18:00 第四章 【謎の男】前編
勇気は崩れ落ちていた。
信人を殺していない。
そう思った。
だが違った。
助けられたかもしれない。
救えたかもしれない。
それなのに。
自分たちは公園を去った。
結果として。
信人は死んだ。
母に続いて。
親友まで。
勇気は地面を殴る。
何度も。
何度も。
拳から血が滲んでも止まらない。
「ごめん・・・」
声が震える。
「ごめん・・・」
美咲は隣に座った。
何も言えなかった。
何を言っても軽くなる気がしたからだ。
勇気は決心した。
「こんなふざけた連鎖、終わらせてやるよ」
「かーちゃんや信人の死を無駄にしない」
「死を弄びやがって。」
勇気の目は真っ直ぐで
今までにない決意を感じた。
夕方の風だけが吹いている。
その時だった。
ブブブッ
勇気のスマートフォンが震えた。
知らない番号だった。
二人は顔を見合わせる。
信人の母ではない。
警察でもない。
見覚えのない番号。
勇気は少し躊躇してから通話ボタンを押した。
「もしもし」
数秒の沈黙。
そして。
『おぉ、勇気か』
男の声だった。
中年の男。
少ししゃがれた声。
初めて聞くはずなのに。
どこか聞き覚えがある気もした。
勇気は眉をひそめる。
「誰だよ」
男は気にした様子もない。
『お前今どこにいる?』
「は?」
『どこだ』
勇気は苛立った。
「だから誰だって聞いてんだろ」
男は笑う。
電話越しに聞こえる。
少し不快な笑い声。
『俺はな』
『この死について色々知ってる男だ』
その瞬間。
勇気の表情が変わる。
美咲も顔を上げた。
男は続ける。
『信人のことも』
『母親のことも』
『通り魔のこともな』
勇気の心臓が跳ねる。
「なんでそれを・・・」
『知ってるからだよ』
男の声は落ち着いていた。
『お前らよりずっと前からな』
沈黙。
勇気は言葉を失う。
男はさらに続けた。
『知りたければ来い』
『〇〇市〇〇町』
『〇〇アパート二〇三号室』
住所を読み上げる。
勇気は慌ててメモを取った。
『来るか来ないかは好きにしろ』
『ただ』
そこで男は少し笑った。
『もう時間ねぇぞ』
ブツッ
通話が切れる。
勇気はしばらくスマホを見つめていた。
美咲が聞く。
「誰?」
勇気はゆっくり顔を上げる。
「分からない」
そして続けた。
「でも」
「俺たちのこと全部知ってた」
夕日が差し込む。
公園が赤く染まっている。
美咲は少し考えたあと言った。
「怪しすぎるね」
「だよな」
「でも」
美咲は勇気を見る。
「今までのこと知ってる人なんて初めてじゃない?」
勇気は黙る。
確かにそうだった。
通り魔。
母。
信人。
この連鎖を知る人間なんて存在しなかった。
「行く?」
美咲が聞く。
勇気は少しだけ笑った。
疲れ切った笑顔だった。
「行くしかないだろ」
そう言って立ち上がる。
そして二人は。
死について知る男の元へ向かうことになる。




