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20 ミクロン諸島

ボボは、エイリックが見つけたという魚、マンタに乗せてもらった。

海の中に入ったり浮かんだりするため、二人はほとんど裸だったが、ここは暖かく、肌を撫でる気持ちの良い風が吹いていた。


初めはおっかなびっくりだったボボだが、海を優雅に泳ぐ巨大なマンタは従順だった。

まるで、エイリックの言葉が分かるように感じる。


「エイリック。このマンタに名前を付けただすか」

「ああ、グロースだ。大きくて、美しいから」


魚に名を付けると言う発想が、何ともエイリックらしいと小さく笑い、ボボは海の北側に目を向ける。


そこには大陸が間近に見えた。

ほんの少し進めば陸地に上がれそうな距離だ。

白い砂浜がどこまでも広く続く、不毛の大地だった。


「大陸に上陸するつもりだすか?」

「いや、このまま引き返す。ただ、サクラがまだ兵をしているかもしれない。心配なんだ」


ボボは遠くの砂浜から目を反らし、エイリックに振り返って言う。


「サクラには、早く抜け出せと念を押して来たんだす。もうヤマタイラ国に帰っているはずだす」


ミクロン諸島は、もう帝国へは生徒を送り込んでいない。

帝国との交流は一方的に魔を買うだけだった。

ここの産業らしいものと言えば、漁業くらいだ。そのため、帝国からすれば、ミクロン諸島には魅力がないのだ。


帝国が欲しがるのは、穀物や野菜を中心とした食糧と安全な水。

水は、帝国が抱え込んでいる”空間庫持ち”が運び込んでいるという。

生徒を送らなければ、帝国との交流は全くないのだ。


ボボの国は、魔を見つけた。

エイリックのお陰で、安全に魔をすくい取る方法が分かったのだ。

これからボボの国は、魔法を使う国民で溢れかえることだろう。


だが、帝国への転移は難しくなった。エイリックを直接帝国へ転移させることは、今の段階では危険だ。

国の体制が整う前に動けば、せっかく希少なスキルを授かった国民が、帝国に搾取されてしまうだろう。


「エイリックの国へいったん帰ってから、帝国へ転移するしかないだす。申し訳ない……だす」

「いや、いいんだ。ただ……我が国も、もう直ぐ帝国との縁を切るかもしれない」

「それは……?」


エイリックは、自国でも魔を探し始めていることをボボに告げた。

彼は、もうすぐ国へ帰るという。そしてグロースのことをボボに託した。


「グロースはさみしがり屋なんだ。たまに遊んでやって欲しい」


「いいだす。おいに任せておけ、だす」


ボボはグロースの背中をポンポンと叩いて、嬉しそうに言った。

ここはミクロン諸島では魔の海域と呼ばれていたが、今では”宝の海域”と、影では言われ始めた。

ハリケーンの時期には、魔は海に揉まれてなくなってしまう。

魔は、限られた季節の、凪の日にしかすくい取ることが出来ないため、自国で消費する分しか手に入らない。


だが、「それが良い」とボボは思うのだ。

大量に採れたとしても、帝国に目を付けられる。

あるいは、他の国が来て、ミクロン諸島を我が物にしようとするかもしれない。

今しばらくは、静かに国民を鍛え上げる。だが、数年後には、人的資源として他国へ派遣しようと、ボボは考えているのだ。


ボボの国では、小舟で島を行き来している。

椰子の木を加工して作る小舟だ。木のつなぎ目には蜜蝋を詰め、海水の侵入を防いではいるが、耐久時間が短い。

嵐の日などは、海へ出ることは危険だった。

大洋へなど漕ぎ出そうものなら、たちまち海に飲み込まれてしまうだろう。


だが、今は転移で簡単に行き来出来るようになれたのだ。

転移を持つものは多かった。

そして水、火のスキルも少数ながらいる。

不思議なことに、水の魔法は数種類出来る者も出てきた。

エイリックが言った、”必要とするものを思い浮かべた結果だ”と、その者達は言う。


「いったいスキルとは何なのだ?」


ボボは、中途半端に魔調整学園を出てきてしまったことを少しだけ後悔していた。



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