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13 帰国

エイリックは故郷へ帰ってきた。

エイリックの国プロイスタンは、ユーライヤ大陸の北に位置している。

冬は長く、夏は短いが、作物は豊富に採れる。

寒さに強い麦や、かぶ、ジャガイモなどだ。農作物が主要な産業で他には漁業も盛んだった。


豊かとは言えないが、住みよい国だと彼は思っている。

自国特有の爽やかな緑の空気を胸いっぱいに吸い込むと、安堵と共に緊張が身体を走る。


「国王に、まずはお目文字しなければならない」


エイリックは、サクラと共に発見した驚くべき事実を、まずは国に報告しなければならない。

その後、スベル・ノルベルトの実家、ノルベルト伯爵の元へ行って、沙汰を仰ぐ。


「伯爵は、私を見てもお気を悪くなされないだろうか」


気の短い伯爵のことだ、もしかすると処罰されるかもしれない。

主君が死に、おめおめと帰った私は従者としては失格と見なされる。

転移の間から、ゆっくりと通路を歩き、王宮への道々考えながら歩いていたエイリックに、声を掛ける者がいた。


「やっと帰ってきただすな」

「っ、ボボ! いや、ボボ殿下。なぜこの国へ?」

「は、は。エイリックに会うために決まっているだす」


ボボは、ミクロン諸島へいち早く帰国していた。

しばらく調査をし、ある事実を掴み、エイリックに会うためにここで待っていたという。


「おいは、君にも手伝って欲しくて、この国の国王と面談していただす」

「私も、サクラと共に、ある事実を持って国王に進言しようと考えている」

「丁度良かっただす。例の伯爵のことは、もう手は打っておいただす。心配は無用だすよ」


伯爵は、王に呼び出され、しっかりと釘を刺された。

それまでは、エイリックを待ち構えて「なんとしてでもこの手で処分してくれる」と息巻いていたそうだ。


「父上は、大丈夫だったのか?」

「減俸されていたようだす。これも王にたしなめられただす。今は騎士隊に移動しているそうだす」


――そうだったのか。転移の金が工面できず、実家とは連絡が取れずにいたが、これで安心した。


王は謁見の間ではなく、個人的な私室にエイリックを招き入れた。

ボボからの話を前もって聞いていたため、重大なことが話されると予想していたようだ。


「エイリック。其方が見つけた事実とはなんだ。挨拶などいい、疾く話してみよ」

「はっ。帝国は事実を隠蔽し、新兵を使い潰している節があります」

「……詳しく話してみよ」


エイリックは、これまで知ったことを王に話した。

サクラと行った、魔が湧き出す泥で見たもの。そして精製の方法。また、唯一と言われていた魔の湧き出す場所は他にも見つかる可能性を、だ。


「其方ら二人だけで砂漠を探し回ったと申すか。では、その洞窟から魔物が湧き出すのを見たのだな」


「はい、見ただけではありませぬ。魔物は生まれたては弱々しく、簡単に処理できます。ただ、その後息が苦しくなり、火を付けると爆破が起きました。帝国はこの作業を精製と呼び、自国の兵にも知らせないために、放置していると、私は見ております」


「すごいことを発見したな。では深く聞こう。我が国にも魔が湧き出す場所があると思うか」


「自然に湧き出す場所となれば……何とも言えませぬ。しかし、魔は地下深くから染み出るとすれば、もしかすればあるやも知れません」


「もし見つかれば、これまでのように帝国に頭を下げずとも良くなる。よくやってくれた、褒美を取らすぞ、エイリック」


「いえ、もう一つご報告が御座います。これは、サクラというヤマタイラ国の生徒が立てた仮説ですが。魔は魔物を倒したとしても身に馴染まない。魔法、もしくはスキルを限界まで使う事により成長するのではないか、というものです。事実私も、水の魔法の使い道が進化いたしました」


「……魔素調整学園までが、隠蔽に加担していた、そういうことだな!」

「それは断言できません。しかし、これは自分の体感で知りました」


王はすぐに動き始めたようだ。国内に調査隊を組織し、魔を探し始めた。

エイリックは、ボボと静かな一時を過ごしている。

ボボが泊まる王宮の貴賓室に招かれ、今後の予定を話し合う。


「おいの国にも魔が湧き出しているのが分かっただす」


それまでは、知られていなかったのは、海底から湧き出していたから、だそうだ。

その海域は普通では考えられないほど大きな魚や海藻が見つかる。

しかし魚や海藻は、凶暴だというのだ。


「大陸に一番近い小島だす。昔は大陸とミクロン諸島は繋がっていたのではないかと、学者は言っているだす。おいにはそんなことより、どうやれば海底から魔を取り出すかが悩みの種だすよ」


確かにそうだ。海の中では難しいのではないか?


「それを私に手伝えとは……無理ではないか。魔物ならば倒しても良いが」


とにかくエイリックは助けになるのならばと、ボボに同行することを承諾したのだった。

――サクラがいれば、何かいいアイデアをもっているのにな……。





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