5-3:今度こそ第二王子に食べてもらう その3
こうしてまた第二王子の部屋にまで来る事ができたのだし、今度こそ少しでも仲良くならないと。
前回の時とは違い今回は料理も気に入ってもらえたし、公爵令嬢のロジーナ様とピオーネ様もいる。
だから、今回こそ!
「あの、第二王子?」
「ん?」
とりあえず話しかけてはみたけれど、先に続く言葉が思い浮かばない。
今日まで料理が気に入ってもらえる事ばかり考えていたせいで、いざ会話するとなると一体何を話せばいいかが出てこないのだ。
というか、何で第二王子と話したい事を事前に考えておかなかったの、私!?
そもそも殿方と仲良くなる時って何話せばいいの?
あーもう、これまでも第二王子を痩せさせる事で頭が一杯だったせいで全然思い浮かばない。
でも、いきなり痩せる事についての話題なんてのはちょっと急過ぎる気がするし。
うーん、うーん、ダメだあ。
いっそ、私が好きな事の話とか。
でも、私が好きな事って食べ物の話題だし。
そ、そうだ!
「あの、第二王子のお好きな食べ物って?」
私が何とか知恵を絞って出したのが、好きな食べ物についての話題だった。
考えてみたら、料理を出すにしても痩せさせるにしても一番重要な話題だし。
うん、とっさに考えて出した話題だけどこれは正解かも。
「肉だな。だが、美味いものは基本的に好きだぞ」
「は、はいッ! でしたら、次も第二王子がお好きな肉料理にしますね」
「えっ、次? お、おう。肉料理なら仕方ないな。食べてやらん事もない」
よ、よし!
とりあえず、会話の第一歩は何とかなった。
それに、口約束ながら次の約束もできたし。
第二王子と会話できた事に私は満足し、そして一安心する。
だが、そんな私と第二王子との会話を聞いて、公爵令嬢のロジーナとピオーネが口を挟んできた。
「あのさ、マーガレット。『第二王子』呼びはちょっと固いんじゃない?」
「そうそう。婚約者なんだから名前で呼ぼうよ」
「えっ? あ、あの?」
「ほら、恥ずかしがらずに」
「第二王子にはライジェルって名前があるんだから、ちゃんと名前で呼んであげなきゃ」
私は、ロジーナ様とピオーネ様のその言葉に戸惑ってしまう。
実のところ今まで第二王子の名前なんて気にした事も無ければ知る由もない。
婚約なんて事にならなきゃまず近づく事のなかった存在だし、これまでその名前に触れれる事が無かったせいだ。
でも、確かに第一王子を含めた王城の人たちは第二王子の事をライジェルと名前で呼んでいるし、公爵令嬢のロジーナ様とピオーネ様もそう呼んでいる。
だから、一応正式に第二王子の婚約者として公表されている私が第二王子の事を名前で呼ばないのも変かも?
う、うんッ!
私は意を決して呼んでみる事にした。
「ライジェル様。そう、お呼びしてもよろしいでしょうか?」
「す、好きにしろ!」
な、何か流れで第二王子の事を名前呼びする事になってしまった。
でも、これで少しでも距離が縮まって仲良くなれれば。
私は、困惑しつつも少しだけ喜びの気持ちが湧き出て顔がにやけそうになってしまう。
だが、それも第一王子が発言するまでの束の間の事だった。
「そうか、マーガレット。ライジェルの事を名前で呼べるようになるまで成長したか」
「は、はいッ!」
「では、その調子で是非とも私の事を義兄と呼んでくれないかな?」
その場にいた、第一王子以外の全員が凍り付いた。




