4-6:料理用のお酒 その1
翌日、私とワカニャは料理に使うお酒を買いに街へと出向く事にした。
昨日初めて作ったモヤシ料理が今一だったので、お酒の力を借りて今度こそ成功させたい。
「ねえ、マーガレット。街へはよく行くの?」
「ええ。お買い物は楽しいし。特に美味しい物とか美味しい物とか」
「買い食いはダメだからね!」
「……はい」
まだ痩せるために頑張り始めたばかり。
こんな最初から諦めてはお父様に合わせる顔が無いし、何より家の未来がかかっているのに投げ出してしまう自分が恥ずかしい。
だから、ここは我慢しなきゃ!
そんなわけで、街で売られている美味しい食べ物への誘惑に抗うため、街で他に売られている商品には目もくれずに、私たちは酒屋へと向かう。
「すみませーん」
「!? マーガレットお嬢様ではないですか。こんなところにどうして?」
「今日はお酒を買いに来ました」
「!! 駄目ですよ! お酒は二十歳になってからです!」
酒屋に出向いて早々、店主にお酒の購入を断られてしまう。
あっ、そっか。
国の法律で二十歳にならないとお酒が飲めないって事は、二十歳じゃないとお酒は買えないかもしれないって事なんだ。
ど、どうしよう?
折角、ここまで来たのに。
このままだと、お酒を売ってもらえないかも?
困ったなあ。
これは飲むのではなく料理に使うためのお酒だって正直に説明しても信じてもらえないだろうし。
うーん。
何か、いい考えが無いかなあ?
14歳の私がお酒を買う不自然じゃない理由。
そ、そうだ!
「ごほんッ。じ、実は庶民の生活を調査する課題の一環で、庶民が普段飲んでいる一番安いお酒が欲しいのです」
「そういう事でしたら売り場をお見せしましょう。ささ、こちらに」
「ありがとう!」
よし、これで上手くいったかも。
「でも、飲んだり買ったりするのは駄目ですからね。14歳のお嬢様が飲酒なんて事になったら、私はファーレネイド伯爵様に殺されてしまいます」
「……はい」
だ、ダメだったー。
でも、さっき店主さんにああ言ってしまった手前、今更売り場を見せてもらう話は断れないし。
仕方なく、私は売り場を見学する事にした。
「こちらが、普段庶民が買っているお酒。そして、こちらが普段貴族に販売しているお酒です」
「ほへー。そうなのですね」
ち、違いが瓶の装飾くらいしか分からない。
外見を見せられただけで中身、特に味を比べた訳じゃないし当然の事ではあるけれど。
だがしかし、値段を見て私は驚いた。
少なくとも100倍以上違う。
早まってお父様のお酒を料理に使うなんて真似をしなくて、本当に良かったと思うくらいには高い。
「マーガレット、この庶民用のお酒だよ」
ワカニャから返事をもらえたけれど、目の前に酒場の店主がいるので話しかけられない。
とにかく、モヤシを使った料理を美味しくするにはこのお酒が必要だという事はわかったけれど、どうやって手に入れよう?
「あの、本当に一本だけでいいので調査のために売ってもらえないでしょうか?」
「駄目です! 何度頼まれても14歳のマーガレット様にお売りするわけにはいきません! 本当に調査と言うのならばマーガレット様の御父上であらせられるファーレネイド伯に頼んで、使いの者に買いに行かせてください」
確かに!
何も私が直接店まで出向いてお酒を買いに行く必要なんて最初から無かった。
ああ、何で今の今まで思い浮かばなかったの、私?
「分かりました。では、後ほど改めに使いの者をこの店に向かわせますので、その時は売ってくださいね」
「……ちゃんと、二十歳以上の人でお願いしますよ」
一時はどうなるかと思ったけれど、とりあえずこれで料理に使うお酒は何とかなりそう。
後は、お酒が手に入ったらモヤシを使った料理に再挑戦するだけ。
今度は美味しくなるといいなあ。




