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11 ポンタ

ボクは、ポンタと呼ばれ始めた。


《ポンタだなんて嫌だ。もっと格好いい名前が良かった》


だけど、今はボクのことを知られてはいけない気がする。

やっと地上に出られたんだから。魔物と認定されて、あのらくだのように始末されてしまうかもしれない。

ボクは一体、何万年、石の中にいたのだろう。


時間の経過はまったく感じられない自我だけの存在でいたため、今は、この獣の身体に慣れるのに精一杯だ。

ここに転生する前のことはぼんやりと覚えている。


死んだときの記憶もある。

ただ、昔の名前は思い出せないでいた。

ボクは石の中からゆっくりと染み出してきた。


地上の空気がボクの意識を刺激する。

ボクの周りには、自我を持たない蠢く物が数百も漂っている。

たまにボクにへばり付こうとしてくるけど、ボクの自我は揺るがない。

自分をしっかり囲って、誰にも影響させないつもりだ。


踏ん張る! ひたすら踏ん張って耐えている。

大きな命がいっぱい飛び込んで来た。それでもボクは動かない。

周りのドロドロは大きな命に取り憑いて次々とここから抜け出していく。


《あれ、ボクだけ取り残されてしまった》


すると、小さな命が飛び込んで来た。ボクは《今だ!》と叫んで……心で叫んで取り憑いてやった。

やったぞ。身体を手に入れた。

ボクの身体はなぜか、怖くなると緊張して固まる。

そして周りから生き物が遠ざかっていく。なぜだろう。


昨日……時間の感覚が戻った……昨日、女の子がボクを抱き上げて連れて行ってくれた。

嬉しかったけど、名前が「ポンタ」だった。


***


「ポンタ、今は臭わないのに、あの時は本当に臭かったね」


酷い言われようだな。臭いだなんて失礼だろう。

本当に臭かった……のかな。

こそっと、自分の足を嗅いでみる。いつもの安心する臭いだ。うん、問題ない。


ボクは、オポッサムという獣に乗り移ってしまったようだ。

確かオポッサムには”死んだふり”が得意な動物だったはず。

そうか、身体が勝手に擬態して、危険から逃れようとしていたのか。

これは自分の意思で左右できるものではなさそうだ。生存本能ってヤツだろう。


この少女は、転生前のボクの世界にいた人と同じ顔つきだ。

また、日本に生れたのだろうか。でも、日本にはオポッサムはいなかった。動物園のオポッサム?

でも、ここの気候は日本とはまったく違う。


この子がここに旅行してきているのか? 話す言葉は日本語ではないような気がするけど、今のボクでは分からない。

お、イケメンが来た。女の子を「サクラ」と呼んでいる。


イケメンは「エイリック」と言うらしい。

二人はカップル? それにしては少し距離感がある。

エイリックはもう直ぐ国へ帰ると言っている。


「プロイスタン国」だそうだが……そんな国、なかったよな。


え、もしかして異世界転生した? 魔法が使えるかも!

ボクは、自分の中を探ってみた。「なんかある」

もやもやとした黒いものと光ったものが、あるような気が、しないでもない。

誰も居なくなったすきに試してみることにする。

《魔法と言ったらまずはこれだろう。アイテムボックスーッ!》





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