6-5:謎の青年ブレド登場 その2
「マーガレット、大丈夫か!?」
「は、はい」
駆けつけてきた第一王子は私と私に絡んできた変な男の間に入って私を庇う様に前に立ち塞がった。
これって多分、私が第一王子に助けてもらった状況なんだよね?
だけど、それがわかった上で相手が見るからに帯刀している事もあり、私はむしろ助けられた事よりも第一王子の身を案じてしまう。
どうしよう?
この場の私が助かったところで第一王子にもしもの事があったら、私だけではなく実家諸共責任を取らされて大変な事になってしまうし。
そうなるくらいなら、いっそ私一人が犠牲になる方がまだマシな状況。
でも、さっきブレドって相手の名前を呼んでいたし、二人はもしかして知り合いなのかな?
「すまない、マーガレット。彼は少々記憶が欠けている状態でな、時々こうして変な事をしでかすのだ」
「そ、そうでしたか」
「何か危ない事はされなかったか?」
「いえ、突然匂いを嗅がれてビックリしただけです」
第一王子は私の言葉を聞いて顔に手を当てて困った様な仕草をし、そしてブレドと呼ばれていた青年の方を見る。
「ブレド、それで何か思い出せたか?」
「すまない、第一王子。迷惑をかけてしまったな」
「駄目だったのだな。まったく、通りすがりの女性に、特に私の義妹に対してそういう事はしないでくれ。貴様とて記憶を取り戻した時に今の行いを思い出せば、恥ずかしくなるはずだ」
「そうだな。では、私は邪魔な様なので失礼する」
ブレドと呼ばれていた男は第一王子との雲を掴めない様なやり取りの末、歩いて何処かに行ってしまった。
「行ってしまいましたけれど、何なのですかあの方? 記憶が欠けているとの話でしたが」
「それが、私にもよくわからないのだ」
第一王子にもわからないって。
「実は父上……陛下が突然連れて来て、しばらくここで住まわせると言い出したのだ。何でも話によれば旧友の息子だとかで、事故で両親を亡くした上に自身もその事故で記憶を失っているという事で、少なくとも記憶が戻るまではここで面倒を見ると」
「そうでしたか。それはお気の毒に」
「私も気の毒だとは思うのだが、先程の様な行き過ぎた行為はどうもな」
「いえ、私も少し驚いただけですので、どうかお気になさらず」
とりあえず、変質者じみている事には変わりないけれど、危ない人ではないみたいなので一安心かな。
「ところで、マーガレット。今日はまた弟に会いに来てくれたのか?」
「いえ。これから、厨房に向かうところでして」
「そうか。では、折角だから義兄である私も同行しよう」
ううっ。
謎の変質者からは逃れられたけれど、隙あらば義妹とか義兄って言ってくる第一王子もやっぱりチョット変な人かも。




