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婚約破棄された伯爵令嬢が、王女の侍女になって王宮の食事改革を始めました  作者: 絵宮 芳緒
第八章 揺れる想い

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第五話 婚約者候補

王都のざわめきは、さらに広がっていた。


「王宮の料理顧問」


その言葉が意味するものを、貴族たちは理解している。


それは単なる役職ではない。


王宮に常に出入りする立場。


王家に近しい存在。


そして――


「婚約者候補、か」


低く呟く声があった。


とあるサロンの一角。


数人の貴族が、静かに話をしている。


「あり得るな」


「王女殿下が目をかけ」


「皇太子殿下も関与し」


「さらに陛下の裁可まである」


一人が小さく笑う。


「そこまで整っていれば、話は早い」


別の者が続ける。


「となると……」


少しだけ声を潜める。


「王弟殿下か」


その名が出た瞬間、空気が変わる。


「……あり得る」


「年齢も、立場も問題ない」


「むしろ最も自然だ」


ざわめきが広がる。


その頃――


ヴァルディーク公爵邸。


書斎の一角で、カイルは書類に目を通していた。


だがーー


その手が、ふと止まる。


扉の向こうで、使用人たちの声が聞こえた。


「聞きましたか?」


「例の伯爵令嬢の件です」


「王弟殿下の――」


そこまで聞いた瞬間。


カイルの指が、わずかに強く紙を押さえた。


沈黙。


そして、ゆっくりと視線を上げる。


(……王弟殿下)


その言葉が、頭の中で静かに反響する。


思い出す。


夜会での光景。


王弟が、リディアと踊っていた姿。


あの距離。


あの視線。


カイルは静かに息をついた。


だが――


その瞳は、わずかに鋭くなる。


「……なるほど」


低く呟く。


これまでとは違う。


ただの噂ではない。


王宮が動いている。


王が認めた。


ならば――


現実になる可能性がある。


その事実が、胸の奥を強く締め付けた。


(……取られる)


一瞬、そんな言葉が浮かぶ。


カイルはゆっくりと立ち上がった。


窓の外を見る。


王宮の方向。


その瞳は、静かに細められていた。


「……冗談ではない」


小さく呟く。


その声は低く、そしてはっきりとしていた。


ヴァルディーク公爵家の嫡男。


その名に恥じぬ覚悟が――


今、静かに芽生えようとしていた。

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