19 帝国の影
この学園では監察官が常時眼を光らせていた。
王の息の掛かった、魔持ちの官僚だ。
彼らのスキルは、鑑定や、音感知、気配察知だ。絶えず生徒たちの動向を見ていて、希少なスキルを獲得したものは素早く隔離し、帝国が囲い込む。
従わない生徒は処分される。
転移や、言語理解は態と見逃している。それは帝国へ生徒を呼び込むために必要なスキルだからだ。
ただ、どうやれば希少スキルが身に付くかが分かっていなかった。
ハッキリしているのは、砂漠へ行った生徒たちの多くが、水の魔法を使うようになる、ということだった。
水の魔法は確かにありがたいものだが、それほど有益ではない。
攻撃は出来ないし、環境依存のため、砂漠では効率が悪い。
そもそも水の多い国では、ありがたみも薄いだろう。
王は「魔物を倒させるために新兵には、金銭的に優遇している」とうそぶくが、実は、希少スキルを他国に持たせないためでもあるのだ。
何とも心が狭く、狡猾な王だ。
ネフェラはこの状況に、いつも心を痛めていた。
「ラシード、心は決まった?」
「……どうしてもやるのですか。このままではいけませんか」
「なにを言っているの。このまま他国がなにも知らないまま、何百年も従うとは思えない。現に、ミクロン諸島では生徒を寄こさなくなった。あそこは何かを掴んでいるに違いない」
「王に進言したらどうですか?」
「あなた、それでも男なの。仮にも部族長の次代だったあなたが」
「しかし、帝国を敵に回せば、我が部族は根絶やしにされてしまう」
「そうはならないわ。私は、魔法の奥義を見つけた。今あなたにそれを授けて上げる。そうすれば、あなた一人だけでも全軍を蹴散らせる位の力が出せる」
「そんなこと……あり得ない……」
***
「魔の属性はね、六つあるの。皆が身に付くスキル、あれはすべて属性に分類できる。これはどう言うことか分かる?」
「……いえ、まったく私には分かりません」
「あなたは火を噴き出させる事が出来るわね。でもそれだけではない。色んな火の魔法が使える、ということよ。学びさえすれば、武器となる強大な火の魔法が放てるようになる」
「火のスキルが、増えるということですか?」
「そう、火に関するものなら出来るでしょう。例えば身体強化もそうなのよ。他に分かっているものでは、熱操作というのがあったわ」
「炎撃以外も使えると……?」
ラシードは、ネフェラの研究してきたことを初めて知り、震えが走った。
――では、逆に考えれば、気配察知というスキルを持つ者も、もしかすると、”風”とかに分類されてしまうのか。
今まで、一人に一つのスキルしか身に付かないと言われていた常識が、覆されたことになる。
だとすれば、これは魔法の発展に繋がる、大発見ではないのか。
ネフェラが、「でも」と言い添える。
「でも、どうして同じ属性のスキルがバラバラに身に付いてしまうのか……そこが分かっていない。そこには法則があるはずなんだけど……」
ラシードは、とにかく自分で試すしかかないと心に決めた。
もし身体強化も使えるなら――炎撃を持つ自分は無敵になれるのではないのか。




