71 第四部 プロローグ
アサドの意識は鮮明だ。
サクラに浄化をかけてもらっているのもそうだが、ラシードの浄火により大半の穢れが焼かれたのが大きいだろう。
浄化を自分でかけていたが、魔にかなり浸食されていたようだ。
だが、油断は出来ない。このまま死ぬまで魔とのせめぎ合いが続くのだろう。
アサドには感じられた。聖獣の魔が自分と取り変わろうとしていることを。
だが、そうなれば自分が消えてしまうだろう。
「腹が減ったな……」
今まで感じられなかった味が戻ってきた。
以前は、食い物を口に入れ咀嚼する作業だったものが、味わえるようになったせいで、生きているという実感があった。
今サクラたちは王宮に留め置いている。
メイリーン聖女たちと一緒に、魔の兵士たちの浄化をしてもらうためだ。
だが、いつまで引き延ばせるのか。
アサドにとって必要なのは、光の使い手だった。
帝国にたった一人いた光の使い手も、アサド自らが「気に食わない」と言っただけで処分されたと聞く。
「その記憶は曖昧だ。魔に操られていたのだろうか……」
光はこの帝国にも見つからない希少な属性だ。何としてもサクラをこの国に取り込みたい。
アサドは、食事をしているサクラを見ながら策略を巡らせる。
「ヤマタイラではサクラ様の扱いがぞんざいだと聞きました。サクラ様に位を授けるのはいかがでしょう」
側に控えた廷臣がそう提案してきた。
この頃は、廷臣たちもアサドを怖がらなくなっていた。
廷臣たちは、まず朝一番に、アサドの目を見て確認をしているようだった。
「目の色で魔の状態が分かるのか」
サクラの連れている朱雀という鶏。サクラによれば、神獣だそうだ。
その朱雀がアサドに教えてくれた。
《穢れは消えた。だが、強い魔がおめの中さいる。おめは人でいるが? それとも聖獣に変わるが? おめは、どっちがこの国のためになるど思う?》
光の使い手の増やし方を、サクラに聞く。
「今まで見てきて、女性に適性があるようです。世界は女性に重きを置かなかったせいで、光が少なかったのではないですか?」
「そういうことなのか?」
「ええ、特にきれい好きな女性は光を発現しやすいと考えております」
だが、半信半疑だ。もし光が見つからなければどうする。
どうしてもサクラを囲いたい。知識の宝庫に見えるサクラはアサドにとって、宝物に映るのだ。




