100話記念特別企画
100話記念特別企画
作者が選ぶ 印象深いキャラクター・ベスト5
いつも、読んで頂きありがとうございます。
この作品をここまで書いてきて、特に印象に残っているキャラクターを、作者の独断と偏見で選んでみました。
人気投票ではありません。
あくまで、「書く側として心に残った順」です。
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第1位 小橋伸夫
やはり、この人を外すわけにはいないです。
創業期から会社を支え、野球部の初代エースであり、二代目監督。
信成を「信ちゃん」と呼び、改革の盾となり、多くの人材を育てる。
モデルになった方は、昭和20年代の高校野球の名門で鳴らした人物だという。
軟式ボールを初めて触ったとき、こう言ったそうです。
「なんだ、ゴムまりか」
この話は、モデルになったご本人から直接聞いた話です。
硬式、高校野球でかなり鳴らした人だったので、当時は軟式野球を下に見ていた。
それが、その後は軟式野球と会社に心血を注いでいく。
硬式の名門出身でありながら、軟式と会社に人生を捧げた。
小橋伸夫というキャラクターには、その「最初の一言」と「その後の一生」の落差が、静かに宿っています。
人を残した男。
この作品で最も「人」を体現した存在として、第1位としました。
自分の中で一番のシーンは、第22話の最後から第23話にかけての内山との対峙。
ここは今読み返しても、小橋らしくてカッコいいと思います。
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第2位 花田乙七
第一部、伊勢湾台風の時に活躍して、その後、社員ではないのに会社に定着した人物です。
一見、どうしようもない。
愛想がない。
上から目線。
背はかなり低く、天然パーマに髭もじゃ。
見た目だけなら、
「この人、大丈夫か?」
と思ってしまう。
しかし、機械の前に立つと別人になる。
その「見た目と中身のギャップ」があまりに強烈で、書いていて何度も笑ってしまった。
人間としては近寄りがたいのに、技術者としては圧倒的に信頼できる。
この落差こそが、花田乙七というキャラクターの魅力だと思っています。
モデルになった方は今も健在で、電気図面なしで、現代の機械をバンバン直してしまう。
戦前や昭和の機械ではない。
表面実装バリバリの現代の機械ですよ。
すごい人です。
超タバコ臭いけど(笑)。
一番好きなシーンは、第7話の最悪の状況から、第8話で登場して立て直す場面。
あそこの小橋とのハグは、花田乙七の魅力がかなり出せていると思っています。
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第3位 内山義雄
内山工業の社長。
最初は敵ではないんですが、信成や小橋に立ちはだかる抵抗勢力として書きました。
ところが、次第に信成や小橋の人柄を、違う角度から読者に見せる役になっていった。
その過程で、どんどん思い入れのある人物になっていきました。
創業者・伊東隆や小橋の葬儀にも登場して、いつの間にか森繁久彌的な存在になってしまいました(笑)。
小橋の葬儀で、杖をついて、娘に支えられながら通夜に現れる。
そして、
「小橋っちゃん……」
と呼んで泣き崩れる。
ここは書いていて、自分も泣きそうになりました。
約束を守れなかった信成に、
「謝りに来てくれただけで十分や」
と言い、
さらに、
「一番伊東ちゃんに似とったんは、信ちゃんやったわ」
とまで言ってくれた。
弱くて、破れながらも、最後まで人としての筋を通す。
この作品の中で、最も「悲しいけれど美しい」人物の一人だと思っています。
一番好きなシーンは、やはり第69話。
信成が謝りに来て、それを内山が受け入れるシーンです。
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第4位 伊東征広
モデルになった方は、本当に「完璧な人」でした。
僕からしたら雲上人のような、めちゃくちゃ偉い人なのに、腰が低くて上品。
末端の人間の意見にも、きちんと耳を傾ける。
僕がまだ20代前半で、少し生意気だった頃、その生意気な話すら聞いてくれた。
それだけではなく、許容して、正当化までしてくれました。
懐の深さというか、器の大きさというか――。
征広というキャラクターには、その「下の人間の声を真正面から受け止める力」を投影しています。
社長になっても、専務になっても、現場の声を聞き、人を活かす。
この作品における「理想の経営者像」に最も近い存在として、第4位としました。
好きなシーンというか、第72話から社長になるまでの、泉町精工を立て直していくキレッキレの部分は、よく書けているかなあと思っています。
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第5位 橋本登
花田を退場させることを決めていたので、花田の代わりの強いキャラクターとして登場させました。
実力はある。
でも、変わり者。
そういうキャラクターにしたかった。
イメージは、トニー谷さんやルー大柴さんです。
変わり者が凄腕を見せつける。
そういうのが、僕は好きなのかもしれません。
橋本は、歳を重ねるごとに丸くなっていきます。
これも意図的にやっています。
若い頃は天才肌で、周りとぶつかる。
でも経験を積んで、部下を持って、会社の中でいろんな人間を見るようになると、少しずつ変わっていく。
そこは橋本というキャラクターの人生として、意識して描いています。
好きなシーンは、第40話「秘密」。
虚勢を張っていた橋本の弱さを、小橋が受け入れるところです。
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100回記念・作者インタビュー
――まずは100話、おめでとうございます。
「ありがとうございます。」
――正直、100話まで続くと思っていました?
「いや、全然(笑)。」
――最初はどんなつもりで書き始めたんですか?
「自分なりに構想はあったんですが、なかなか書くタイミングがなくて。」
「で、AIに時系列や時代との整合性を調べながらなら書けそうだと思い、書き始めました。」
――つまり、AIに物語を作ってもらったというより?
「そこは全く違いますね。」
「構想そのものは自分の中にあったんです。登場人物とか、会社の歴史とか、大まかな流れとか。」
「ただ、それを文章にするのが大変だった。」
「AIなら文章化を手伝ってもらえるし、『この年にこの会社は何をしていたか』とか、『この技術は当時存在したのか』みたいなところも確認できる。」
――実際、100話まで来ました。
「自分でもびっくりしてます(笑)。」
――書き始めた頃から、100話までの構想はあったんですか?
「いや、そこまで細かくはないです。」
「大筋はありましたけど、書いているうちに人物が勝手に膨らんでいった感じですね。」
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作者の経歴
――では、改めて作者さんの経歴を聞かせてください。
「経歴ですか(笑)。」
――はい。どういう仕事をされてきた方なのか。それが『泉町精工』にどうつながっているのかも気になります。
「そうですね……。そこは結構、『泉町精工』に影響していると思います。」
「もともと製造業の世界にいて、実際の会社の中で、営業とか製造とか、いろんな人間を見てきました。」
――なるほど。だから会社の描写が妙にリアルなんですね。
「そうかもしれません。」
「会社って、社長だけで動いてるわけじゃないですからね。」
「営業がいて、製造がいて、技術がいて、総務がいて。それぞれ考えていることも違う。」
「その辺は、自分が実際に見てきたものがかなり入ってます。」
――では、登場人物も実在の人物がモデルになっているんですか?
「……そこは、まあ(笑)。」
――かなり意味深ですね(笑)。
「いや、人物そのものをそのまま使っているわけじゃないです。」
「ただ、実際に会った人間の性格とか、言いそうなこととか、そういうものは多少入ってます。」
「だから、書いていて『こういう奴、実際にいたな』ってなることはあります。」
――それが信成だったり、征広だったり、あるいは野球部の人たちだったりする?
「そうですね。会社だけじゃなくて、野球もそうです。」
「自分が経験してきたこと、見てきたことを材料にして、それを物語の中で組み合わせている感じです。」
――だから最初から全部フィクションとして作ったというより、現実にあったものをベースに、時代や会社を組み替えている?
「そうですね。」
「それにAIで時代考証とか技術的なところを確認しながら、少しずつ形にしていった感じです。」
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モデルになった人物
――先ほど小橋や征広の話がありましたが、モデルになった方がいるキャラクターは、他にもいるんですか?
「小橋、花田、征広はモデルがいます。」
――かなり重要な三人ですね。
「そうですね。」
「ただ、実際の人物をそのまま小説にしたわけではないです。」
「性格とか、仕事に対する考え方とか、そういう部分でモデルにしたところがあります。そこに自分の創作をかなり加えています。」
――小橋については、モデルになった方から直接聞いた話もある?
「あります。」
「軟式野球のボールを見て、本人が『ゴムまりか』って言ったんですよ。」
――あのセリフは創作じゃなかったんですね。
「そうなんです。」
「モデルになった本人も、小橋と同じように硬式野球、高校野球でかなり鳴らした人なんですよ。」
「だから、軟式野球をちょっと下に見ていたんです。」
――それで『ゴムまりか』と。
「そう(笑)。」
「でも、そこが面白かったんですよ。」
「硬式でやってきた人からすると、軟式のボールって本当に別物に見えるんでしょうね。」
「それが、その後は軟式野球にも会社にも深く関わっていく。」
「最初はちょっと馬鹿にしていたものに、最後は心血を注いでいる。」
「そこは小橋を書く上で、すごく面白いところでした。」
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書いていて一番笑ったキャラクター
――では、先ほどは「印象に残ったキャラクター」を挙げてもらいましたが、逆に「書いていて一番笑ったキャラクター」は誰ですか?
「協和機工商事の五人兄弟です。」
――あの五人ですか(笑)。
「はい(笑)。」
「実は、モデルになった会社があるんですよ。」
「その会社、社長の上に会長がいて、その上に名誉会長がいたんです。」
――社長、会長、名誉会長……。
「そう。」
「『なんじゃそりゃ』って思って(笑)。」
「それで、もう悪ふざけですよ。」
――それで五人兄弟に?
「そうです。」
「社長がいて、会長がいて、名誉会長がいて……だったら、もう一人増やして終身名誉会長まで入れてしまえ、と(笑)。」
――完全に遊びですね。
「完全に遊びです(笑)。」
「でも、こういうところが小説の面白いところですよね。」
「実際に見たものをそのまま書くんじゃなくて、『これ、もっとやったら面白いんじゃないか』って膨らませる。」
――五人兄弟は、その典型だった。
「そうですね。」
「モデルになった会社への敬意はもちろんありますけど、そこから先は完全に僕の悪ノリです(笑)。」
――ちなみに、五人兄弟の中で一番お気に入りは?
「……それは難しいですね。」
「5人ともエゴ強めなだけで、キャラ立ってないんで(笑)。」
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これからの『泉町精工』
――最後に、一つ気になっていることがあります。
「はい。」
――伊東康則です。
「康則ですか。」
――はい。
「イズミマチに関係の薄い康則を、どうしてここまで書くのかな、と疑問に思っている読者もいるんじゃないですか?**
「そうですね。そう思うでしょうね。」
――実際、今はクラウザー観光の社長です。イズミマチとの直接的な関係は、それほど濃くない。
「そうなんですよ。」
――それなのに、かなり丁寧に描いています。
「でも、これから繋がっていきます。」
――かなり意味深ですね(笑)。
「まあ、そこはまだ言えません(笑)。」
「康則は、今はクラウザー観光の社長として動いていますけど、これからイズミマチとの関係がどんどん深くなっていきます。」
「今まで書いてきた康則の話も、後になって『ああ、そういうことだったのか』と思ってもらえるようにしています。」
――つまり、今の康則編も伏線になっている?
「そうですね。」
「だから、康則については今後も書きます。」
――100話の時点では、まだその意味が分からない。
「分からなくていいです(笑)。」
「そのうち繋がりますから。」
――では、康則についてはここでは聞き過ぎない方がよさそうですね。
「そうしてください(笑)。」
――分かりました。
「ただ、一つだけ。」
――何でしょう?
「康則は、これからです。」
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100話。
ここまで書いてきて、作者自身もまだ終わりが見えていない。
会社の歴史。
そこに生きる人間。
野球。
技術。
経営。
そして、世代交代。
これから先、誰が会社を動かし、誰が去り、誰が新しい時代を作っていくのか。
『泉町精工』の物語は、まだ続く。




