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43 ローゼン商会ユーフラティア帝国支店

ローゼン商会ユーフラティア帝国支店に着いた私たちは、さっそく支店の中を回り、荷物置き場になっていた半地下の小部屋を「輸出部門」として新たに設置し、そこに落ち着いた。


帝国の輸出品は、あることはある。魔物の素材だ。

魔物素材といっても、ふつうの獣と変わらない品質で、違いと言えば大きさだ。

獣が魔物化すれば身体が二倍以上になる。そのため、小さな獣を剥ぎあわせて作る品物には使い勝手が良いのだ。

ただ、皮は固く加工に手間がかかり、臭いの処理も時間が掛かる。

それでも帝国の意向に逆らえない各国は、必要上の高値で買わされている。

商売としては、とても対等な取引とはいえなかった。


「サクラ、これから『税関貿易管理局』へ行って、ここの新部署を申請してくる。お前はここを掃除しておけ」

「いいわよ。掃除は得意だから」

「……」


いばりん坊のオルドリックは、マウントをとりたくて言ったのだろうが、私にとって掃除は一瞬だ。

浄化を掛ければいいだけなのだ。

ただ、人に知られたら面倒なことになる。誰もいないうちにやってしまおう。

「浄火」

部屋中が柔らかな光に包まれそして、すうっと光が収まる。

このごろ私の浄火は進化したのか、光が眩しくなくなった。治癒はまだ目に痛いほど光るけど。

「どういう基準でこうなるのか分かんないのよね」

《無駄な力が入らねぐなったはんでだ。治癒はまだまだだな》

朱雀は、治癒をもっと使えという。でも、怪我人がいなければ使いようがないし、バレないように使うには難しい。


ふと、エドワードのことが頭を過る。

彼の場合、両足の欠損だ。今の私では無理だ。治してあげたいけど。

ポンタは、私に《もっと魔を飲めばいい》というけど、もし自分が魔物化したらどうするのか。

怖くて、これ以上は飲みたくはない。


レオポルドにも知られてはいけない。

彼は、私の魔の力は中途半端な転移だと思っている。

彼にとって、喉から手が出るほど欲しいのはポンタの空間庫だ。

でも、ポンタが大人数も運べる転移まで出来ると知ったらどうするだろう。

「朱雀は浄火や炎撃の他は何か使えるの?」

《火の属性ぜんぶだじゃ。わは、生まれ変わらねばまいねはんで、力はそっちさ取られるんだじゃ》

そうか。朱雀は、神獣だからたくさん属性が使えると思ったけど、そうではないみたいだ。

「ポンタ、ポンタは確か水も出せたよね。今出せる?」

《……出せるけど、上手くはないよ。闇ばっかり強くなった》

そうなんだ。魔物は何でも使えると思ったけど、それは間違いだった。

でも、私も二つの属性が使える。

光と闇。これってどういうことなのだろう。

他の人たちは、スキルは二つ以上使えることは分かってきたけど、属性が複数使える人は、今のところ会ったことがない。


「やはり、私が飲んだ精製された魔は、不純物が入っていたんだ」

今さらだ。もう、こうなってしまったんだもの。

転移は中途半端だけど、目に見えるところなら十メートルくらいなら転移が出来るようになったし。何千キロは無理だけど、知っている場所なら少しくらいなら転移出来る。

転移は治癒の隠れ蓑にもなっている。

闇の属性には、すごく助けられているのだ。


ポンタのように影にも隠れることができたら、これから役立つのでは?

「ポンタ、影に隠れるって、どうやるの?」

《かげ~って思えばいいんだ。簡単だろ》


……ポンタに聞いたのが間違いだった。ポンタは、説明が壊滅的に下手くそだった。


部屋の片付けをしているところにオルドリックが戻ってきた。

申請はスムーズに処理されたと喜んでいる。

「帝国では、”魔”しか産業がないからな、二つ返事で通った。産業になりそうなものが見付かったらすぐに知らせて欲しいんだってさ」

今、帝国は以前ほど楽に取引できなくなって、不安になっているようだ。

食糧の値段が倍になって、経済が揺れているらしい。

この食糧の値段は、ローゼン商会が影で操作しているはずだ。

「怖いね。レオポルドさんは」

「やられたらやり返す。それが世の習いだ。俺は、エドワードが魔調整学園から戻ったときまだ小さかったけど、ショックを受けた叔父さんをこの目で見ていた。叔父さんは青くなって震えていた……」


「そうか、オルドリックは魔調整学園のことを目の敵にしていたのはそのせいね」

「ああ、あれから叔父さんはヘンリーや俺には学園へは絶対やらないと言っていた。だけどプロイスタン国にも魔が湧くと知った。叔父さんは今がその時だと動き出したんだ。俺もその手伝いのために家を出た。兄貴らには知らせていないけどな。俺は叔父さんの影として動いている」


オルドリックは、幼い頃エドワードの姿を見、そして話を聞き、魔物恐怖症になったのかしら。


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