3-3:学校で話題の人に その2
昼食の時間になると、私の食事風景を見るためにクラスの女子たちが私を取り囲む。
そして、その状態でそのまま学食に向かうと騒ぎを見た男子たちまで物珍しそうに集まってしまう事態に。
「そ、そんなに注目されても、面白いものじゃないんだけど」
「いいから、痩せる秘訣見せなさいよー」
「ううッ……」
何か緊張するなあ。
クラスの皆が注目する中、私は学食の料理をトレイの上に乗せていく。
王都の学校の学食は、用意されている料理を自分で皿や器に好きなだけ盛っていいシステム。
以前の太っていた私ならば野菜には見向きもせずに肉やパンを中心に山の様に盛っていただろうけれど、今はそんな事はしない。
私は、とりあえず人参とキャベツのサラダを器に盛る事にした。
「サラダ、こんなに食べるの?」
「ええ、これくらい食べないとお腹空いちゃうし」
「へー。マーガレットって意外に食べるんだ」
普通の人よりかはサラダを沢山食べているのかもしれない。
けれど、それはパンの量を減らすため。
その後、温菜や肉の料理を適量皿に乗せ、次はいよいよパンの番。
私は沢山用意された少し大き目のロールパンの中から2個だけを皿に乗せ、それをクラスの皆がマジマジと見ていた。
「えっ、それだけ?」
「パンはあんまり沢山食べると太るから」
「でも、それだけだとお腹空かない?」
「大丈夫、その分サラダを沢山盛ったから」
食べるロールパンの数が少な過ぎると思ったのか、クラスメイトの一人が心配そうに聞いてきたので、私はそう受け答えした。
確かに、ワカニャに指導される前の私ならばこの大き目のロールパンを4個は皿に乗せていたでしょうね。
でも、今はそんな事はしない。
「で、では、席に着いて食べるから」
昼食分の料理を全部取り終えた私は、皆に見られて緊張する中いよいよ食べる段階に。
私は皆が見やすいように大テーブルの真ん中くらいの位置に座り、その周りをクラスメイトたちが取り囲めるようにする。
そして、まずはサラダから食べる事にした。
「えっ、マーガレット。今サラダにかけたのは?」
「今度、実家の領内から他領に向けて大々的に発売する事になった胡麻ドレッシングです」
そう、私が使ったのは学食でサラダを食べる時用に持参している胡麻ドレッシング。
持ち歩いている最中に傷まない様に保冷の魔法をかけた瓶の中に入れている。
私が初めて胡麻ドレッシングを使ったのは二年前のあの日。
後で分かったのだけど、実はあの時本来使用人の間で食べるはずだった試作段階の胡麻ドレッシングが、私の急な要望で間違って私の食卓に出されていたとの事。
あの日の一回きりで胡麻ドレッシングが食卓に出てこなくなったのでうちの使用人に聞いたところ、この事情が発覚した。
そして、そこから伯爵令嬢である私のお墨付きで量産化を進めて二年、うちの地域の新たな名産品として全国販売するところにまで来ており、それ故に私は販売宣伝用の胡麻ドレッシングも持ち歩いている。
「よかったら、皆も試してみる?」
折角だから集まっているクラスの皆にも試してもらおう。
丁度いい宣伝の機会だし。
「えっ、いいの?」
「私も、私も」
「お、俺もいいか?」
私の食事を観察するのに集まっていた女子たち。そして、その様子を後ろから眺めていた男子たちが胡麻ドレッシングの入った瓶を使い回し、各々全員がそれを学食のサラダにかけて食べる。
「美味しー!」
「いけるな、これ」
「いいじゃん。もしかして、これが痩せるための秘訣なんじゃない?」
胡麻ドレッシングが好評過ぎたのか、私の食事を観察するという目的は何時の間にか何処かに行ってしまっていた。
一応食事はこれからなんだけど、もはや誰も私の事を気にしていない。
皆、胡麻ドレッシングに夢中になってしまっている。
でも、それだけ胡麻ドレッシングが魅力的という事。
宣伝目的としては十分だし、この調子だと沢山売れてくれそう。
胡麻ドレッシングの予想以上の人気に私は安堵した。




