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72 光の使い手

エイリックはアサドの思惑を見抜いていた。

アサドには今のところ妻がいない。これは危険だ。

「こうなったら実力行使しかない」

サクラをこの国に留め置かれてしまえば、エイリックに手は出せなくなってしまう。

何としてもプロイスタン王に、かねてよりの約束を守ってもらう。

当初、本気でプロイスタン王へ爵位を返上し、サクラの国へ行くことすら考えていた。

だが、ガジの齎した情報は、それを許さなかった。

一時は己の気持ちに蓋をし、命を懸けて魔物との戦いを覚悟した。

だが、それも解決した。


サクラには、自作自演だと誤魔化したが、半分は本気だったのだ。

事態はサクラと離されてしまう方向へ向かってしまったが、今またサクラと運命が交差出来た。このチャンスを逃してはだめだ。

「そうだ、オルドリックがいた!」

エイリックはサクラのことをオルドリックに任せ、プロイスタンへ戻る事にした。

オルドリックにアサドとサクラを監視してもらい、何かあればすぐに連絡をしてもらおう。

帝国へ発つ前プロイスタン王は

「仕事をやり遂げた暁には其方の望みは何でも叶えよう」

そう言っていた。エイリックは、その言葉を、諦めの微笑みを浮かべ聞き流していたのだが……。今は違う。何としても希望を通させてみせる。

プロイスタン王には、急いでサクラの立場を作ってもらい、婚姻の形を整えてもらおう。


今回の顛末を話そうと、御前に参上する。

そこには、なぜかボボがいた。

「ボボ殿下。なぜこちらへ?」

「ははは。おいのミクロン諸島の体制が出来上がっただす。まずは世話になったプロイスタン王に成果を報告にあがっただす」

ボボは五人の島民を連れてきていた。

二十歳前後の若者たちだった。

ミクロン諸島にも魔が湧き出す。

少量ではあるが、彼はその魔を使ってミクロン諸島を、人材の宝庫という道に進めようと舵を取っていた。

「サクラ殿に聞いた通りに試しただす。その結果、魔持ちが成長しただす」


「予てより、其方が入れ込んでいた平民の娘か。エイリック」

「……はっ。しかし今、アサド帝王が取り込もうとしている向きがあります」

「それは、急がねばなるまい。分かった、サクラをスカリオス侯爵の養女として手続きを急がせよう。あそこには娘がいない。ちょうど良かろう」

ことは急転直下に進んで行く。

王との謁見が終わり、王の側近たちが、王の指示を受けて動き回り始めた。

王の話を側で聞いていたボボが、心配そうにエイリックを見ていた。


ボボとエイリックは王都のローゼン商会へ来ていた。

レオポルドも今回のことをエイリックから聞き、満足そうにうなずいている。

だが、次のボボの言葉に、エイリックは凍り付いた。

「エイリック。サクラ殿には、君の気持ちを打ち明けただすか?」

「え……」

サクラの気持ちを確かめていないことを、エイリックは失念していたのだ。


***


一方、ヤマタイラ国でもサクラの帰りを、じりじりと待つ東吾親王がいた。

「ユウカ。サクラはまだ帰ってこないのだ。いったいどうしたことだ」

「東吾様。サクラは直ぐに帰って参ります。世界商人ですよ彼女は」

側で話を聞きながら、タカシはむくれている。

いつもサクラばかりが東吾様に贔屓にされるのが気に食わないのだ。

「サクラがいなくても、ブリス国との国交は結べました。後は細かな話合いだけではないですか」

「馬鹿を申すな。彼女のネズミがいなければ、物資のやりとりが叶わぬのだぞ」

東吾はプロイスタン国へ諜報員を送り込む決断を下す。

表向きは、視察団ということにして。


――知っているものは限られているが、サクラは今やヤマタイラ国のキーマンとなってしまった。


空間庫を持つ従魔を従え、紐付けられていない転移が使える。

そして世界商人のマスターの商号を持つ。

白鷺財閥を潰すためには、サクラは無くてはならない存在なのだ。


***


私はアサドを用心しながら見ていた。

浄化をかけているとき、彼の中に五センチくらいの塊があるのが突然見えたのだった。同時に光の球も見える。

――なぜこんなものが見えるのかしら。以前は見えなかった。

朱雀に聞くと《真視ば発現したな》と言うことらしい。

真視があれば、相手の属性や力の本質が分かるようになるらしい。便利そうなスキルだ。

真視とは物事の本質を見極める目のようなものだという。

これが成長すれば、魔を飲む前から相手の適性が分かるのではないだろうか。

今はまだそこまでは無理だが。

今回の魔物の討伐でポンタが集めた魔を、アサドに渡した。アサドは褒美として私たちに魔をくれたのだ。その精製した魔を彼女たちも私も飲んだのだ。

「魔を飲んで、浄化を使い続けた結果でこうなったんだわ」

メイリーンたちもその内出来るようになれるはず。

彼女たちの光の属性もどんどん進化している。

私たちはいったいどんなことになってしまうのだろう。


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