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婚約破棄された伯爵令嬢が、王女の侍女になって王宮の食事改革を始めました  作者: 絵宮 芳緒
第九章 王家の判断

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第一話 血の選定

王宮の奥。


重厚な扉の向こう、静かな空気が満ちていた。


円卓を囲むのは――


王。


王妃。


皇太子レオナルト。


そして、王弟アルベルト。


その場には、宰相も同席している。


「……報告は以上です」


宰相の低い声が、静かに落ちた。


しばしの沈黙。


最初に口を開いたのは、王だった。


「アルヴェルン伯爵家の娘」


ゆっくりと言う。


「そして、その弟」


視線がわずかに細められる。


「両名とも、発現が特異すぎる」


宰相は静かに頷いた。


「はい」


「植物魔法に加え――」


「食材への干渉」


「さらに、弟は光属性との複合」


王妃が静かに息を吐く。


「王家の系譜に、近いわね」


その言葉に、場の空気がわずかに変わる。


アルベルトが腕を組んだ。


「近い、どころではない」


淡々と告げる。


「混ざれば、濃くなりすぎる」


その一言は、重かった。


王がゆっくりと頷く。


「……危険域、か」


宰相が静かに続ける。


「制御不能、あるいは――」


言葉を切る。


それ以上は言わない。


だが、誰もが理解していた。


沈黙が落ちる。


その時だった。


レオナルトが、ふと口を開いた。


「だが」


穏やかな声。


「別の可能性もある」


視線が宰相へ向く。


「ヴァルディーク公爵家だ」


その名に、空気がわずかに動く。


宰相の目が細められる。


「……カイルですか」


レオナルトは頷いた。


「氷と火」


「さらに風」


「相反と調和、両方を持つ」


一拍置く。


「血の距離も、問題ない」


王妃が小さく微笑んだ。


「安定するわね」


王がゆっくりと息を吐く。


「……最適解か」


その時。


アルベルトが、ふっと笑った。


「それに」


わずかに肩をすくめる。


「もう、決まっているだろう」


全員の視線が向く。


アルベルトは、淡々と言った。


「二人は、無意識に手を取る」


静かな言葉。


だが、その意味は大きい。


宰相の眉がわずかに動いた。


「……確かに」


魔力の共鳴。


拒絶がないどころか――


自然に触れ合う。


それは、相性の証。


アルベルトは続ける。


「こちらがどうこう言う前に」


「すでに繋がっている」


その言葉に、レオナルトが小さく笑った。


「違いない」


王妃もくすりと笑う。


「可愛らしいこと」


王は、しばし沈黙した後――


ゆっくりと頷いた。


「ならば」


静かに言う。


「決まりだな」


その一言で、すべてが定まる。


王弟は何も言わない。


ただ、わずかに目を細めた。


「……最初から、そのつもりだったがな」


小さく呟く。


だが、その声には未練はない。


ただの確認に過ぎない。


こうして――


一人の令嬢の未来は


静かに、しかし確実に


王家によって定められた。

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