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婚約破棄された伯爵令嬢が、王女の侍女になって王宮の食事改革を始めました  作者: 絵宮 芳緒
第八章 揺れる想い

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第一話 王宮の評価

王宮の朝は、いつも通り静かに始まっていた。


だがその空気は、わずかに変わっている。


昨夜の夜会の余韻が、まだ王宮の中に残っていた。


廊下を行き交う侍女たちの間でも、小さな囁きが交わされている。


「見ました?」


「ええ、夜会での……」


「王弟殿下に、皇太子殿下」


「それにヴァルディーク様まで」


その中心にいるのは――


リディア・フォン・アルヴェルン。


王女付きの侍女でありながら、昨夜の夜会で王家と続けて踊った令嬢だった。


王宮の一室。


第二王女アリアナは、紅茶を口にしながら微笑んでいた。


「やっぱり、面白いことになっているわね」


その向かいには、皇太子レオナルトが座っている。


「当然だろう」


軽く肩をすくめる。


「目立たない方がおかしい」


アリアナは楽しそうに目を細めた。


「でも、それだけじゃないわ」


カップを置く。


「厨房からも、報告が上がっているの」


レオナルトが眉を上げる。


「厨房?」


「ええ」


アリアナは頷いた。


「リディアの料理が、明らかに他と違うと」


「味だけじゃない」


「食材の扱いも、火の通し方も」


「まるで別格だって」


レオナルトは少し考えるように目を細めた。


「……なるほど」


アリアナはくすりと笑う。


「ただの侍女ではない、ってことね」


しばらくの沈黙。


やがて、アリアナがさらりと言った。


「王宮の料理顧問として、置くのもありかしら」


その言葉に、レオナルトは小さく笑った。


「それはまた、大胆だな」


「いいじゃない」


アリアナは肩をすくめる。


「どうせ、もう目立っているのだもの」


「いっそ正式にしてしまえばいいわ」


レオナルトはグラスを指先で軽く回した。


「……そうなると」


ゆっくりと口にする。


「立場が変わるな」


アリアナは意味深に微笑む。


「ええ」


「ただの侍女ではいられなくなる」


その時だった。


部屋の扉が、静かにノックされる。


「失礼いたします」


入ってきたのは、一人の侍女だった。


「リディア様をお呼びいたしますか?」


アリアナは一瞬だけ考えた。


そして、ゆっくりと頷く。


「いいえ」


静かな声で言う。


「まだいいわ」


その瞳が、わずかに細められる。


「もう少しだけ――」


「周りの反応を見てからにしましょう」


王宮の空気は、静かに動き始めていた。


まだ誰も知らない。


この評価が――


やがて一人の令嬢の立場を、大きく変えることになることを。

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