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婚約破棄された伯爵令嬢が、王女の侍女になって王宮の食事改革を始めました  作者: 絵宮 芳緒
第六章 社交界の嵐

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第八話 王の裁定

王宮の謁見の間には、重い静けさが満ちていた。


高い天井から吊るされたシャンデリアの光が、赤い絨毯を静かに照らしている。


その中央に――


三人の人影が立たされていた。


ダグラス侯爵。


その隣に、嫡男ルーカス。


そして、娘イザベラ。


三人の腕には、銀の腕輪がはめられている。


魔封じの腕輪だった。


魔力は、すでに完全に封じられている。


その前に立つのは、王。


玉座の横には王弟アルベルト。


そして宰相ヴァルディーク公爵が控えていた。


謁見の間に集まった貴族たちは、誰一人声を上げない。


ただ、固唾を飲んで見守っている。


やがて――


王が静かに口を開いた。


「ダグラス侯爵」


低く、重い声だった。


侯爵が顔を上げる。


その目には、まだわずかな威厳が残っていた。


だが王は淡々と続ける。


「王宮侍女誘拐未遂」


「王家への不敬」


「そして、王都における犯罪組織との関与」


一つ一つ、言葉が落ちていく。


「証言」


「捕らえた犯人」


「魔法の痕跡」


「すべて確認された」


沈黙が広がった。


イザベラの肩が、わずかに震える。


王の声が、再び響いた。


「よって」


短い言葉だった。


だが、その場にいる誰もが次を理解していた。


「ダグラス侯爵家の爵位を剥奪する」


息を呑む音が、あちこちで聞こえた。


イザベラが顔を上げる。


「……そんな」


小さく呟いた。


だが王は続ける。


「ダグラス侯爵」


「および嫡男ルーカス」


「魔封じの上、王国の管理下に置く」


ルーカスの目が、わずかに細くなる。


しかし彼は何も言わない。


ただ静かに、王を見返していた。


そして――


王の視線がイザベラへ向く。


その瞬間、彼女の顔から血の気が引いた。


「イザベラ・フォン・ダグラス」


静かな声だった。


「誘拐共謀」


「貴族としての義務違反」


短い沈黙。


そして。


「魔封じの上、修道院へ送る」


その言葉が落ちた瞬間。


イザベラの膝が崩れた。


「……嘘」


かすれた声だった。


「私は……侯爵令嬢よ……」


だが、その声に答える者はいない。


騎士団長が前に出る。


「連行」


鎖が鳴る。


騎士たちが三人を囲んだ。


その時だった。


歩き出したルーカスが、ふと振り返る。


その視線が向いたのは――


謁見の間の奥。


そこに立つ、カイルだった。


ルーカスは小さく笑う。


「……お前か」


低く呟く。


「邪魔をしたのは」


カイルは答えない。


ただ、静かに見返している。


ルーカスの目が、わずかに歪んだ。


「だがな」


小さく呟く。


「あの娘は――」


ほんの一瞬。


楽しそうに笑った。


「面白い」


騎士が肩を押す。


「歩け」


ルーカスはそれ以上何も言わず、歩き出した。


鎖の音が遠ざかっていく。


やがて。


謁見の間には、静かな沈黙だけが残った。


宰相が、ゆっくりと息を吐く。


「……終わりましたな」


王は静かに頷いた。


しかし――


王宮の外では、すでに噂が広がり始めていた。


ダグラス侯爵家の没落。


そして。


王女の侍女――


リディア・フォン・アルヴェルンの名が。

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