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黒姫の奴隷勇者  作者: 分福茶釜
金の王女の襲来
15/21

帰宅と勇者

「お……お前一体どういうつもりだ!?」


 かすれる喉で必死に声を絞り出す。そんなことをしても全く意味がないのだが……


「どういうつもりって……こんな状況ですることと言えば一つだけじゃない?」


 ころころと笑うこいつはルシエール。薄暗い部屋で彼女の銀色の髪を持った涼しい眼差しを持つ魔物だ。そして今……こいつに色々な意味で俺は襲われかけている。非常にまずい。


「ぐっ……はなっ……せっ!!」


「あら、そんなに嫌がることないじゃない。……まっ、すぐに気持ち良くなるわ」


 そう言いながら、自分の服をわざと乱して俺に迫るルシエール。全く体が動かない状態では彼女に反撃するのは愚か、逃げることもかなわない。

 遠くで魔物の悲鳴が聞こえた気がした。そして今度は確実に近くで起こったと思われる爆発音。

 やはりこんなところについてくるものではなかった。……どんなに文句を言われようと頑なに拒否して屋敷で留守番をしているべきだったのだ。町で悲鳴や爆発音が聞こえ、よくわからない者に無理やり襲われるこんな場所に……何で俺は来てしまったのか……

 ギュッと目を瞑る。現実逃避だ……何の解決にもなっていないが。俺の顎に手が添えられた。顔を近づけて来たのだろう、ルシエールの吐息が顔にかかる。……ああ、俺はこんな場所で正体不明の魔物に喰われてしまうのだろうか……さようなら俺の大事な何か……


 俺が覚悟を決めるのとその爆発音が起こるのは同時だった。

 ひと際大きな爆発音とともに、壁が崩れた。……壁が崩れた?ちょい待て。なんともデジャビュな感じがするんだが……たしかあれは魔王城の地下牢獄で……


「何をしているのですか?」


 声のした方に勢いよく顔を向ける。崩れたがれきで煙が立っていてその人物の顔は見えない。しかしこの声……そしてこんな常識はずれなことができるのは……


「エミリアか!?」


 しばらくして煙が晴れると、まさしくそこにはエミリアがいた。赤い瞳がこちらを見つめている。


「あら、随分と品のない登場ですこと。……せっかく良いところでしたのに」


 ニコニコとしながらエミリアへと続けるルシエール。


「……まさか彼女なのかしら? それとも奥様?」


「断じて違います、そもそも俺、壁破壊するような女と付き合えません」


「あら、じゃあ一体どういう関係なのかしら?」


 しつこく聞いてくるルシエールにそれまで黙ってこちらを静観していたエミリアが口を開く。


「知る必要はないことです。さあ、そこの男は返してもらいましょうか?」


「あら? 妻でも彼女でもないあなたにどうして渡さなくてはいけないのかしら?」


 挑発的な笑みを浮かべるルシエール。それに対してエミリアは静かにルシエールを睨みつけている。…………何でもいいが……俺をはさんで戦い始めるのはやめてくれよ?シャレにならないからね?


「渡さないと言うのなら無理やりにでも奪い返しますが?」


「まぁ……怖い。でもあなたにそれができるのかしら?」


 バチバチバチ……

 怖っ!!……これが噂に聞く女の戦いって奴か?とりあえずこれ以上険悪ムードにするのは非常にまずい。

 とりあえずここは…………逃げよう。そうと決まれば後は早い。素早くエミリアの方に走りながら叫ぶ。


「エミリア、こんなことしてる場合じゃない。逃げるぞ!?」


「しかし……」


「そろそろ魔王城に戻らないとまずいだろ!!」


 エミリアは渋っていたが、ようやく俺と同じように踵を返し、魔王城へと走り出す。


「残念……もう帰ってしまうのね、ま、いずれまた会いましょう?」


 ちらりと後ろを振り向くともうそこにルシエールの姿は無かった。

 本当に……つくづく魔物って奴は分からん。




***




 とりあえず、魔王城の門の前へとたどり着く。前と同じくそこには蟇蛙の検問官がなんともだるそうに無駄に立派な椅子へと腰かけて寝ている。彼は一度ちらりとこちらに視線をよこしたが、すぐに目を閉じてまた寝始めた。こいつ働いてるって言えるのか?

 しばらく寝ている検問官に気をとられていると、門が低い音を立てて静かに開きはじめた、少しして完全に開いたそこには、黒ずくめ……王女の姿があった。

 大した時間もたっていないはずなのだが、なんだかすごく久しぶりに会った気がする。何でだ……色々と衝撃的なことが起こったからか?


「お嬢様、どうでしたか?」


「ん、ああ……」


 エミリアの質問に王女の返しは随分とあいまいだ。何か考えているのか、あまりエミリアや俺とは顔を合わせようとはしない。と、唐突に口を開いた。


「……用も済んだことだ。もう帰るとしよう」


「しかしお嬢様、久しぶりの魔王領……見て回られないのですか?」


「別によい。それに人間を連れていると何かと厄介だろう」


 俺に視線を向ける王女。……もうすでに厄介事に巻き込まれた、とは言えない。だがまあ、正直はやく屋敷に戻ってもらえるのはありがたい。情けない話だが、本当にもうこの辺りうろつきたくない。あの屋敷の方が万倍マシだ。そんな俺の内心を知ってか知らずか、王女はうっすらと笑みを浮かべる。


「ふん、帰ったら夕食にするとしよう」





 しばらく間が空いてしまいましたね、どうもすみませんでした。

 最近忙しかったもので……(苦笑)

 これからも見捨てないで、読んでいただけると嬉しいです。

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