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24 プロイスタン国の魔物

私の肩には確かに朱雀もポンタもいるはずなのだが、まったく重さが感じられない。これはポンタの魔法だ。朱雀も一緒に影に隠れている。

だから転移部屋に入ったときは、私と転位人とエイリックだけのように見えるだろう。

ただ私とエイリックは大きな荷物を持っているように見せている。

渡航する目的が交易だからだ。

検閲も済ませた。あとは転移するだけだ。


「転移しますので」


そう一言転移人が言うと、ピカッと光る。目を開けると空気が違う転移部屋に立っていた。

造りは似通っている。帝国もそうだった。これには何かの意図があるのだろうか。

国によって特徴くらい出した方が良いのに。そう考えていると、転移人がこう教えてくれた。


「この部屋には帝国の魔法が掛けられている。ここも帝国に管理されているんだよ」と。

「でも、違うところで転移すれば、バレないんじゃ……」


ついそう言っていた。転移人は苦笑いしてまた教えてくれる。


「転移が出来ると知られてすぐに登録させられるんだ。血液を採られてね。そして転移部屋と連結させる。転移部屋でないと転移が出来なくなるんだ」

「嘘、だって私……」


つい自分も転位出来たことを言いそうになった。

だけど、私の転移は中途半端だった。

あの時は、たった一メートルしか転位出来なかったのだ。

だから隊長が苦笑いで見逃してくれたのだ。今更だが冷や汗が出てくる。


「サクラ、これからは変えてみせる。確かに転移は脅威だ。管理は必要だろう。だが他の帝国からの支配は、変わるんだ」


エイリックは転移人とうなずき合い、その後、私を挟んで転移部屋をあとにした。

私が連れてこられたのは、王宮ではなく、湖の近くに立つ美しい屋敷だった。

屋敷から見る湖は虹色に光って見える。


「ここは誰のお屋敷?」

「……ここは私が預かるフロイセン男爵領。今私は、エイリック・フロイセンと名乗っている」

「そうなんだ。ここは綺麗だし、住み心地が良さそうだね。奥様は? まだなの?」

「王より、婚約者を決めていただいた。一年後妻を娶る」

「……そう。おめでとう」


屋敷には多くの使用人がいたが、なぜか皆俯き加減だ。

いつも何かに怯えているように感じる。


「エイリック……男爵。なんだかみんな辛そうにしているのは、なぜ?」


「君に来てもらったのは、その事を相談するためだ。君ならきっと何かを見つけてくれると思ってね」


何かとは、ずいぶん漠然としている。

エイリックらしくない物言いだった。


「魔に関することなら、助けになれると思う。朱雀が」


夕食を頂き、部屋へ帰ろうとすると、エイリックに呼び止められた。

書斎についていき、そこでお茶を出される。私に付けられていた付き添いも下がるように言われた。

五十代のその女性は避難するようにエイリックを見たが、彼は


「国家に関する話がある。サクラに付き添いは必要無いはずだ。そうだろう、サクラ」


確かに私には必要はない。ポンタや朱雀がいるから。でも、対外的に見てこれは、まずくはないだろうか。

仮にも私は、うら若き未婚の女性だ。

まあ、私みたいなのは、この国では重要ではないだろうけど。

庶民だし。

付き添いが部屋を出るとすぐにエイリックは扉の近くへ行き、扉を開け、左右を確認して戻ってきた。


「サクラ、お願いだ。その朱雀とやらに聞いて欲しい。あの湖に何が潜んでいるのかを」

《おめ、そったらだごともしらねぇで、ここさ住んでるだが。ほんつけねぇな》


結構辛辣な言葉だろうけど、幸いエイリックには言葉が通じない。


「ウッホン。エイリック確かに何か居るそうよ。朱雀、何か教えて」

《良い魔と、悪い魔がいる》

「良い魔? って朱雀みたいなもの?」

《ほんだ。神獣とも違うが、にだようなもんだ。だけんど、悪い魔は悪さしてるみてぇだの》


エイリックの話はこうだ。屋敷は三十年ほど前の領主のもので、その後誰が領主になってもすぐに不幸が起きて領主不在になってしまうという。


そこに目を付けたのはエイリックだった。

ここには魔があるに違いないと王に進言した。

王はエイリックにここの領主になって治めるように命じた。

彼は、そこまでの事は望んでいなかった。


魔があるのなら、国の助けになると素直に言っただけだった。

魔は確かにあるだろう。

湖の色がそれを示している。

朱雀がいた沼と似ているのだから。

突然ポンタが思い付いた、というふうに叫んだ。


《そうか!ここも陸奥の沼も、ナチュラルオイルシープなんだ!》


訳が分からないことはいつものことなので、そのまま朱雀の話を聞くことにする。


《ちょっと!無視しないでってば。あのね、ボクがいた前世では。石油があって、それがここの魔にそっくりなんだ。でも、石油は、精製すると燃える。こののは燃えないで、魔となる。ね、ちょっとだけしか違わないんだ。

でね、石油は掘って取り出すんだけど、たまに自然に出る場所もある。それがナチュラルオイルシープ。分かった?》


「……分かったような分からないような。つまり、魔は地下に眠っていると言うこと?」


《うん、そうだよ、でもね無理に掘り出さない方が良い。ボクの前世ではそれで大変な事になっていた。ここならもっと大変な事になる》


「……そうなの、大変だったのね。で、朱雀この先どうすれば良い?」


《んー。わがそごさいって、たいじしてもいいばって、サクラ、おめでも出来るんでネェが?》


「え? 私が浄化するの」

《んだ。浄化すれば良いだけだはんで》


「そうか、サクラは浄化が出来るんだった。ではそれは浄化しなければ成らないほど穢れていると言うんだな」


《穢れでいるのは……まあ、そんだな――穢れが強いということだな》

「ん? 何と言ったんだ、サクラ通訳してくれないか」


朱雀が飲み込んだ言葉は、私は理解した。

穢れは、魔を取り込んだものすべてあると言いたかったのだろう。


「穢れているって言っている。だから浄化でなんとか出来るみたい。明日で良いかしら。今日はもう遅いし」


「もちろんだ。だが、一つだけ――ここの屋敷にも出るんだ。不可思議なものが」


「うッそー!」







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