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第二部 プロローグ

ユーフラティア帝国の執務室に集まっている重鎮たちは今、不可解な現象に頭を悩ませていた。


世界各国で今まで魔調整学園に絶えず子どもを寄こしていた国のうち、三カ国がまったく入学許可を申請していないからだ。


ポルトン国とミクロン諸島はいつも一人か二人で影響は少ないため、無関心でいられたが、問題はプロイスタン国だ。

あの国は、帝国の食料庫と言ってもいいほど重要な国だった。

二年続けて申請がなされておらず、しかも食料の値段が倍に膨れ上がってしまった。


「これは、どういうことだ?」

「さしたる問題ではない。ポルトン国の内乱のせいで食糧がそちらへ流れているだけだろう」


「それはそうだろうが、子どもに魔を授けないでこのまま過ごせば、どうなる」


「国力が下がっていくだけだ。それはこちらが心配することではない」


一人、重鎮たちに交じって彼らの話を聞いているネフェラは、顔をしかめていた。


――馬鹿な男たち。魔の真実を知られたかもしれないとは、考えていもないようね。


ネフェラは、魔調整学園の女性トップの教授だ。しかも王族でもある。

そのため、この集まりに参加させられていた。

本当は、ここに来る必要はなかったのだ。

だが、彼女が陰で画策していることを悟られないように、従順に呼び出しに応じたのだ。

建設的な意見も出ないまま、重鎮たちの会議は終わった。

そそくさと執務室を出て、ネフェラは学園へ戻った。


魔は、帝国ではそこいら中に湧いている。だが、他の国にもかつては湧いていたという記述が見つかった。彼女はそれを知り、そのうち、各国が真実を知る日が来ることを予想したのだ。

確かに湧き出す魔の領は、帝国の比ではないだろう。だが、自国で賄えるものを、態々高い金を出して、買いに来るだろうか。

そのうえ、帝国の魔は雑味が多く精製するのに手間がかかりすぎる。


たくさんの動植物を投げ入れ、魔を精製しなければ、魔に取り込まれてしまう恐れがあるのだから。

今彼女の教授室に、魔を大量に飲んだラシードが匿われている。

人の目に触れさせないためだ。


ラシードの魔は、格段に増え、今その力を調整するのに苦労していた。

ラシードは、火の属性持ちだが、今までは炎撃しか使えなかった。

世間一般ではそれは当たり前なここと周知されていたが、ネフェラが研究してきた結果、スキルとは、魔法の属性の中の一部の力に過ぎないということが分かったのだ。


ラシードが火の属性をどれほど使える様になれるかが、この先の希望なのだ。


「ネフィラ教授……すまない。どうしても立ち上がることが出来ないようだ」


「いいのよ。身体に魔が馴染むまではここにいて。数ヶ月は時間が掛かるかもしれないのだから」


ラシードにはふつうの十倍の量を飲ませたのだ。どのような影響が出るのか、未知数だった。


「身体が燃えるように暑い……喉が渇く……」


ネフェラは直ぐさま水を持って行く。この水は、ヤマタイラ国から持ってきた水だ。王族でなければ飲むことが叶わない貴重な水だった。


「ヤマタイラ国の水よ。さあ飲んで」


帝国では、空間庫を持つ魔持ちを囲っている。

魔調整学園では、この様な希少スキルを獲得した生徒を影で囲ってしまう。


そして帝国に差し出されるのだ。

例え余所の国の子どもであろうと、お構いなしだった。


この国では、水も食糧も少ない。

ただ魔の資源だけが、救いとなってきたのだった。

そのため、希少なスキルを受けた者も自分のものだと思い込む。

いや、当然の権利だと考えているのだ。


――帝国の体制を変える。そうすれば、未来は開ける。


ネフェラの考えはこうだ。

帝国は今までの非道な行いを改め、純粋に学園都市として生まれ変われば、他国との関係はもっとスムーズに優しくなるはずだと。


本当にそうだろうか――自信が揺らぐことはあったが、走り出してしまったのだ。

これから、ラシードを王に据え、今の体制を変え、帝国は今まで通り世界を牽引していけると、彼女は頑なに考えてた。


ラシードの状態がやっと落ち着いてきた。

起き上がった彼の身体は一回り大きくなり、僅かに目の色が赤みを差す。

彼を見た途端、ネフェラは逃げ出した。

ラシードの周りにはかすかに魔の匂いが漂い始めた。





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