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14 ヤマタイラ国

私は今、帝国の転移の間にいた。

この国に来た時から三年が経ち、私は十五歳になった。

ここには他に五人いた。見たことがない同郷の生徒だった。


「あら、あなたもう帰るの? まだ十五歳くらいでしょう。魔に馴染めなかったの?」

「……そんなところです」


彼女や彼らは十八歳くらいだ。魔調整学園を特待生枠で卒業したのだろう。

部屋の真ん中がピカッと光りそこに、四十歳くらいの男性が立っていた。


「さあ、帰国だね。こっちへ集まって。おや、君も帰国するのか? まだ早くないか?」

「いえ、ついて行けそうにないので……帰りたいです」

「そうか、では行くか」


またピカッとして、目を開けると、見覚えのある空間だった。


――やっと帰ってこれた。


私は、あまりにもホッとして目眩がした。


「大丈夫か。変だな転移酔いか?」

「いえ、やっと帰れたので、気が緩んだんだと思います」

「そうか。早く親御さんに会いたいだろう。このまま帰っていいぞ」

「はい……」


三年前にパパと一緒に歩いた道を逆に辿り、官庁街を抜ける。


「お金足りるかな……」


私の街と、この首都は馬車で一時間かかる。歩くとなれば結構な距離だ。

それでも乗り合い馬車には乗らず、途中の店で団子を買い、てくてくと歩き出した。

街を抜けると一面の田んぼが広がっている。

稲穂が頭を垂れていて、もう直ぐ刈り入れの時期のようだ。


「いい匂い。空気が柔らかい……」

《そうだね、いい匂いだ。”日本”の臭いがする》

「え……ポンタ……」


いつの間に潜り込んだのか、ポンタがリュックの中から顔を出している。


「ちょ、ちょっと。どうやって入ったの、大きさがおかしい」


そうなのだ。私のリュックは小さい。あちらで準備してもらった物はすべて置いてきたのだから。

小さなリュックにポンタが入る余地はないはずなのに。


《リュックには入ってないんだ。これ影の中に入っているの。すごいでしょ》

「でも、検閲が……あの時もいたってこと?」

《そうだよ、ずっと一緒にいた。サクラが置いてきた荷物も全部持ってきて上げた、ほら》


ポンタが黒い空間を出してそこに手を突っ込むと、置いてきたはずの新兵の服やブーツが次々と出てくる。


「いったい、どうやったのこれ」

《アイテムボックスだよ。知らないのか? この世界ではないのかな……》


「あいてむ……もしかして空間庫とかそう言う物なの? すごいわ、今まで身に付いた人はごく僅かだって聞いた。ポンタ、あなた何者なの!」


《ボクは、ボクだよ。良い魔だって言っただろ。まあ、その内もっとすごいことが出来る様になるさ。期待してていいよ》


何となくうさんくさいが、仕方がない。ここに置いていくわけにもいかない。そのまま、道なりに歩いて帰ることにした。だが、ポンタは、


《せっかく転移ができるのに、使わないの?》


というのだ。

転移なんか続けて使えば気を失ってしまう。


「私の転移は少ししか進めないの。歩いて帰る」


ポンタは鼻をヒクヒクしながら周りを見ている。そしてたまに変なことを呟く。


《文明が後れている。百年くらいは後れていそうな異世界だ》


私は頭をかしげながら、聞こえないふりをして先を急いだ。

私の街が見えてきた。疎らだった農家の家々が段々密集してきて、懐かしい我が家の通りに差し掛かってきた。

辺りは薄らと夕闇が迫ってくる時間、やっと家の前に着いたのだった。


「パパ! ママ!」


ばあやが出てきて目を丸くする。


「まあ、お嬢様、お帰りなさいまし……でも、あと数年はお帰りにならないと聞いていましたが」

「もう十分学んだから……早く帰ってきたの。パパは?」

「今取引先の招待で、奥様と出かれられております。しばらくすれば、お戻りになられます」


ばあやに足を洗ってもらい、家の中へ入った。

あとからポンタが、何食わぬ顔でついてくる。


「おや、猫……?」

「ええ、帝国の猫なの。これから飼うことにする。餌は……ポンタ。魚がいいかな」

《……》


ああ、そうだった、言葉を話せば騒ぎになるものね。あとで何が良いか聞くことにしよう。今は、ゆっくり眠りたい。

部屋に入ると、私が出ていったときのままだった。

窓際には花が生けられている。


「ママが、生けておいてくれている。相変わらずね」


布団を敷き、ごろりと横になる。


《ねえ、ねえ、サクラ》

「うーん。なあに」

《なんで玄関で足を洗ってもらうの? シャワーを浴びればいいのに》


「シャワーね、それは御大家しかない。ここは庶民の家なんだから。外から帰ったら足を洗うのは常識でしょ」

《そうなんだ……》


ポンタがたたみをクンクン嗅いでいる。


「何しているの、ポンタ」

《すごい、たたみってこういう臭いなんだ。ボクの団地には畳の部屋がなかったから……》


ポンタの家、ですって! どこかに住んでいたの? 魔が?


***


ボクは、前世十二歳で死んだことを思い出した。名前は……やっぱり思い出せないけど。

塾の帰りに友達とふざけて、橋の欄干を歩いていて川に落ちたんだ。

泳げないぼくは溺れ死んだ。

サクラの世界はまるで、テレビで見た明治時代みたいだ。

でも魔法がある。こっちの方が絶対面白いに決まっている。塾も行かなくて良いし、うるさく「勉強しろ」とも言われない。

ただ、魚は嫌だな。お肉がいい。ピーマンも辞めて欲しい。

***


私は帰宅したパパとママに事情を話した。

パパは怖い顔をして震えていた。


「何と言うことだ。危うくサクラを死なせるところだった」


「パパ、でも、私魔法が使えるようになれたの。エイリックという親しくなった生徒から聞いたんだけど、とても希少な魔法らしいの。国に申告しなくて良いの?」


「構わないだろう。国からはびた一文援助してもらっていない。自分の金で行かせたんだ」


そうなんだ。怖かったけど、今となれば良かった。

国に囲われてしまえば、自由がなくなる恐れがあった。

おまけに、転移まで使える様になってしまった。それにおかしな魔物もどきまで、ついてきてしまった。 「エイリックは、国王に進言できたかしら」





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