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黒姫の奴隷勇者  作者: 分福茶釜
金の王女の襲来
16/21

選択と勇者

『白ヤギ・黒ヤギ』

 黒ヤギさんからお手紙着いた。白ヤギさんたら読まずに食べた。仕方がないからお手紙書~いたさっきの手紙のご用事なあに♪

 白ヤギさんからお手紙着いた。黒ヤギさんたら読まずに食べた。仕方がないからお手紙書~いたさっきの手紙のご用事なあに♪


 さて、どっちのヤギが悪いと思う?

 ピーヒョロロロロロ

 鳥の鳴き声が聞こえる屋敷。まだ朝も明けきらない、薄い霧がかかっている外で一人の女性がイスに座って、食事をとっている。ナイフとフォークを器用に使い、静かに料理を口に運ぶ。


「何でわざわざ外で飯食ってんだよ」


 そんな彼女の傍で俺は何をするわけでも無く立っている。少し寒い……


「お嬢様の決められたことに文句を言うのは感心しませんね」


 俺の小言に答えたのは、彼女ではなく彼女に仕える使用人エミリア。竜人族というけた外れの強さを持つ魔族なんだとか。濃紺の髪に燃えるような赤の瞳を持つ女性の姿をしているが……騙されるな。本当の姿は森の熊を何十頭も合わせたほどの巨体と重量感を持つ恐ろしいドラゴンだ。


 俺とエミリアが険悪なムードになっているとそれまで無言で食事をとっていた王女は屋敷の横に広がる森林へと目を向ける。


「お嬢様どうなされました?」


 王女は答えない。森を静観している。


「いったいなんだって……」


 疑問に思って声をかけるとそれを王女にさえぎられた。静まり返った辺りには鳥の鳴き声もしない。……おかしい。さっきまでさえずっていた鳥の声が聞こえない。何かあったのか? 

 突如ミシミシと木を押し倒す音が聞こえ、視線を向けていた森林地帯からぬっと、巨大な魔物が現れる。……身長は俺の倍以上ある。牛の様な顔で鎧に包まれた屈強な体を持っているその魔物は、正直正面で対峙していると相手の威圧で自分の体が押しつぶされそうで冷や汗が流れてくる。そんな相手を見て、俺とは対照的に王女は小さな笑みを浮かべると素早く黒い霧の様な魔法で弓矢を作りだす。

 王女は無駄のない動きで弓を引くと思い切りそれを放った。


 バキリ。

 そんな音を立てて、放たれた弓は魔物の体に当たった瞬間折れてしまった。折れた矢は黒い霧に戻って消える。……王女の放った弓は間違いなく魔物の頭を狙っていた。一番そこが皮膚が露出し最も守りの弱いところだったからだろう。矢は果たして魔物の頭に直撃した……筈だった。しかし魔物の頭を打ちぬくことは愚か、逆に矢が折れてしまった。


「なっ、おかしいだろう!? 石頭にも程が……」


「ふふん、おそらく奴はミルトンの形を真似た人形。おそらく我が妹の刺客だ」


「ミルトン? 妹? ……訳分からんぞ!?」


「貴様には関係のないことだ。今は奴を倒すことに専念せなばならん……エミリア!!」


 王女の呼びかけとエミリアが行動を起こすのはほぼ同時だった。目にもとまらぬ速さでミルトンという魔物の背後に回った彼女は強烈な蹴りを入れる。華奢な彼女の蹴りが巨大な魔物に効くのかと言えば……すごく効いた。屈強かと思われたミルトンの体はエミリアの蹴りによって地面に叩きつけられる。


「よくやった、エミリア」


 王女は倒れたミルトンが体を起こす前に巨大なハンマーで頭を叩き潰した。




***




「……やっぱり人形なのか?」


 王女が頭を叩き潰したミルトンの体からは血が出ていないばかりではなく、肉が飛び散ることも無かった。バラバラと卵の殻のようにミルトンの頭は崩れ落ちピクリとも動かない。まるで壊れた人形だ。


「んで、一体なんだって言うんだよ?」


「ミルトンは牛魔人とも呼ばれる凶悪な魔物でございます。おそらくこれはそれを真似て作られた人形なのでしょう」


「いや、俺が聞きたいのはそれじゃなくて、妹がどうのこうのって奴なんだけど……」


 エミリアの微妙にずれた回答は置いといてだ……妹の刺客ってどういうことだ?しっかりと説明してもらわないとならない。……このまま訳も分からずこれ以上厄介事に巻き込まれるのはごめんだ。せめて何が起こっているのかぐらいは知りたい。

 珍しく真面目な表情で、王女に視線を向けたのだが俺の顔を見ると非常にめんどくさそうに表情をゆがめた王女は、踵を返し屋敷の中に戻っていく。


「ちょっと待てよ!!」


 背を向けた王女はそのまま俺に一度も振りかえることは無く屋敷へと入って行った。


「一体なんだってんだ、訳わからん」


 頭を強く掻きむしる。分からないことが多すぎてイライラする。一体なんだって言うんだ。魔物の世界に深くかかわるつもりはないが……何だろうこの感情は。モヤモヤする。


「……ご説明しましょうか?」


 エミリアがぽつりとこぼしたその言葉に俺は喰いついた。それはもう思いっきり。分かった。このモヤモヤする感情は……恐らく……多分だが………………野次馬根性だ。


「頼む!!教えてくれ!! 一体何が起こってるんだ?」


「彼方がお嬢様の真の家臣になると誓うならお教えしてもよいですが?」


 は? 真の家臣?どういうことだ?また謎が増えたじゃないか……どうしてくれる!!


「つまり私は、お嬢様と正式に隷属契約を結んでほしいと申し上げているのであります」


「は? 言ってる意味がよくわからないんだけど……」


 正式も何も、俺は王女に強制的に隷属関係を結ばれているのだ。逆らえば目に強烈な激痛が走る。それが何をいまさら……正式な隷属関係?そんなもん結んだら現状がより悪化するのでは?……だめだ、どうしよう……


 お読みくださりありがとうございます。

 今後もどうぞよしなに~

 感想ご指摘なにかございましたら御気軽にどうぞ。

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