまった」


 寂しそうに、悲しそうに、微笑んでそう言った。


「こんな汚い感情は誰にも見せられないんだ。父さんにも愛されない。母さんにも平等な愛しかもらえない。だけど、そんなボクだって、ボクにだって………、ボクだけを愛してくれる人がほしいと思ってしまった」


 綺麗な紫色の瞳に水が滲んでいく。

 じわり、じわりと、瞳が水で歪んでいく。


「ボクは王子だから、国民全員を愛さないといけないんだ。たとえ、ボク自身が愛されていなくても……、愛されたいと望んではいけないんだ。こんな汚れた感情は、ずっと、ずっと隠して生きてきた。綺麗にしてたらね、可愛らしいお姉さんとか素敵なお兄さんとかが寄ってきてくれるんだ。ボクのことを好きだって言ってくれるんだ。だから……、だからね、綺麗でありたいんだ。ボクは綺麗であることだけを望まれているから」


 紫色の瞳から溢れた雫が頬に伝った。

 一筋の透明な線が綺麗な頬を濡らしていく。


 愛されたいなんて誰だってそうなのに。

 人間だろうが、精霊だろうが、平民だろうが、王子様だろうが、関係ないのに………。


 幼い頃からずっと、ずっと、悩んでいたのだろうか。

 その綺麗な容姿と明るい性格に隠していたのだろうか。


(汚くなんかないのにっ……!)


 汚くなんかない。

 とても真っ直ぐて、純粋で、綺麗な感情なのに……。


 綺麗過ぎるその涙が儚くて、このまま消えてしまいそうで耐えられなかった。

 ぽろぽろと綺麗な雫を溢しはじめたロランドールの姿に、感情が抑えられなくなって、体が勝手に動く。

 必死に手を伸ばしてロランドールを掻き抱いていた。


「ロランドール様っ…!それは汚い感情ではありません!願っていいのです!望んでいいのです!きっと…、きっと貴方だけを愛してくれる人がいますっ…!」


 少しでも伝わればいい、少しでも救われればいい。

 そう思いながら必死に掻き抱いた。


「……………………………………………それなら」


 大人しく抱き込まれていたロランドールから、ぽつりと声がして顔を見る。


「それなら………。レシアーノ、貴方に愛されたい」


 涙に濡れた真っ直ぐな瞳に、愛を望まれていた。


「レシアーノに愛されたい」


 もう一度、強く、望まれる。

 初めてまともに呼ばれた名前は、何よりも綺麗な言葉に聞こえた。


「もしいつか……、ボクのこの汚い感情を受け取ってくれる気になったら…。その時は、ボクのこの綺麗な身体を貴方が汚してよ。貴方の紋章(あと)なら、喜んで刻み込まれたい。それまでは、ずっと、ずっと、綺麗な身体で、綺麗な感情だけの王子でいるから」


 真っ白で綺麗な肩に、ゆっくりと細い指先を添わせて告げられる。紫色の綺麗な瞳からは、まだ涙が溢れていた。

 その真剣な眼差しは、どこか、どこか寂しげで、それでも満ち足りた目をしていた。


「ボクはね、こう見えてもミア兄よりも独占欲強いから、ミア兄とかゼス兄とかと一緒に仮婚約者になるつもりはないんだ〜。だから、ボクだけを愛してくれる気持ちになったら、世界一美しい約束のキスをボクとしようよ。ずっと、ずっと、ずっと……、待ってるからね!」


 最後は普段通りの口調でニコニコと笑いながら話して、『その時は心から笑えるようになるよ』と耳元で甘く囁かれていた。


 一気に色々な感情が押し寄せて、コクリと顔を縦に振ることが精一杯となっていた。

 その頷きにロランドールは満足げにニコニコと笑うと、レシアーノをぎゅっと抱き締める。


 薄着の下からロランドールの男性的な身体が伝わってきて、ドクドクと心臓が音を立てる。

 密着する身体から、ロランドールも男性なのだと再確認させられていた。





今更ですが、各エピソードにタイトルをつけました!



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